tagawaburnout 2025年4月1日発売、田川伸治の通算10枚目(THE SONIC TRICK名義を含めた公式の通算では11枚目)となるオリジナルアルバム。全10曲収録。

 DEENを脱退してはや7年、所属事務所からの独立も挟んでほぼ年1ペースでオリジナルアルバムを積極的にリリースし続ける田川伸治の約1年振りとなる本作は、独立以降の体制である自主通販限定にて、2種(今回はType-AとType-B)のジャケット違い、別途で大判ブックレットを用意するという販売形態は継続。本作のコンセプトは公式通販サイトMusic Maker Audioの文章を引用すると「ロックナンバーを中心に、ファンク、ポップ、バラードとヴァリエーション豊かに展開。ライヴを意識した作品群。」加えて「全10曲のうちインストゥルメント楽曲が4曲と、ギター色を全面に打ち出した意欲作。」と紹介されており、本格的なソロ活動開始以降は基本的にはシンガーソングライターであることを前面に押し出してきたこれまでのアルバムの中で、最もボーカル曲とインスト曲がイーブンな立場で混在しているアルバムになっていると思います。

 本作全10曲中、前半3曲がアップテンポのボーカル曲、中盤は4曲連続してインスト曲、そして終盤3曲はミディアム系のボーカル曲で締めるという明確なブロック構成。この構成を頭に入れていないで聴き始めたらいきなりアメリカンロック風の「BE MY LOVE」が始まって、おっ!これがギター色の強いインストか!と思ったら田川のボーカルが始まってああこれボーカル曲なんだ…というサプライズがあり(?)。前述の煽り文ではロックナンバー中心と書かれていますがボーカル曲でギターロックはこの曲のみで、続く「FREEDOM」はファンクっぽいし、終盤で登場する昨年末に元猿岩石の森脇和成に作曲を提供した「からっぽ」のセルフカバーは跳ね気味のミディアムと、ロック一本ではなく作風にある程度の幅はあるのでまあいつも通りかなと。あとは薄々感じてはいましたが現在のDEENのアレンジ外部委託モードを鑑みるに、田川在籍時のDEENは彼のアレンジ能力をかなり反映した曲が多かったんだなぁ…と改めて思いましたが、その盤石のアレンジに対して自作のメロディーにボーカルが追い付いていっていない…という印象も残念ながら相変わらず。
 対して4曲目のエレキギターが唸りを上げる「VERTICAL LIMIT」から始まるインスト楽曲(短いものはなく全曲フルサイズのしっかりとした構成)に関しては、エレクトロに接近した四つ打ちのタイトル曲「BURN OUT」、メロディーを奏でるロングトーンのエレキの音が哀愁満載のバラード「ROMANCE」、そしてかつてのTHE SONIC TRICKのサウンドを彷彿とさせる「DOMINANT CLIFF」と、このブロックはDEEN在籍中にソロCDをリリースしていたギタリスト田川伸治と地続きを感じさせる内容で文句なし。DEEN脱退後は一度全インスト曲のアルバムをリリースしてはいましたがそれっきりで、こっちの路線を積極的にやりたがらない(ように思える)展開が続いていたので、4曲とはいえ久々にシンガーではない田川の真骨頂を見せてくれた気がしました。

 総括するとシンガーとしての活動とロックギタリストとしての活動を折半したような1枚。歌モノ、インストと、その作風はもはや両極化するほど相容れないものになっているものの、前作までのように1枚の中にバラけさせず、ブロック毎にそれぞれまとめられていたのは聴きやすくて好ポイント。本音を言ってしまえばまたそろそろインストのフルアルバムを…とも願ってしまうほどのインスト曲の完成度の高さではありますが、フルのインストアルバムが無理ならこれぐらいの配合バランスで次作以降も出して欲しいかな、と。