kuhsohclip 今日からもう6月。早いものです。そんな中22回目を迎える「今週の1枚」では、現在メンバーそれぞれにソロ活動を展開しているスキマスイッチのセカンドフルアルバム「空創クリップ」をご紹介。2005年7月20日発売。

 スキマスイッチは大橋卓弥(Vo)と常田真太郎(Pf)による二人組のユニット。ご存知だとは思いますがピアノの方がアフロ頭です(笑)。2003年にデビュー。ミニアルバム「君の話」を挟み、翌年にリリースしたファーストアルバム「夏雲ノイズ」は好調なセールスを収めました。その後シングル「冬の口笛」「全力少年」のスマッシュヒットでさらに安定した人気をつかんだ彼らが放ったこのアルバム「空創クリップ」では、上り調子の勢い・・・だけでは片付けられないような、彼らの音楽性の高さに驚かされるアルバムになっています。

 いわゆるポップスサウンドに、日常を切り取ったストーリーが歌詞として乗っかっているのが彼らの持ち味であり、曲によっては初期のミスチルとか、90年代の槇原敬之を彷彿とさせます(実際彼らはこの二組のファンだとか)。このアルバムの中の曲をピックアップすると、アコースティック調の「君に告げる」で何気ない朝の情景を描き、「水色のスカート」では恋愛の幸せな時期なのに漠然とした不安を語ったり、筆者が少々耳が痛い歌詞と感じた(苦笑)「フィクション」など、ありふれた日常生活の中でハッとするような言葉と、ユニークな言葉選びが魅力的。ただ、基本は爽やかなんですが、不意に薄気味悪い歌詞(笑)が出てきてインパクト大・・・というか、ドキっとすることがあります(笑)。これも彼らの魅力のひとつなのかも。

 また、少しファンクな要素を取り込んでいるせいか、心地良い中にも洗練されている印象を持つ曲が多いのと、「二人ユニット」ということの強みを最大限に生かして、曲ごとにサポートでリズム隊やブラス、ギターまでも自由に入れ替えているのも特徴。これがまた豪華なメンツ(ギターに関しては高野寛、桜井秀俊、それに山弦まで呼んじゃって・・・)でして、このアルバムの完成度の高さに一役買っているのも確かでしょう。
 さらに、「さみしくとも明日を待つ」ではGRAPEVINEとコラボレートするなど、外部の良さを取り込みつつも自分たちの味に料理することができるセンスを持ち合わせていて、作詞・作曲はもちろん、編曲・プロデュースまでも自身で手がける彼らのスキルを十分に生かしたアルバム製作を行い、それが見事結果(音楽的にもセールス的にも)に結びついているわけですから、まだ若い(当時すでに20代後半だから、遅いデビューとも言えますが)のにその才能おそるべし!といったところでしょうか。

 個人的には中盤、切れ味鋭いギターサウンドが炸裂する「キレイだ」、ノスタルジックな3拍子「かけら ほのか」、喪失感が悲しいバラード「目が覚めて」(この曲がこのアルバムで一番好きかな)、そして喧嘩して出て行った彼女に仲直りを呼びかけるほのぼのポップス「飲みに来ないか」。これらの一連の流れが気に入っています。最後の締めをアルバム用にイントロを追加した「雨待ち風」で切なく終わるというのも良いですね。50分という比較的短い総演奏時間ということもあり、一度聴き終えてももう一度頭から再生して聴きたくなってしまうような、ちょっと中毒性のある(?)良質のアルバム。ポップス好きにはうってつけの作品だと思います。

 前作「夏雲ノイズ」と比べると、歌詞のぶっ飛び度はこれでも落ち浮いたほうだし、サウンド的なアプローチもややおとなしめかな?という気もします。「夏雲〜」までの緊張感のあるスリリングな部分と、次作「夕風ブレンド」でのバラードマスター(?)に至る風格、これらの要素がこのアルバムには両方含まれているようで、そういう意味ではスキマスイッチの過渡期(って言ってもフルアルバムまだ3枚しか出してないんだけど^^;)的な作品にあたるのかもしれませんが、1枚通しての完成度は高いレベルで安定していると思います。ベストアルバムでスキマスイッチに興味を持った人には聴いて損なし!の1枚ですね。