sakaipasadena 2025年3月19日発売、さかいゆう通算8作目(公式表記)となるオリジナルアルバム。全11曲収録。CDのみの通常盤、前年3月に開催されたデビュー15周年記念ライブツアーの最終日である東京公演の模様を収録したBlu-ray付属の初回限定盤の2形態での販売。本レビューは通常盤となります。

 シティポップのカバーアルバム15周年のベストアルバムを挟んで久々のオリジナルアルバムとなった本作。公式のカウントとしては2021年1月にLPと配信でリリースされた「thanks to」が7作目だと思うのですが、次いで5月に「thanks to」のCD盤とのカップリングでリリースされた「愛の出番」はどうやら8作目としてはノーカウント(コンピ盤っぽかったから?)で、今回は約4年2ヶ月ぶりの8作目のオリジナルアルバム、という扱いのようです。内訳は、先行配信としてリリースされていた前年12月のタイトル曲「PASADENA」、明けて1月の「Gotta Get Up feat. magora」、2月の「アイのマネ」の3曲が既発で、ボーナストラックとして前年3月に配信オンリーでのリリースとなっていたスタジオライブ+新規音源のミニアルバム(といっても11曲入り)の中の新規スタジオ音源3曲をラストに配置しており、実質的には新曲を含む本編8曲+既発音源のボーナス3曲という構成になっています。

 発売直後のインタビューによると、本作は15周年2枚組ベストのうちの「黒盤」…ポップス以外のソウル・ファンク・ゴスペルなどの要素が強く表現されている「ブラックミュージックさかい」的な方向でのアルバム制作に臨み、収録曲をロサンゼルスと日本で半々に分けて作り上げられた作品とのこと。ということで近年はコロナ禍で海外渡航もままならずレコーディングも国内中心…というアルバム制作が続いていましたが、今回は久々の海外レコーディングが実現。といっても、2010年代後半での作品に多く見られた海外の著名なアーティストの協演による生演奏…といった録音ではなく、あくまで黒っぽさに拘り、ほぼ打ち込みトラックのクールなビートに乗せてさかいが歌う…というナンバー主体。タイトル曲の「PASEDENA」はこの中ではまだキャッチーだったり、中盤ではラッパーであるKダブシャインをフィーチャーした平メロラップ+サビメロ構成の「What About You」、ラストに女性シンガーであるPUSHIMとのハーモニーを聴かせる「Understanding」等、仕掛けの幅はちょいちょいあるものの、基本的にクールなテイストのまま8曲駆け抜けて行ってしまうので(曲も1曲単位3〜4分前後と短め)アルバム全体を通しての起伏みたいなものは過去作と比べると乏しいかなと。
 一方で歌詞のいくつかについては、こちらもインタビューで語っている通り政治をはじめとする世論に対する「ぼやき」をラブソングの形で表現、というのは結構新鮮だったかなと。この手のテーマの曲はともすればどうしても説教臭い歌詞になってしまいがちなのですが、その辺りをギリギリで押しとどめて描く辺りは、詩人としてのさかいゆうのセンスを感じました。以前にも書きましたがメジャーデビュー最初期の彼の詞はちょっとキラキラしてて結構苦手だったのですが(笑)、経験を積み技術を磨いて今日の形を描けるようになったのはソングライターとしても大いに成長しているな、と思いました。

 ボーナストラック3曲は先述の通り、ニューヨークで録音された配信ミニアルバムの中からオリジナル曲「縄文ノヒト」「虫」にカバー「蘇州夜曲」のスタジオ録音音源を初フィジカル化。これらは海外のジャズミュージシャンと共に録音された、本編とはまったく別コンセプトで制作された楽曲とのこと。確かに本編8曲とは真逆のコンセプトなので、中途半端に本編に散りばめられたら浮きまくりだったと思うので、ラスト3曲という位置での収録は納得。結果全11曲となりオリジナルアルバムの体裁は整えましたが、本編のコンパクトさ(8曲約30分弱)もあり、実質はミニアルバム以上フルアルバム未満のあっさり風味、腹八分目的な内容ということで、従来と比べるとジャンルの狭さはありますがサラっと聴ける作品でした。