
サムエルといえば、やはり「雷波少年」での合宿と、「ラストチャンス」の大ヒット。解散した今でも彼らを語るにこの2つは外せない出来事だな、と思います(「雷波〜」は観てなかったので詳しくは分からないのですが^^;)。そんな体験から約1年後にリリースされたのがこのアルバム。ヒット曲を出した直後だからといって性急にアルバムリリースせず、1年かけて製作した成果なのか、丁寧に作り込んである一枚に仕上がったのではないでしょうか。
収録曲は全12曲。オープニングからサムエルのテーマソングとも言うべき「ギターマン」、王道なメロディーに英詞が乗る異色の「be there」、そしてマイナー調の「ウソツキ」。この序盤からの3曲でつかみは充分(笑)。その後も、彼らの魅力のひとつである三人のハーモニーをふんだんに味わえる「ビデオテープ」、ストリートライブの空気を1曲に封じ込めた「ひまわりのうた」、リードシンセが意表をつく実験的なアップテンポの「ランナー」、遊び心を感じる「Musician Life」などなど・・・どの曲も音楽を表現する楽しさに満ちています(悲しい曲もありますが)。これらの曲の完成度の高さは、例の合宿生活で培ったものなのかは分かりませんが、シングル曲「さよならじゃない」「あいのうた」での楽曲製作の過程を経て、ファーストアルバムの「何となく良いけど何かもうひと押し欲しい」というポジションから一気に成長した彼らの姿は眩しいかぎり。個人的にこのアルバムで一番好きな曲はラストの「旅路」。メンバーの中では寡作なヴォーカル・大久保伸隆氏の作品ですが、流れるようなメロディーと、現実を見据えながらも希望を綴る歌詞がお気に入りです。
このアルバムに、大ヒット曲「ラストチャンス」は入っていません。この前にシングルコレクションアルバムが出たからか、それともアルバムのトータルバランスを考えて外したのか。多分前者の理由だと思うんですが、そのせいかセールス的にはあまり振るわなかったようです(アルバムジャケットがちょっと・・・という声もありますが・笑)。ですが、このアルバムはSomething ELseは「ラストチャンス」だけじゃない、こんな音楽をやっていますよ!という主張をギュッと凝縮してパッケージした、いわば名刺代わりの一枚ではないでしょうか。
数年後、ベストアルバム「TICKET」が発売され、このアルバムからの曲が多数収録されているので、サムエル入門的にはそちらのアルバムのほうがお薦めではありますが、オリジナルアルバムの完成度という点では、彼らの全キャリア中、この「ギターマン」が一番なんじゃないかな、と思っています。
結果的に最後になったオリジナルアルバム「COLOR」でも、まだまだ音楽的な可能性を見せてくれていたんで、その1年後に解散してしまったのは残念と言うしかありませんが、彼らが残してくれた作品は、今でも筆者の心の中に深く刻まれています。今後の各メンバーの活動を見守りつつ、これからもサムエルの一ファンであり続けたいですね。
(2008/9/23 一部改稿)
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