asagao 今週ご紹介する1枚は、レミオロメンのメジャーデビューアルバム「朝顔」。2003年11月19日発売。

 「粉雪」の大ヒットでかなりメジャーになったので、もはや説明は不要かもしれませんが、レミオロメンはエレキギター、ベース、ドラムスのいわゆるスリーピース編成。ギターヴォーカル藤巻亮太の手がける、どこか土の匂いが感じられるような、生活感に溢れる歌詞が特徴の三人組です。

 ブレイク後の彼らはキーボードやストリングスといった、いわゆる上モノ系の音を多様しているという印象がありますが、この「朝顔」では、アルバム1枚通して徹底したスリーピース編成を貫いています。プロデューサーである小林武史のキーボード参加も1曲ありますが、それはスパイス程度の味付けで、あくまで「メンバー三人の音」で世界観を構築(まあギターダビングはしてあるようですが)。そのサウンドは荒削りながらどこかストイックで、他の音の入り込む余地がないほどの隙のない仕上がり。ロックサウンドなのに湿度が高そうな感じ(笑)も魅力的というか。聴いていてこれって本当にデビューアルバム?と思えるほどの完成度ではないでしょうか。
 また、中音域の声質が特徴的な藤巻亮太のヴォーカルは朴訥で、その声で文学的に綴られた詞を歌い上げることによって、リスナーが情景を思い浮かべるのに一役買っています。物語が分かりやすい例としては「電話」「ビールとプリン」など。哲学の領域まで踏み込んでやや意味難解(?)の「まめ電球」「フェスタ」なども不思議な味わいがアリ。ちなみに管理人のベストトラックは「日めくりカレンダー」。メジャーコードなのにどこか侘び寂びを感じさせるこの曲は、その声質、バンドの演奏の力、そして歌詞が三位一体になった結晶ではないでしょうか。

 このアルバムはインディーズミニアルバム「フェスタ」に収録された曲やシングル「雨上がり」「電話」(カップリング含む)など、既発の作品を数多く含んでいて、発売当時はファンの間でも賛否両論が巻き起こったようですが、後に「それまでの自分たちをいったん精算しようとした」と公式フライヤーで書いているように、この時期のレミオロメンの活動を一気に総括したベストアルバム的な意味合いがあったようです。これ以降の彼らの音楽性はかなり自由になり、先述のキーボードやストリングス導入、時には打ち込みを使用し、よりポップな楽曲を多く世に出していくようになるわけですが、どうサウンドデザインを施しても、彼らの楽曲の根底のある部分、どこか懐かしく、そして温もりのある音楽性はこの頃から変わっていないと思うし、これからもその部分を大切にして活動していってほしいと願っております。

 あと、オマケに一つ。このアルバムはCCCD(コピーコントロールCD)で発売されましたが、2007年12月に通常のCDで再発されました。これから購入する方は再発盤のほうをぜひお買い求め下さい(笑)