2025年7月2日発売、BEGIN通算18枚目となるオリジナルアルバム。全11曲収録。CDのみの通常盤、3月末に行われたデビュー35周年記念の日本武道館ライブを全編収録したBlu-rayとフォトブックが付属の初回限定盤、さらにグッズを追加したアスマート限定スペシャルセットの三種形態での販売。本レビューは通常盤となります。2019年12月のオリジナルアルバム「PotLuck Songs」リリース以降は、メンバーそれぞれがバンドを組んだりソロ活動を並行しながら、BEGINとしての活動はライブツアーを中心という形がメインになってきており、特にここ数年はリリースが途絶えがちだったのですが、今年でデビュー35周年という節目ということもあり、6年半振りのオリジナルアルバムリリースが実現。なおこの間にリリースされた2024年までの配信シングルはすべて今年1月発売の2枚組ベストアルバムに収録されており、先行配信シングルの「太陽」とそのカップリング「ほなバイバイ 〜大阪マドロス女〜」、そして比嘉栄昇と上地等の共作名義で2020年に加山雄三に提供した「ワイキキシェル」のセルフカバーバージョン以外の8曲はすべて新曲。また、特にアナウンスはありませんでしたが本作はこれまで長らく在籍していたテイチクからの発売ではなく、昨年4月に設立された所属事務所の自社レーベルであるAMUSE MUSIC ENTERTAINMENTからとなっており、移籍第1作目のフィジカル作品ということになっている模様。
本作のレコーディングにあたっては、彼らの故郷であり、比嘉が現在住んでいる石垣島での全曲レコーディングを敢行。インタビューによると東京でのレコーディングでは録れないようなテンポでの演奏も録音できたと語っており、クリック無しでの自然な体感に任せた生音でのレコーディングが基本ということも相俟って、演奏がカチっとしていない、フラットなリズムでライブ演奏に近いという聴き心地がするのはそのためかも。また、レコーディングにはツアーのバンドメンバーやミュージシャンである比嘉の二人の息子、武道館ライブにも参加した和太鼓奏者など、気心の知れた面々が名を連ね、こちらも良い意味で緊張感の抜けた身内っぽさ、ファミリー感が漂う音像になっているかなと。
各楽曲の制作については、メインボーカルの比嘉だけではなく、楽曲を制作したメンバーがリードボーカルをとるのが基本、という以前からの姿勢は継続され、さらに今作での新曲はすべてメンバー単独名義で共作名義はなしというのはBEGINのオリジナルアルバム史上では初。昨年ソロアルバムを出したばかりの島袋優はそのアルバムの延長っぽい、緩めのレゲエ調の「沖縄Sunshine Day」や、軽快な「夜空にブルースを」、上地は過去を振り返るセンチメンタルなバラード「星空の下のRADIO」に力強い「開拓者」、そして比嘉は世の中の無常さを儚んだマイナーの「ただ雲になる」、そして武道館でも先行披露された「なんくる君であれ」(比嘉のクレジットはインタビューから察するにさくふうめいというペンネームを使っているのではと推測)等と作風は三者三様に分かれ、過去のアルバムよりもそれぞれの個性の違いが際立つようになってきた…というか、それぞれのソロ活動での成果をBEGINに持ち寄ったという印象。
例えるならそれぞれ別の旅に出ていた三人がBEGINという実家に久々に集まって仲間達と音を鳴らしました、という感じ。全体像としては「空気いただきます」のようなライブで盛り上がりそうなテンションの曲もあるものの、1枚通して聴くとどこか寂寥感が漂う聴き心地であり、先行のロックナンバーである「太陽」以上にインパクトを与える曲はありませんでしたが、この雰囲気こそが50代も後半に突入しベテランバンドとなった現在のBEGINの表現したい音楽、ということなのかもしれません。
ライト層が最新のベストで興味を持って、ではオリジナルも…という流れで聴くと「比嘉栄昇のボーカル曲があまりない(6曲)アルバムだな…」とか、「思ったよりドンチャンしてないな…」という感想になる可能性は否めないところであり、長年のファンである筆者としても、各自ソロの延長線上にあるBEGINの作品、という第一印象を受けるなど求めているものと異なるところはありましたが、久々の新曲満載のアルバムを作ってくれたことには感謝したいと思います(次は何年後になるか分からないし…)。一方で歴代の代表曲の数々やパンチのある楽曲は日本武道館ライブで存分に披露されているので、ショーアップされたBEGINを楽しみたい、という方はライブ映像がセットの初回限定盤Blu-ray付属のほうがお薦めかも。ただこれまで他のアーティストと比べて結構良心的だった金額設定が今回はお高め(8,000円+税)なので、購入の際は財布とご相談を(?)。
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