今週の1枚

2020年05月17日 12:43

ggundam5 久々更新の「今週の1枚」は、これまた久々(でもないか?)のアニメ作品モノ。90年代中盤に制作されたガンダムシリーズの一つ、「機動武闘伝Gガンダム」の関連CD「GUNDAM FIGHT-ROUND 5」をご紹介いたします。

 1979年に第一作「機動戦士ガンダム」を放送開始以降、基本的にはテレビシリーズ作品においては原作者であり総監督の富野由悠季(と、制作会社のサンライズ)が携わり、「宇宙世紀」を舞台に物語が展開されていたのが90年代中盤までのガンダムシリーズであったのですが、本作「機動武闘伝Gガンダム」(以下「Gガン」と表記)の総監督には80年代末に「ミスター味っ子」の監督を務めた経験のある今川泰宏が富野氏の推挙で就任。非富野系では初のテレビシリーズでのガンダム作品、物語もそれまでとは設定がガラリと異なる「未来世紀」を舞台とし、ガンダムシリーズ上では大きな転換点となった一作でした。
 大まかな話の流れとしては「四年に一度、世界の覇権を巡って開催される各国代表のガンダム同士の武術大会(=ガンダムファイト)」を縦軸に、主人公ドモン・カッシュと因縁のある「デビルガンダムの追跡」を横軸にし、1994年の4月から翌年3月末までの一年間にわたってオンエア。この時点で既にブランドと化していた「ガンダム」への斬新な角度からのアプローチは当時賛否両論を招いたようですが、今川監督の癖のある演出や魅力的な各キャラクター、そして熱い展開を見せるストーリーによって新規のファンも多く獲得、関連商品の売り上げも上々で、その後に繋がるアナザーガンダムシリーズの処女作として評価を受けた作品となりました。

 本CDは、そんな「Gガン」関連CDアルバムのラストを飾り、最終話直前の1995年3月24日に発売。それまでのCD作品はサウンドトラックやドラマ編などでしたが、今回は主人公やヒロイン、各国の主要ライバルキャラの総勢9名が一堂に会したキャラクターソングCD+α。担当声優がボーカルを担当するキャラソンCDは80年代の頃から既にあり、発売元のキングレコードのアニメ専門スターチャイルドレーベルもキャラソンに関してはお家芸(?)的な貫禄がありましたが、ガンダムシリーズにおいてはここまで各キャラクターをフィーチャリングしたボーカルCDは作られていなかったはずで、ここでも新機軸を試そうとする制作陣の心意気を感じます。
 キャラクターソングは全部で11曲。基本的には主人公以外は1人1曲で、総じて歌詞もサウンドも物凄くベタ!(褒めてます・笑)。要するにアニメ本編で描かれた各キャラの特徴や生き様などをそのまんま描いた曲ばかりで、以前に同カテゴリーで紹介したこの作品にも相通じるものがありますが、これはこのアニメ本編自体がそういうノリ(例:ネオオランダ代表のガンダムが風車背負っている・等)なので、全く問題なし。曲調は如何にも90年代中盤のノリのポップソング「GET THE WIN」から、ド演歌「男道、獣道/マスターアジアの恨み節」、アイドルチックな「アレンビーの初恋」、実に渋い「ゲルマンブルース」、そして「Gガン」の世界観を象徴するような「戦闘男児〜鍛えよ勝つために〜」「勝利者達の挽歌」など多彩。各声優陣のボーカルレベルも総じて安定しており、中でも主役のドモンを演じた関智一、そして彼を作中で導いたシュバルツ・ブルーダーを演じた堀秀行の両者は抜群の歌唱力。欲を言えばキャスト全員で1曲歌う曲なんかもあったら…とも思いましたが、まあそれは贅沢というものでしょう。

 なお、キャラソン11曲以外には鵜島仁文が歌う後期オープニングの英訳詞バージョン「I'LL TRUST YOU FOREVER」や、劇中音楽担当の田中公平の手による主題歌のインストアレンジバージョンなども収録された、「Gガンの総まとめ」的な内容。発売時期からして、これまでこの作品に付き合ってくれた、楽しんでくれたファンへ向けた最終回への前夜祭といったところでしょうか。
 キャラソン収録のCDは次作以降のガンダムシリーズでもスタンダードなものとなり、00年代の作品になるとキャラクター別のマキシCDなども多数リリースされるようになるなど、本編のみならず歴代ガンダムシリーズの音楽史的にも後から振り返るとエポックメイキング的な立ち位置で実績を残した「機動武闘伝Gガンダム」。既に21世紀に突入し20年、年号も変わりましたが、時代が移ろっても記憶に残る、ワンアンドオンリーのガンダム作品(まあ模倣しようがない強烈な作風ですし・笑)の総決算として、「Gガン」ファンには是非聴いていただきたい1枚です。

2019年02月11日 15:28

moriguchibest 今年初の「今週の1枚」は、本ブログではちょっと珍しいタイプのシンガーの作品で始めたいと思います。1995年11月22日発売、当時も今も歌手としてよりもバラエティタレントとしての露出で有名(?)な、森口博子の通算4枚目のベストアルバム「Best of My life -Moriguchi Hiroko Single Selection-」をご紹介。

 90年代前半から中盤にかけて、バラドル(=バラエティアイドル)としての活動全盛期を迎えていた森口博子ですが、元々は純粋なアイドルシンガーとして、1985年にアニメ・機動戦士Zガンダムの主題歌「水の星へ愛をこめて」でデビュー。この曲はアニメ人気と相俟ってヒットになったのですが、その後の作品はセールス的に低迷していたこともあり、徐々に歌手としてではなく、バラエティもこなせるアイドルタレントとしての活動にシフトし、一定の知名度を上げてきた1991年、再びガンダムシリーズの映画主題歌として「ETERNAL WIND 〜ほほ笑みは光る風の中〜」が起用され、現在に至るまでの本人の最高売上を記録。この時は曲の良さも勿論ありますが、ガンダム人気+森口の知名度との相乗効果もあったロングセラーだったと記憶しています。その後は90年代中盤を過ぎる頃までは大きなヒットはないものの、シングルで10万枚程度をコンスタントに売り上げ、「夢がMORI MORI」という看板番組を持つなど、歌手としてもタレントとしてもバランスの良い活動を続けてきました。そして満を持してリリースされた本ベストは、彼女がこの時点まででリリースしてきた全20枚のシングルの中から15曲を選曲し、リマスターを施した、タイトル通りのシングルセレクションとなっています。

 ざっと内容を紹介すると、収録順は時系列ではなく、緩急の流れを感じさせる曲順。冒頭に車のCMソングとしてオンエアされ自身の2番手ヒットとなった「もっとうまく好きと言えたなら」を配置、続いてDual Dreamとのコラボシングル「Let's Go」広瀬香美からの楽曲提供で広瀬自身もカバーした「LUCKY GIRL 〜信じる者は救われる〜」と、まずはアッパーチューンで攻め。前述の「水の星〜」を通過した後はミディアム〜バラードゾーンへ。1986年作品なのでやたら声が若い「Still Love You」、80年代末リリースにしてアーリー90'sサウンドを予感させる(?)「夢の合鍵」などでしっとりと聴かせた後、当時PRINCESS PRICESSの奥居香が提供した「スピード」から曲名通りに加速。現在は日本を代表するアレンジャーとして名を馳せる本間昭光のほぼ無名時代の編曲作品「誘惑してよね夏だから」(ラテン風)「あなたのそばにいるだけで」(アロハ風)を経由し、最大ヒットのバラード「ETERNAL〜」、最後に当時の最新シングル「あなたといた時間」で締めるという、ライブを意識した構成が光っています。

 さて、このベストを聴いて思うことですが、森口博子はデビュー時から当時に至るまで、かなり良質の楽曲を提供してもらっている…というか、制作スタッフにかなり恵まれているのが、上述の提供関係者を挙げるだけで一目瞭然。まあDual Dreamも広瀬香美もかなり自身の作品に寄せている感じだし、奥居香提供の「スピード」「ホイッスル」の2曲に至っては生バンドアレンジということもあり、ボーカルを奥居にすればまんまプリプリじゃん、という感じで(笑)提供者寄りの楽曲カラーになっている点は否めないのですが、森口のボーカルはあまり特徴的な声質ではないものの、当時のアイドルの中では上手い部類に入り、与えられた曲にはバンドサウンドから打ち込みバラードまで、順応性をもって対応できているところは好印象。秋元康が作詞を手掛けた「夢がMORI MORI」などは今回改めて聴いて何なんだこの歌詞?!と思ったのですが(苦笑)彼女が元気気味に歌うと許せてしまう雰囲気を作っていけるのは築いたキャラクターのおかげでしょうか。また、同じレコード会社繋がりなのでしょうが、「ETERNAL〜」を提供し、93年には正式に歌手デビューを果たした西脇唯が関わった楽曲(本作では5曲収録)は秀逸なものが多く、提供作家としての西脇の実力もしっかりと見せつけられました。

 全20枚のシングルのうち、漏れた5曲はいずれも90年までの作品(91〜95年のシングルはすべて収録)ということもあり、良い意味での「90年代中盤までのJ-POP(ガールポップ)の幕の内弁当」的な本作品。ちょうど「夢MORI」終了直後のリリースということもあって、彼女の活動全盛期のひと区切り、という感じだったのでしょうか、以降はシングル・アルバムリリースとも落ち着き、アニバーサリー的なベストアルバムを連発するようになってしまうので歌手活動としては第一線を退いた感があり、森口が歌手としてコンスタントに活動していた、というのをリアルタイムで知る世代というのも筆者ぐらいの年代がもしやギリギリ…?という感覚に時代の流れを感じてしまいますが、数ある彼女のベストアルバムでどれか1枚、と言われれば、現在中古屋で結構安く買えるということもありますが(汗)、良質のポップスが約70分にわたってぎっちり詰め込まれた本作を強くお薦めいたします。

2018年09月24日 13:00

CAGREATEST ブログ開設当時からのコンテンツとして、開始当時は週一で、二年目以降は緩やかに(笑)エントリーを続けてきた「今週の1枚」。今回はチャゲアスことCHAGE & ASKA(当時表記)が90年代後半に活動休止していた際に日本国外でリリースされたベストアルバムにスポットを当てるという、本ブログでは異色のレビューを行いたいと思います。正式タイトルは「CHAGE & ASKA "GREATEST HITS"」。なお、ジャケットや歌詞カードには加えて「ASIAN SPECIAL VERSION」と表記。その名の通り、香港、台湾、シンガポール、マレーシアといったアジア地域限定で発売された公認のベストアルバムとのことです。

 発売は1998年1月13日。前年からチャゲアスとしての活動を休止し、それぞれソロ活動の真っ只中でのリリース。日本国外向けのベストアルバムとしては過去にもアジア向け、ヨーロッパ向けに編まれたベストが発売されていますが、アルバム曲やASKAソロなども交えていた過去作とは異なり、本作は全曲シングル曲、具体的には「SAY YES」以降、当時の最新シングル「river」まで、1991年から1996年までの日本語詞シングルタイトル曲(全英語詞の「Something There」は未収録)を収録した、徹底的なシングルコレクション。「On Your Mark」「You are free」のバラード連発で始まり「なぜに君は帰らない」で終わったり、「YAH YAH YAH」「HEART」の同系統の曲が連続して収録されていたりと、若干意図の読めない(?)曲順ではあるものの、日本国内で発売された「SUPER BEST」シリーズの流れを汲む内容となっております。

 まさにチャゲアスのセールス全盛期のシングル曲を網羅した、という意味でコストパフォーマンスの高い1枚に加え、筆者的に貴重だな、と思ったのは「Sons and Daughters 〜それより僕が伝えたいのは」シングルバージョンが収録されている、という点。14 Karat Soulをコーラスに招いた「Red Hill」収録のバージョンが以降のベストアルバムにも収録され、この曲の完成形はアルバムバージョン、ということなのかもしれませんが、シングル発売当時に聴いたオリジナルバージョンが馴染みのある身としては、アルバムの形で聴けるのは嬉しいポイント。また、本作発売時点では「SAY YES」「YAH YAH YAH」のシングルバージョンもアルバム未収録だったので、PCでシングル盤をCD-Rに焼くことが一般的ではなかったこの時代、コレクターズアイテムとしてもマニア垂涎(?)な一品だったのかもしれません。

 さて、この国内販売対象外のアイテムをなぜ筆者が持っているかというと、このアルバムの存在は知っていましたが、現物を少し前に某中古販売チェーンで投げ売りされているのを偶然発見して購入した次第。日本語歌詞カードも付いており、作詞作曲編曲クレジットも正しく記載されているなど、活動休止前までの総括として、これを何で日本で発売しなかったのかなぁ…?と思うぐらいのしっかりとした内容に驚きました。現在のところ可能性は薄いと言わざるをえませんが、チャゲアスがもし復活した暁には、「スーパーベスト」(第1作)と一緒にリマスター再発をしてもらいたいと願ってしまいます(活動再開が叶ったとしてもこっちの方は望み薄か?!苦笑)。

2018年06月10日 19:11

utenastamani 今年初の「今週の1枚」、今回はブログ史上最も濃く、そしてマニアックな1枚を紹介したいと思います(笑)。2005年11月23日発売、キングレコード内のアニメレーベル「スターチャイルド」よりリリースされたアニメ関連作品のコンピレーションシリーズ「スタまに」の一作、「少女革命ウテナ」のボーカルベストアルバム。全15曲収録。

 「少女革命ウテナ」は、1997年4月よりオンエアされていた全39話のTVアニメ。主人公の快活な少女・天上ウテナが通う鳳学園にて巻き込まれる、「薔薇の花嫁」こと姫宮アンシーを巡る、学園理事長代行や生徒会メンバーといった個性的なキャラクターとの決闘対決がメインの作品…と書いてもこの作品の10%も紹介できていないので詳しいストーリーは省略しますが(おい)、基本はシリアスに、時にシュールにコミカルに、様々な形の「愛」を描いたアニメとして、漫画版も含めて未だに根強いコアな人気を持っています。1999年夏にはリメイクという形でより過激なスケールで描かれる長篇劇場版「アドゥレセンス黙示録」も公開。OVAテイストのセガサターンゲームもTVと劇場版の合間にリリースされたり、近年では約20年振りにミュージカル化を果たしたりと、様々な媒体で展開された作品でもありました。

 さて、本アルバムはそんな「ウテナ」シリーズのボーカル曲のコンピ。といっても、主題歌関連はオープニング「輪舞 -revolution」(奥井雅美)、前期エンディング「truth」(裕未瑠華)、後期エンディング「バーチャルスター発生学」(上谷麻紀)の全3曲と、通常のアニメと変わらない使われ方でしたが、とにかくこのアニメは劇中歌として流れた曲(決闘の際に流れる合唱曲が毎回異なる)が恐ろしい数ほどあるのが特徴で、TV版のサントラ3枚にも各7〜8曲程度の決闘用合唱曲が収められているという、当時としては野心的な内容でした。これらの曲は前衛劇団・万有引力主宰のJ.A.シーザー(日本人)が手掛けた詞曲で、はっきり言って歌詞の意味は抽象的すぎて全くといっていいほど理解不能。これをメタリックなオケに乗せて杉並児童合唱団や東京混声合唱団、万有引力のメンバー、果ては「ウテナ」の監督・幾原邦彦も一緒に唱和するという演出はまさにカオス。本アルバムでもウテナが決闘広場に向かう際に流れる「絶対運命黙示録」、前述の後期エンディング「バーチャルスター〜」の合唱バージョン、「体内時計都市オルロイ」「スピラ・ミラビリス劇場」「天使創造すなわち光」…と、タイトル見るだけで何コレ?みたいな(笑)濃い楽曲が選り抜かれています。

 基本的にはリリース順に楽曲が並んでおり、終盤にかけては劇場版関係の楽曲も5曲収録。そのうちの3曲は「絶対運命黙示録」の劇場バージョンも含めてまたもや合唱曲で、ここに辿り着くまでは聴き手もお腹いっぱいを通り越して変なテンションになっていると思われます(笑)。そんな中で劇中歌として起用された「時に愛は」(奥井雅美)はちょっとひと安心な歌い上げ系ミディアム。そして本作ラストに収められた「輪舞 -revolution〜アドゥレセンス・ラッシュ」(奥井雅美)はTVアニメオープニングのリメイク…と思いきや、オケがどんどん違う方向に展開していき「ウテナ」のテーマメロディに行きつくなどの趣向を凝らした、ここまで聴いてきたファンへのボーナス(?)のような8分近いエクステンデット系ミックスで締め。

 TV、劇場版、舞台版のサントラ、企画アルバムを含めれば10枚に近くにも及ぶ「ウテナ」関連のCD。セレクションアルバムも1作ありますが、純粋のボーカルだけを収めたベストはこの1枚のみ。「スタまに」シリーズの一作というレコード会社主導の企画ということもあり、過去の作品をレイアウトしただけのCDジャケットや、シンプルな歌詞カードなど、あまり装丁にウテナらしさは感じられないのですが、主題歌が1枚のCDにフルサイズ全部入っているCDは本作のみ。定価も1,500円(当時)と、ライト層を狙った…にしては濃厚な曲も満載ですが(笑)、歌入りの曲だけを聴きたい、というウテナファンにはうってつけなお薦めの1枚です。

2017年07月29日 22:42

tk30 かなり久々、実に今年初となる(苦笑)「今週の1枚」エントリー。今回はCD3枚組のコンピレーションアルバムをご紹介。サブタイトルの通り、TKこと小室哲哉がプロデュースした楽曲を選りすぐった41曲を収録した「AGIGATO 30 MILLION COPIES -BEST OF TK WORKS-」。20世紀末、2000年3月23日にavex traxから発売されました。

 90年代のJ-POPシーンを語るのに欠かせない存在である小室哲哉。これまでに何度も書いてきたことではありますが、筆者はTM NETWORKファンなので、小室を語る時は「TMの〜」と枕詞を付けてしまうわけですが、90年代からの音楽リスナーの方々の認識としては「プロデューサーTK」という肩書きが圧倒的だと思います。小室自身の楽曲提供自体は既に80年代半ばからアイドルシンガーを中心に頻繁に行われてきましたが、楽曲制作はもちろん、trfなどではトータルプロデュースの面でも辣腕を振るうようになり、タイアップや話題性、時代のニーズに応えた作品を矢継ぎ早にリリースしてミリオンヒットを連発した90年代以降の彼は一ミュージシャン、アーティストという立場よりも一段高いところから音楽シーンを見つめていたような気がします。

 遡ること数年前の1996年に「TK MILLION WORKS」という8曲入りのコンピ盤をリリースしており、本作はその拡大版。「〜MILLION WORKS」に収録されたのはavex所属のアーティストの作品のみでしたが、今回はSME(篠原涼子、鈴木あみ、Kiss Destination)、Pioneer(華原朋美、dos)、PONY CANYON(未来玲可、tohko)、COLUMBIA(観月ありさ)版権作品も偏りなく選曲され、プロデューサーTKが90年代に残したヒット曲+αを大量セレクトした内容になっています。
 3枚のディスクにはそれぞれコンセプトがあり、DISC 1はドラマや映画の主題歌、DISC 2はCMソング、DISC 3は小室が選曲した「TK SELECTION」を、基本的には時系列順に並べてあります。収録範囲で最も古いのは1993年にリリースされ、プロデューサーとしての出世作となったDISC 2の1曲目の「EZ DO DANCE」(trf)。それ以前の曲や、TMメンバーのソロをプロデュースした作品は収録対象外となったようです。ちなみにタイトルの「〜30 MILLION COPIES」とは、収録楽曲のトータルセールスが3,000万枚という実績に引っ掛けたものですが、若干下世話な気も(苦笑)。

 さて、改めて現時点でこのコンピ盤をじっくりと聴いてみて思うことは、各DISC前半、90年代中盤過ぎぐらいまでの楽曲はサビが覚えやすくキャッチー。サウンドもtrfのようなポップス寄りのテクノだったり、安室奈美恵のような聴いていて自然に身体が動くようなダンスチューンだったり、小室自身もメンバーとして参加したglobeの初期ナンバーなどに代表されるような、ヒットシーンに向けて直球を放ったような作品が多数。PRODUCED BY TETSUYA KOMURO表記に箔が付き、怒涛のオファーが相次いだのも納得と言いましょうか。勿論各楽曲の完成度も高く、「時代が求めている音」にぴったりと寄り添った時期だったのだと思います。
 やがて90年代末に向かうDISC後半になるとその様相が変化。この時期に登場した鈴木あみの曲には変わらぬポップなアプローチが続きますが、徐々にR&Bやヒップホップの要素を取り入れ、クール(で一見地味)なナンバーを既に実績のある上記アーティスト達に対してシングル表題曲としてリリースするなど、小室が志向する音楽性が移り変わってきたように感じます。ブームが飽和状態を迎えて収束に向かっていた時期ということもあり、セールス面でも減退が見られ、世間的にも「小室ブームは去った」的なイメージを助長してしまった作品群かもしれませんが、この時期の楽曲は2017年現在においても音的な古臭さ(いわゆる時代性)はそれほど感じさせずに聴けるな、ということを再認識できました。

 そんな中で面白かったのがDISC 3。小室セレクトということもあり、対海外用(だと思われる)EUROGROOVEや、Kiss Destination前夜的なTK PROJECT、TKファミリー大集合の合唱曲「YOU ARE THE ONE」など、この手のコンピではないと収録されないような楽曲が有名曲に混じって収録されているのはポイント高め。さらに小室と浜田雅功とのユニット・H Jungle with tのシングルが3曲とも全て収録されているアルバムは本作だけ、というのも、未だに価値のある作品集だと思います。

 2000年代に入ってからの小室のヒットと呼べる曲は残念ながらごく僅かということで、90年代のTK総括=現時点でのTKヒット代表曲集としても十分通用してしまうのが複雑な心境でもありますが、当時の音楽シーンにおいて一大ムーブメントを巻き起こした小室哲哉の足跡の数々を改めて実感できるコンピ盤でもありました。ここまでレーベルの垣根を越えた小室系コンピもないと思いますので、TKファンは機会があれば(廃盤らしいので中古かレンタルなどで)是非手にしていただきたいですね。
 なお、本作は初回盤と通常盤が存在。筆者所有の通常盤は最大4枚のCDが収納できる厚めのプラケース仕様なのですが、初回盤は横長ケース仕様だそうです。この特殊パッケージ、扱いづらそうなのですが、これは果たしてTKのこだわりなのでしょうかね…?(笑)

2016年10月02日 23:43

yokohama1998 横浜DeNAベイスターズ、祝・球団史上初のセントラルリーグ・クライマックスシリーズ出場!!長年ベイスターズファンをやっている筆者にとっても2016年シーズンは忘れられない年になりそうです。というわけで(?)今回の「今週の1枚」は番外中の番外編。今から遡ること18年前、ベイスターズが(現時点では最後の)日本一を決めた1998年末、12月2日にリリースの「'98 日本シリーズ優勝記念オフィシャルCD」と銘打たれた、「VIVA!横浜ベイスターズ」をご紹介。

 横浜大洋ホエールズから横浜ベイスターズに球団名を変更して6年目のシーズンを迎えた1998年、数年前から若手生え抜きの戦力がチームを牽引するようになり、バッテリーチーフコーチを経てこの年より監督に就任した権藤博のもと、「マシンガン打線」と「大魔神」の活躍で38年ぶりのリーグ優勝、続く日本シリーズでは西武ライオンズを4勝2敗で下し、本拠地横浜スタジアムで日本一を決めた…というベイスターズ球団史において最高の輝きを放った一年でありました。
 そんな「横浜ブーム」に沸いたこの年、関連商品も数々リリースされたのですが、本作はセ・リーグ優勝記念として選手別応援歌に実況をプラスした「VIVA!YOKOHAMA」に続いての日本一記念盤。なんと日本シリーズ全6戦のニッポン放送でのラジオ実況中継ダイジェストを収録するという驚きの内容(笑)。プロ野球選手が歌を歌ってCDリリース、というのはかつてはシーズンオフでそれなりに見られたのですが、本作のような「試合の中継実況録音」がメインのCD、というのはなかなかないケースだったと思います。正直、この企画よく通ったな…と当時思いましたし(苦笑)。

 さてそんなこんなでようやく本編解説。まずオープニングは現在でも一部歌詞とアレンジを変えて球団歌として受け継がれている「熱き星たちよ」のオリジナルバージョン。ボーカルは個人的には「勇者シリーズ」での熱唱が思い出深い高尾直樹が担当。以降は日本シリーズ第1〜6戦までのダイジェストとなりますが、「完封!炎の連勝」とか、「西武の反撃」とか、「マシンガン打線沈黙」とか、1戦1戦ごとにサブタイトルが付けてあるのが心憎い演出。ダイジェスト部分は主に試合開始直後、得点シーン、最終回の攻防を中心に各4〜5分程度にまとめられていますが、横浜の得点シーンのみならず、西武の得点シーンや、横浜が守備のエラーで失点するシーンなどもピンポイントで挿入されており、「野球の試合を聞いてる」という感覚で聴き進めることができる構成になっています。

 第6戦のサブタイトル「38年ぶり再び頂点へ」で大魔神・佐々木主浩投手が最後のバッターを併殺で打ち取り日本一を勝ち取った瞬間を追体験した後は、既に94年に解散していたアイドルグループ・CoCoが歌うベイスターズ公式応援歌「WINNING」。現在でもアンオフィシャルながら球場での応援団の演奏に使われています。そしてボーナストラックとして1960年の初優勝時の実況をリメイクした「'60 日本シリーズ"V"実況」というオールドファン垂涎の企画を経て、ラストは日浦孝則(元class)が作曲&ボーカルの壮大なバラード「勝利の輝き」でフィナーレ的にまとめられています。

 あれから18年、その後のベイスターズの歴史は聞くも涙語るも涙…という暗黒低迷期になってしまった、という経緯は調べていただくとして、親会社が変わり、横浜DeNAベイスターズにチーム名が変わって5年目にあたる今年、ようやく11年ぶりのAクラス(3位)でシーズン終了、9年前から導入された、Aクラスチームによるポストシーズン「クライマックスシリーズ」に初出場を果たすという快挙(?)を遂げ、今週末より東京ドームにて読売ジャイアンツと戦います。現在、本作発売時に在籍していた選手は三浦大輔投手ただ一人、その三浦も先日引退を表明し、シーズン最終戦でユニフォームを脱ぎました。もう「98年を知るV戦士」は誰もいなくなってしまったという一抹の寂しさと、これからは筒香嘉智ら新しい世代でチームを盛り立てていって欲しいという期待、加えて何となく現在のチームの雰囲気が、かつて石井琢朗や鈴木尚典が台頭してきた96年ぐらいの状況に似ていると感じたりと、色々な感情が渦巻く10月のポストシーズン、ひと試合でも多くファンを楽しませてくれるように願います。

 …というわけで熱く書いてしまいましたが(?)、次週からはまた通常運転に戻りますので、今後とも本ブログをよろしくお願いいたします(笑)。

2016年08月06日 23:53

nettou2 実に半年ぶりのエントリーとなる「今週の1枚」。前回から季節は二つ過ぎ、早くも真夏を迎えた8月。真夏といえばやはり甲子園!ということで、本日開幕したリオオリンピックに負けじと今年も高校球児達の熱い戦いの季節がやってきたことを踏まえ(?)、今回は2010年7月28日発売のテレ朝(ABC)系列で使用された夏の高校野球の応援ソングコンピレーションアルバム「熱闘甲子園のうた〜夏の高校野球応援ソング〜」をご紹介いたします。

 1981年から現在まで続く、甲子園での夏の高校野球開催期間中に連日オンエアされるその日の試合のダイジェスト番組「熱闘甲子園」。ドキュメンタリータッチを基本に汗と涙の勝ち抜き戦を伴走するJ-POPアーティストによるオープニング、またはエンディングテーマを12曲収めたのが本作。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この「今週の1枚」では、既に2011年時に「一番熱かった夏〜熱闘甲子園の歌〜」というコンピをご紹介しているのですが、本作はその純然たる続編にあたり、前作以降の2001〜2009年の間に使用されたテーマソングを収録対象(選曲されなかった曲もあり)としています。タイトルが若干被っているので分かりづらい、という声もありそうですが(苦笑)、00年代の「熱闘甲子園」関連楽曲のほとんどが一同に会した作品となっています。

 続編ということで各年ごとの出場校、各大会の簡易的な説明をその年に起用された楽曲の歌詞と並べて記載するという、前作のフォーマットを踏襲しつつ、収録曲順に関しては時系列だった前作とは逆に、2009年から年代を遡っていく構成。聴き進めていけば21世紀のJ-POP史を遡っていくタイムトラベル的な内容になるわけですが、既に多様化に次ぐ多様化が進んでいた2001年時点の楽曲でもそれほど時代性を感じることなく聴くことができるのは前作とは大きく異なるポイント。
 参加アーティストもブレイク直後の森山直太朗、セールス全盛を迎えていたガールズバンドZONE、既に安定した人気基盤を獲得していたBEGIN、一時期毎年のように枠を確保していたこともあった秦基博スキマスイッチスガシカオ福耳といったオーガスタ系アーティスト、そして高校野球中継のテーマソングといえばこの人!という西浦達雄等々…と、若手からベテランまでが集結し、それぞれに彩りを添えています。

 そんな中で個人的にピックアップしたいのは「泣き声のようなサイレン/陽射し吸い込むダイヤモンド/この熱さだけはきっと忘れない」という歌詞から試合の光景が浮かぶ「Halation」(秦基博)、一発逆転への高揚感と試合終了の無常感をそれぞれに感じる「奇跡」「夏陰〜なつかげ〜」(スガシカオ)、選手の父親目線で描かれた「やさしさにかわるまで…」(西浦達雄)、甲子園出場経験のある実弟に材を採ったという、実感が伝わる応援歌「終わらない夏」(我那覇美奈)。直接的であれ間接的であれ、それぞれのフィールド、それぞれの体温で放ったこれらの楽曲は夏の甲子園の映像にピッタリとハマっていました。また、普段はクロスしなそうな面々が一つのテーマで1枚のアルバムに収められる、というのはコンピ盤ならではの大きな魅力。各アーティストのカタログ市、という要素もしっかりと併せ持った作品だと思います。

 筆者も年を重ねて、子供の頃は憧れのお兄さん的な眼差しで見ていた高校球児達の年齢の倍ぐらいを今や生きてきてしまいましたが(笑)、一球に賭ける彼らの全力勝負の姿はいつの時代も輝いて見えるもの。明日より開幕の2016年大会も高校野球史に残る熱戦を期待したいと共に、そのお供に本作(と前作)を傍らに暑い夏を乗り切りたいと思っております。
 なお、本作発売後も毎年様々なアーティストによって「熱闘甲子園」テーマソング史は続いています。いつの日か初代からの全テーマソングを収めた「熱闘甲子園主題歌集・完全版」をCD3枚組ぐらいで出してもらえないかな…と、この季節になるといつも願っています(無理かな・苦笑)。

2016年01月23日 15:55

kamijyou 今年で開設9年目に突入した本ブログ、「CD Review」と共に最古参のコンテンツである「今週の1枚」。今回のエントリーをもって第70回目を迎えました。「今週の〜」と銘打っていながら昨年は1回きりの更新でしたので(苦笑)、今年はもう少し更新回数を増やせていけたらと思っております。さてそんな中でピックアップするのは、恐らく本ブログで紹介するシンガーとしては最年長、今年の3月で76歳を迎える超ベテラン・上條恒彦が今からちょうど20年前の1996年6月1日にリリースした、「冬の森にて」。

 上條恒彦といえば、世間一般的にはミュージカル俳優・または舞台役者といったイメージで、実際そちらの活動が現在のメインフィールドだと思うのですが、キャリアのスタートは歌声喫茶の歌い手からとのこと。やがて小室等率いるユニット・六文銭と共演した「出発の歌」が世界歌謡祭でグランプリを受賞し、一躍時の人に。以降は歌手活動を続けながら俳優としてテレビドラマに出演したり、舞台に立ったり、稀にアニメ作品に声優として出演したりと、その声を活かした活動を続けています。
 筆者ぐらいの世代になると80年代に「ハイリハイリフレハイリホー♪」と歌う某食品のCMや、NHKみんなのうたでオンエアされた「天使の羽のマーチ」を歌っていた人、と言えばピンと来る方もいらっしゃるかもしれません。かくいう私はあの朗々と歌う声を聴いて「さぞ爽やかなお兄さんが歌っているんだろう」と勝手にイメージしていたのですが、実は髪ボサボサで髭モジャモジャの眼鏡をかけたおっさん(失礼!)だった、という事実を知った時は子供心にショックを受けたものでした(苦笑)。

 …話が若干脱線しましたが(笑)本作「冬の森にて」は、歌詞ブックレット内のライナーノーツによると、音楽活動に関して「ライブ人間」の彼としては、実に17年振りのアルバムレコーディング作品とのこと。制作にあたって尊敬する小室等をディレクターに迎え、ライブでのバンドメンバーを従えて1996年の2〜3月に全15曲を録音。曲目は古くは60年代、新しくて90年代前半と、上條恒彦が30年以上の間の「曲に出会った順」に並べられていますが、ある程度はアルバムとしての1枚の流れを考慮して選曲された印象。先に述べた通り、自作のアルバムは相当久々ということで、後半の曲が彼の声でCD音源化されるのは本作が初、と思われます。
 長いキャリアを持つ彼なだけに、代表曲である「だれかが風の中で」をはじめ、「サトウキビ畑」「襟裳岬」といったスタンダードナンバー、ピアノをバックに歌い上げる唱歌風の「おやすみ」、短編朗読として「わたしが一番きれいだったとき」、舞台経験を活かし、宮沢賢治の銀河鉄道の夜に材を採った「父が息子に与える歌」等々、収録曲の表現方法は実に多彩。特に出色の出来なのは、彼の故郷である長野県の桔梗ヶ原を舞台にした狐の伝奇をモチーフに描いた「玄蕃之丞」。スリリングなバンド演奏と朗読、歌唱が繰り広げられていく歌劇の態を採っていて、9分近い収録時間にも関わらず最後まで緊張感が持続する名演が堪能できます。

 さて、そんな本作を聴きながら感じたのは、主役である上條恒彦自身のボーカルの表現法のこと。選ばれた楽曲は「いぬふぐり」「PEACE IN HARMONY」など、平和への願いや反戦への祈りが込められたメッセージ性の強い曲も含まれているのですが、感情を込め、過剰過ぎるほどの熱意を持って聴き手に迫ってくるタイプのボーカリストとは異なり、堂々と歌っているにも関わらず、激情に至る一線を越えず、理性によってその歌声を冷静にコントロールしているかのよう。「自分ひとりだけ気持ちよくなるな」と、駆け出しの頃にバンドマスターに叱責され鍛えられた、とライナーノーツに書かれている通り、時に抑制の効いた歌声が楽曲のメッセージを引き立て、聴き手それぞれに様々な情景を想起させてくれます。中でもタイトル曲「冬の森にて」などは、真冬の夜空の下で白い息を吐きながら雄々しく、そして優しく歌う、彼の姿が目に浮かぶ秀逸な歌唱だと思いました。

 ちなみにこの作品は1996年という時代としてはまだ黎明期であった「自主制作」、いわゆるインディーズCD。CDショップには流通せず、インターネット環境も整っていなかった当時、なかなか簡単には手に入れることのできなかった作品だったようで、現在販売は終了しているようですが、ネット通販などでは比較的安価で手に入れることが可能なようです。
 その後、2003年には宮崎駿プロデュースの「お母さんの写真」、2013年には「生きているということは」と、10年に一度のペースで新譜をリリースしているのですが、この二作はシンガーとしてのみの側面を見せたコンセプト色が強いので、舞台役者としての姿も含めた上條恒彦の作品、という意味では本作を最もお薦めいたします。

2015年09月06日 16:48

INOKASIRASUNAO ブログ開設当初からのコンテンツとして、管理人お薦めのアルバムをご紹介してきた「今週の1枚」。最初は毎週だったペースがいつしか月1回になり、やがて年3〜4回になり…と、この数年間どんどん緩やかなペースになってしまっていることを反省しつつ(苦笑)、今年初(…)の更新としてピックアップするのは、井乃頭蓄音団の初の全国流通盤(1stアルバム)「素直な自分」。久々のマニアックなアーティストのレビューにしばしお付き合いください(笑)。

 井乃頭蓄音団は、公式サイトの紹介によれば2008年に結成。本作には収録されていませんがJACCSカードのCMキャンペーンソングとして採用されていた「親が泣く」が代表曲といったところ。最初期は松尾遥一郎(Vo&G)と寺中イエス(Ba)の二人が中心になって活動する可変ユニットだったようですが、次第にバンドメンバーが固まり、2013年春までは上記二名の他、ジョニー佐藤(G)、ヒロヒサカトー(G)、とがしひろき(Dr)を加えた計五人が中心となった「ロックバンド」としての形態を取っていました。また、2011年4月6日にリリースされた本作では同列でのメンバー扱いとして沙知(Key&Cho、現・ハリネコ)やTHEラブ人間の谷口航大(G…とクレジットには書いてありますがバイオリンでは?)なども参加。なお、本作のCD盤は既に販売終了。現在はダウンロードでの音源販売にシフトしています。

 そんな彼らの作風、王道を行く「フォークロック」なバンドサウンドと反比例するかのように、とにかく歌詞のテーマが強烈。本作帯の作品紹介を引用すると「郷愁・愛・性・友情…普遍的なテーマでありながらも、オブラートに包むことなく、直接訴えかけてくる心の叫び」。その内容はほぼ全ての楽曲を手がける松尾の私小説風な歌詞が多いのですが、上京して売れない現況を故郷の親に話せない「帰れなくなるじゃないか」、失踪や逮捕、この世を去った友人達のことを想う「ともだち」、別れ歌の「さよならと言ったわけ」「会いたくて仕方ない」、そして本人の性癖(?)を赤裸々に綴った「夏子さん」「公衆便所で」…等々、綺麗ごと一切なし、赤裸々に吐き出されるリアルな感情を込めた作品が並んでいます。

 このリアル感が実に痛々しい…のですが、これを「カッコ悪い」と思わず、タイトル曲の「素直な自分」をはじめ、むしろちょっと共感をしてしまうのは、彼の描く詞の内容に筆者が当てはまる部分があるからなのかも(苦笑)。また、「今の自分が駄目なのは世の中が悪いからだ」的な主張や「こんな惨めな自分に同情してくれ」的なフレーズがなく、あくまで自分と向かい合った結果出てきた自虐的な世界観をメロディーに乗せて歌う、という作風だからか、自虐的なのに聴いていて不快な気分にならない(引いちゃうようなエグくて下品な表現は多々ありますが・苦笑)詞の世界を、シンプルながらダイナミックなバンドを従えて歌うというスタイルは好印象を受けました。

 そんな井乃頭蓄音団、本作発売から4年を経過する間に寺中、とがし両氏の脱退、新メンバーの加入があり、現在のメンバーは四人。この後ライブアルバム1枚、本作で感じた「癖」を意図的に減らしたオリジナルアルバム1枚をリリースと地道な活動が続いており、一部の愛好家(?)には知られているものの、まだまだアングラなバンドという印象が漂う彼らですが、最近では渋谷のB.Y.Gやフジロックにも出演し、今年末には渋谷WWWでワンマンが決定しているなど、少しずつその知名度を広げつつあるようです。かくいう筆者も彼らのライブには何度か観に行ったことがありますが、失笑しつつもなぜかスッキリした気持ちになって帰路につく、という経験が結構病みつきです(笑)。万人に受けられるタイプのアーティストでは決してないとは思いますが、他に類を見ない彼らの作風、もっと世の中に浸透したら嬉しいですね。

2014年11月29日 18:55

GOINGMONSTER 約半年ぶりの、そして今回で2014年分は終わりそうな(苦笑)「今週の1枚」。ご紹介するのは年末にビクター在籍時のオリジナルアルバム+αを紙ジャケジャケット仕様にしてボックスに収めた、その名も「THE BOX」をリリースするGOING UNDER GROUNDの「おやすみモンスター」。

 GOING UNDER GROUND(以下「ゴーイング」)は、埼玉県桶川市出身の五人組ロックバンド。いきなり余談になりますが、筆者の生まれ育った市の隣に住み、ほぼ同年代の彼らとは当然面識はありませんが妙に親近感があります(笑)。インディーズ活動を経て、メジャーデビューを果たしたのが2001年。音楽ファンに認知度を広げたのが2003年のシングル「トワイライト」と、同年の3枚目のアルバム「ハートビート」。その後も「STAND BY ME」や「VISTA」などの、ポップなメロディーにセンチメンタルな歌詞を乗せた楽曲をスマッシュヒットさせ、2006年にはベスト盤リリースと武道館ライブを敢行。今回ピックアップの「おやすみモンスター」はその翌年、2007年11月7日に発売されたメジャー通算6枚目のオリジナルアルバムとなります。

 前年まで順調に活動を積み重ねてきた彼らですが、当時のインタビューなどで触れられているように、本作の完成に至るまでにはかなりの試行錯誤を繰り返したとのこと。音楽活動がルーチンワークと化して惰性に陥りそうになる寸前のところをリセットした、というのが真意なのだと思いますが、そう言われて歌詞カードに目を落とすと確かに、従来の「青春」「純愛」「センチメンタル」など、世間一般的にゴーイングがよく評されるキーワードからもう一歩踏み込んで、「自分の中の自分」と向かい合い、従来の枠から飛び出そうともがく歌詞が目に付きます。
 歌詞のフレーズを引用すると、「生きてくってことは 誰かを踏みつけて(「PLANET」)」、「青春ごっこも終わりを告げて(「暗夜行路」)」、「嫌いな奴らもきっと誰かの愛しい人(「モンスター」)」、「傷だらけの世界は 僕ら生きて来た証明(「さかさまワールド」)」等々、今までのロマンチックでどこか絵空事っぽさも感じられた表現と異なる、やけに内省的で生々しいフレーズが散見されます。これらはメインライターである松本素生が壁にぶつかり、自分と対峙して紡ぎ出した「生きた言葉」なのでしょう。それだけにリアルだし、心に引っ掛かる表現が多く、リスナーにもより響く歌詞となったのではないでしょうか。

 歌詞に内省的なフレーズが増えた一方、収録された楽曲のメロディーラインはどの曲もポピュラリティーを含んだものが多いのも本作のポイント。過去のアルバムではインストや実験的な路線をバンド内に持ち込むことの多い河野丈洋の単独作品が1曲だけということもありますが、歌詞のどんより具合(笑)を程よく中和するとびきりポップなメロディーが全編にわたって展開。「TRAIN」「PLANET」などが特に顕著でしょうか。
 また、アレンジに関してはメジャーデビュー当時を彷彿とさせる、エレキギターを前面に押し出したロックサウンドで統一。といっても当時の模倣、というわけではなく、ここに至るまでの数枚のアルバムなどで試みられていた打ち込みサウンドを大々的に取り入れた「TWISTER」や、レゲエ的アプローチを楽曲内に盛り込んだ「海にまつわるエピソード」、さらにはお遊び楽曲「ナカザのロック★」のようなナンバーも中盤に登場するなど、これまでの音楽性を吸収した上で原点に戻った感があります。

 シリアスな歌詞+親しみやすいメロディー+今までの集大成的なアレンジで聴き進めていき、河野の手による純バラードの「愛のうた」を経て、この年一発目にして超王道シングル「胸いっぱい」に辿り着く頃には歌詞のまんまではありますが「お腹いっぱい」(笑)。そんな満腹状態を優しくクールダウンするのがラストのメンバー全員参加のアカペラ「おやすみ」…という具合に余韻に浸りつつ幕を閉じる本作。なお、「おやすみ」は初回盤のみに収録されているボーナストラックなのですが、この曲が無いとジョギングの後の整理体操を怠った翌日のような状態になること必至なので(なんつう喩えだ^^;)このアルバムを手に取る際には是非とも初回盤をお薦めいたします。通常盤のほうが実は枚数が出ていないと思いますし…(汗)。

 本作リリースから既に7年。その間、キーボードの伊藤洋一の脱退、松本、河野がソロ活動を開始、レコード会社移籍、他アーティストへの楽曲提供などのコラボ活動、インディーズレーベルへの移行、そして来年1月末のライブツアーファイナルをもって河野の脱退が決まっているなど、本人達にとってもファンにとっても激動の時代が過ぎていきました。「おやすみモンスター」以降、何枚もオリジナルアルバムをリリースしている彼らですが、近年の路線変更もあって、個人的には本作を超えるアルバムは今のところ残念ながら登場しなかった、というのが正直なところ。来年2月以降、三人体制となるゴーイングの新たな歩みに光明がありますことを願います。

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