hataexpo 2024年11月20日発売、秦基博のコラボレーションアルバム。CDのみの通常盤、参加者である草野マサムネとの対談を収録したBlu-rayが付属の初回限定盤、さらにEPサイズのクリアケースにTシャツやグッズを同梱したファンクラブ(Home Ground)限定盤の三形態での販売(CDの内容は同一の全10曲収録)。本レビューは通常盤となります。

 デビュー初期の段階から主にシングルのカップリング曲で外部ミュージシャンとのセッションを積極的に行ってきた秦基博でしたが、こうして1枚のアルバムとして企画・制作されたコラボレーションアルバムは18年ものキャリアの中では初。インタビューによると約1年がかりで作り上げられた力作と語られています。といっても10曲すべてが本作用の新規作品というわけではなく、後半4曲は過去の既発コラボ曲からセレクトされており、実質は本編6曲+ボーナス4曲の、ミニアルバム〜フルアルバムの中間といった印象。なお発売に際しては、参加アーティストの発表を2回に分けて行い、配信シングルとして9月に秦基博×sumika名義の「ハローサーリアル」、10月に秦基博×ハナレグミ名義「No Where Now Here」がそれぞれリリース、そして発売二週間前には秦基博×草野マサムネ名義の「ringo」がアルバム先行配信と、リスナーの期待を膨らます入念な形での段取りが行われてのアルバム発売となりました。

 新規制作6曲については、これまでに結構あった既発曲を再アレンジして参加してもらう…という形ではなく各コラボ相手と綿密な打ち合わせをし、イーブンに近い共作として作り上げられた本当の意味でのコラボレーション楽曲。その成果は大いに反映されており、草野マサムネとの「ringo」、sumikaとの「ハローサーリアル」は、寡作な上に枯れた味わいが濃い近年の秦のオリジナル曲から一転して、ポップでキャッチーメロディーに、鮮やかなバンドサウンドが全開。著名プロデューサーにサウンドプロデュースを依頼していたデビュー初期から数年の頃の明るいノリが久々に感じられてちょっと懐かしかったりも。一転してピアノ+ストリングス+打ち込みリズムによるTOMOOとの「青葉」又吉直樹との「ひとり言」では、又吉による朗読から始まるものの、曲自体は秦のアコギ弾き語りといった近年の自身の作風を踏襲した予想範囲内のナンバーも。リサ・ローブとの「Into the Blue」では、リサに合わせて歌詞は全英語詞、パンチの効いたハーモニーを含めたデュエットが展開されて、ボーカリスト同士の歌声コラボとして個人的に一番良かったのはこの曲かも。実質ラストを飾るハナレグミとの「No Where Now Here」でのほのぼのポップス感(?)も派手さはありませんが良い味。あと秦基博と永積タカシって結構声質が似てるかも、という発見がありました。
 ここ数年(もっと言えばここ10年ぐらい?)は薄味の渋い作風がすっかり根付いていた秦ですが、ここに来てのコラボ展開によって相手側の影響もあってか楽曲に勢いが戻ってきた感がありますし、本人もインタビューでは制作作業で新たな発見があったと語っており、今回の経験が以降の楽曲制作に大いに役立てばリスナーとしては嬉しいな、と思いました。

 後半の歴代コラボレーション楽曲からの4曲については、2011年から2021年までのコラボ曲の中からの選曲。筆者としてやはり語りたいのはKANとのコラボである「カサナルキセキ」。これは2020年11月末のKANのアルバムにて「キセキ」が、翌年1月末の秦のシングルのカップリング曲として「カサナル」がそれぞれ発売された後で、同一のテンポにコード進行、同一の演奏陣で演奏されたこの2曲を重ねて1曲として配信したという経緯を持つ斬新なハイブリッドナンバー。4月の配信直後にオンエアされたKANと根本要のラジオ番組に秦がゲスト出演した際の書き起こしによると、かなり綿密な打ち合わせの上で制作された…と語られており、そういった意味では今回の新作コラボとシチュエーション的には近いかも。ただ、実際はまったく違う2曲のメロディーがパズルのように噛み合う…というわけではなく、左寄り、右寄りのチャンネルにそれぞれのボーカルが配置され、時々メロディーがハモって重なって聴こえるというタイプのセミフュージョン(?)的な楽曲であり、2曲重なって真の完成を見たというよりも、どちらも1曲として完成していた「キセキ」「カサナル」のさらなる融合バージョンといった趣で、このバージョンだけでは両曲の魅力を完全には伝え切れない印象も感じましたので、この曲に興味を持った方は是非、「キセキ」「カサナル」の単独バージョンも聴いてみることをお薦めいたします。