wool 今日で8月も終わり。今月5回に渡って各アーティストのベストアルバムを「今週の1枚」として紹介する特別企画も今回で最終回です。トリを務めるのは、SMAPの2枚組ベストアルバム「WOOL」。1997年3月26日発売。

 彼らにとって2枚目のベストとなる今作は、前作ベストの「COOL」(1995年)や、オリジナルアルバム「006」あたりから始まった、海外からフュージョン系のミュージシャンを招いて、バックトラックを豪華布陣で固めるという、本格派路線の集大成とも言える作品。2枚のディスクのうち、「WOO SIDE」(青盤)はファンクなトラックを、「LOO SIDE」(緑盤)はメロウなトラックを、未発表曲も含め1994〜1997年あたりの作品を中心に構成しているのですが、どちらも手の込んだオケがバンバン出てきて、音楽ファン、特に生ドラムのグルーヴフェチには悶絶モノです(笑)。

 この時代にリリースされた代表的なシングル曲も収録されていますが、「SHAKE」「青いイナズマ」以外はすべてバージョン違いでの収録(オリジナルアルバムに入ってるのと同じかな?)となっていて、あくまで「シングル曲」という枠内で作り上げられたシングルバージョンに対し、今回のベストに収録されているバージョンは、かなり自由度が高く、各プレイヤーの手腕が発揮されまくっているのが特徴でしょうか。特に手数の多いドラムプレイが光る「しようよ」、きらびやかなリフを敢えてカットしてストイックに迫る「たぶんオーライ」、イントロからグルーヴ感バリバリで気絶しそうになる(?)「はじめての夏」など、ゴージャスにブラッシュアップされたシングル曲の数々を「音の違い」を含めて楽しめる内容になっています。
 では打ち込みオンリーの曲はチープなのか?と言われると、それはもちろんそうではなく、「ポケットに青春のFun Fun Fun」「Major」など、しっかりと手の込んだトラックを作り上げていて、聴かずに「アイドルポップスじゃん」と侮ることなかれ(今さらそんなこと言う人はいないか)、各曲の完成度はかなり高いです。

 豪華演奏陣の話ばかりしているような気がしますが(汗)、では歌詞はいうと、「等身大の若者像」をリアルに描いている曲が多いですね。今でこそSMAPのメンバーは全員三十代で、歌う曲もメッセージ性の強い曲が増えてきていると思うのですが、このベストが発売された頃の彼らは、「現代に生きる若者の象徴」的なイメージを担っていて、歌詞もいわゆるアイドル的な夢見がちな内容の曲よりも、「普通の生活を送っている若者の心理」を歌っていたイメージがあります。だからこそ、ここまでの人気を得ることが出来たのだと思うし、筆者も「$10」「がんばりましょう」(本作には未収録ですが)が世に出ていなければこのアルバムを手に取ることもなかったと思います。
 歌唱力のほうは・・・まあ、ノーコメントなんですけど^^;、もし、この完璧なバックトラックの上に、抜群の表現力を持つ歌い手が前述の「若者の心理」を高らかに歌い上げていたとしたら、それはそれで逆に完璧すぎてやな感じになったかも(苦笑)。SMAPのこの声だからこそ、日常の鬱憤を歌い上げることが嫌味には感じず、逆にリスナーから共感されていた、という点もあったと思うので、この辺は本当にライターも含めたスタッフが「SMAP」という素材を上手く活かした、そしてSMAPもそれに見事に応えた、まさに適材適所の勝利と言えるのではないでしょうか。
 筆者がお気に入りの歌詞は、普段の暮らしを何気なく描いた「A day in the Life」、コミカルな「シャンプー3つ」、扇情的なミディアム「雨がやまない」。ストーリー仕立てのラブストーリー「君と僕の6ヶ月」もいいですね。SMAP自身の事を歌っているようにも読み取れる「働く人々」も好きです。

 このベストアルバムと前後して発売された、傑作テクノポップ「ダイナマイト」、山崎まさよしのカヴァー「セロリ」、そして翌年の「夜空ノムコウ」で初ミリオンと、次々と大ヒット曲を連発して飛ぶ鳥を落とす勢いだった90年代後半のSMAP。2001年にはデビューから「らいおんハート」までの全シングルを収めた「SMAP Vest」並びに裏ベスト「ウラスマ」がリリースされており、だんだんこの「WOOL」の存在感は薄くなっている(ウルトラブリスターパッケージはドデカイけど・笑)気がする今日この頃ですが、オリジナルアルバムまでは手を出さないけど、シングルだけじゃなくもうちょっとSMAPを聴いてみたいなという方には是非お薦めです。限定発売ですが、レンタルショップには結構あります(笑)。

 ・・・というわけで、8月5週にわたり、TUBE、モー娘。、高野寛、ドリカム、そしてSMAPと続いた「ベストアルバム特集」はこれにて終了です。いずれまたやるかも(笑)。来月からはまた仕切り直しでオリジナルアルバムの紹介を再開いたします。今後もどうぞお付き合い下さいませ。