ichibanchikaibasyo 現在ではlittle by littleとして、また、様々なアーティストへの楽曲提供者としてその名が知られているtetsuhikoこと、鈴木哲彦。そんな彼は元々ソロシンガーとしてアーティスト活動をしていました。今週の1枚としてご紹介する「いちばん近い場所」(1994年9月7日発売)は、彼のデビューアルバムです。

 tetsuhiko名義になってからの楽曲は正直あまり知らない^^;のですが、この鈴木哲彦時代の楽曲に関して言えば、キャッチーで親しみやすいポップなメロディーラインの上に、ちょっと頼りない主人公の「僕」が、恋をして悩んだり迷ったり、失恋して落ち込んだり・・・という、まさに等身大の青年のラブソングが中心。・・・と書くと、槇原敬之が浮かぶという方も多いと思いますが、鈴木哲彦がマッキーと明らかに違うのは、「僕」がそこそこモテてる幸せな曲も多いってことでしょうか(笑・・・っていいところか?)。あと、シングルにもなった「抱きしめて離さない」とか、「逢いに行け」といった能動的なラブソングもあるのも特徴かな。「(辛いことも色々あるけど)恋も生活も、真っ直ぐに頑張る」というメッセージがこのアルバムでは顕著に表れていて、このレビューを書くためにCDラックから引っ張り出して久々にこのアルバムを一通り聴いてみましたが、このピュアな作風に、近年すっかりやさぐれてしまった管理人の心も浄化されていくかのようでした(苦笑)。

 サウンドプロデュースは十川知司氏。このアルバム製作当時で既にかなりのキャリアを築いていたと思われる十川氏が、新人・鈴木哲彦の良い意味で青臭い詞曲をどう料理(アレンジ)したのかというと、バンドサウンドを軸にして、ベテランプレイヤー達の演奏で上手く味付け。引くところはきちんと引いて、押すところはしっかり押す、という安定感のあるオケに、初々しいヴォーカルが乗っているというミスマッチさ。これがまた良い味を出していて、名プロデュースだなぁ〜と思います。
 個人的なイチオシ曲は、遠距離恋愛ソング「風に乗り」と、失恋から立ち直ろうとする主人公を描く「PAIN」。どちらも四分刻みのピアノが切ない感情を紡ぎ出しております。ああ青春の1994年。

 鈴木哲彦名義でのアルバムリリースはこのアルバムを入れて計3枚。1997年の「OPERA」以降リリースが無くなり、その後は前述の通り、楽曲提供やユニット活動に移行していったわけですが、ソロ活動はもうやらないんですかね。密かに期待しているんですが(笑)。まあ、デビューして2〜3年でブレイクせずに契約解消されてしまうアーティストも数々いる中で、今でも(tetsuhikoとして)名前を見かけることができるのはファンとしてはそれだけでも嬉しい事ではあるんですが・・・。できればもう一度、彼自身にスポットが当たってもらえないかなぁ・・・と思う今日この頃です。だめ?