2025年4月29日発売、アニメ「マクロスF(フロンティア)」シリーズのオールタイム・ベストアルバム。CD3枚組全44曲収録。CDのみの通常盤、ドラマCDを加えたWジャケットケース仕様の限定盤、さらにBlu-rayにアクリルスタンドを同梱したスペシャルケース仕様の完全生産限定盤の3種形態での販売(3枚組CDの収録内容は各形態同一)。さらに3LPのアナログ盤も同日に発売。本レビューは通常盤となります。「マクロスF(フロンティア)」(以下「F」)は2008年4月から半年間放送された「マクロスシリーズ」のTVシリーズ第3弾。放送終了の2009年、2011年には再編集映画(といってもストーリーも含めて途中からほぼ新作)が前後編で公開。ここでひとまず一連の物語は完結になったのですが、その後も他シリーズとのコラボアルバムや番外編映画、10周年記念のシングルやライブ開催などを経て断続的に展開は続いており、今年2025年4月で17年目を迎えた人気シリーズとなっています。本作は17周年を記念して企画された「完全無欠のオールタイムベストアルバム」(帯より)。これまでリリースされてきた膨大な数の「F」関連の楽曲(ほぼ音楽担当の菅野よう子による作・編曲)の中から、ヒロイン二人が歌った楽曲をピックアップした作品となっています。TVシリーズに限定すれば、放送終了直後の2008年12月にCD2枚組のボーカルコレクションが発売されているのですが、以降のシングル・アルバムリリース展開までをすべて網羅した作品は初。そういった意味では「F」シリーズ時空での初のベストアルバムと言ってもよいでしょう。
DISC-1はメインヒロインであるシェリル・ノームのボーカルパートを担当するMay'nが歌唱した「シェリル・ノーム starring May'n」名義での楽曲を全15曲収録。劇中ではトップシンガーとして君臨している役ということもあり、「射手座☆午後九時Don't be late」を筆頭に歌詞を含めて勝ち気でグイグイ行くようなアッパーなロック調の楽曲が中心。かと思えばしっとりとした別れのロッカバラード「ダイヤモンド クレバス」や、話が進むに従って心境の変化で「妖精」のような歌も歌うようになるなど、元々プロのシンガーであるMay'nの表現力とも相まって結構多彩。
DISC-2はもう一人のメインヒロインである「ランカ・リー=中島愛」の歌唱楽曲を全15曲収録。こちらはランカ役の声優を務める中島がボーカルも担当しています。シェリルに憧れる歌手志望の少女がきっかけを掴んでアイドルとして飛躍していく…という立ち位置なのですが、当時キャリア的にほぼ駆け出しだった中島にもリンクする役柄で、歌声も初期の楽曲では初々しく、経験を積んだ後の楽曲は表現力が磨かれていった…というのが実感できるディスクになっていると思います。基本的には元気なアイドルポップスがメインで、「星間飛行」は「F」で一番有名な曲(色々な意味で)だと思うのですが、「蒼のエーテル」や「そうだよ。」といった儚げなバラードにもシェリルとは別の意味での魅力を感じました。ちなみに一番面白かったのは劇中の架空のCMソングとして制作された小品をまとめた「CMランカメドレー」でしたが(笑)。
そしてDISC-3は二人のデュエットソングを集めた「シェリル・ノーム starring May'n/ランカ・リー=中島愛」名義の楽曲を12曲とボーナストラック2曲を収録。二人のデュエットはこの作品を象徴する肝のようなものなので、「ライオン」「What ’bout my star?@Formo」「インフィニティ #7」「サヨナラノツバサ 〜the end of triangle」「dシュディスタb」、そしてアルバム初収録となる「時の迷宮」に「サクリファイス」と、「F」全体のベスト選曲っぽい内容に。個人のソロもいいけどやはり「F」の醍醐味はこの二人のデュエットにあるなぁ…と改めて感じました。なおボーナストラックは二人に加えメインキャラも交えて歌う「Merry Christmas without You」に、お遊びソング的な「SMS小隊の歌〜あの娘はエイリアン(SMSのみなさん)」の2曲でどちらも既発。本作用の新曲は特になし、というのはちょっと物足りないところだったかも。
…というわけで、全44曲・約3時間半という超重量級ベスト。あくまで作品内の劇中楽曲集といったコンピが主だったこれまでのアルバムとは異なり、シンガー別にディスクが分けられているなど、完全なるいちアーティストの作品として聴ける利点があり、これ一作があれば主要な曲はほぼ網羅…なのですが、シェリル・ランカの二人が歌唱した楽曲という縛り故に、TVシリーズ初代オープニングの「トライアングラー」(坂本真綾歌唱)が未収録。まあDISC-3には二人のデュエットバージョンの同曲「(fight on stage)」が収録されているので曲としてはあるのですが、例外的にボーナストラックで入っていればより完璧だったかも。また、ブックレットには歴代作品のディスコグラフィーがジャケット写真入りで掲載されていて歴史を辿れるという利点がありましたが、過去作ブックレットにあった対談ライナーノーツのような遊び心ありの特典がなかったのはちょっと残念。以上のこともあり個人的には本作だけあれば十分という感じではありませんでしたが、17年刻んできた「F」の歴史は伊達ではないことを証明するメモリアルベストとして楽しませてもらいました。
コメント