2024年10月30日発売、2022年秋から2023年春にかけて開催されたKANのバンドライブツアー「KAN BAND LIVE TOUR 2022【25歳】」を収録したライブBlu-ray。特典として還暦記念に撮影された「振袖ブロマイド」2種のうち1種をランダムで封入。これまでは1〜2年に一度のペースでバンドを率いたライブハウスツアーを開催してきたKANでしたが、2020年初頭より始まったコロナ禍の影響により、同年末にリリースされたニューアルバムを引っ提げての従来のレコ発ツアーの発表がないまま、ライブはイベント出演やピアノ弾き語りを主体に活動。そしてある程度コロナ禍が落ち着いた2022年秋にようやくバンドライブツアーの開催が実現。当初は2022年10〜12月に全国主要都市を回る9公演が予定されていましたが、12月2、3日の東京公演はKAN本人がコロナに罹患し、12月2日の公演は翌年1月10日、12月3日の公演は翌年3月7日にそれぞれ振り替えられてライブは完遂。本作はセミファイナルであるZepp DiverCity Tokyoでの2023年1月10日の公演を全曲収録。またご存じの通り、ツアー終了後KANはメッケル憩室癌を患っていることを公表、以降の予定されていた活動スケジュールを白紙にして闘病を続けるも、11月12日にこの世を去っているため、本作は彼にとって生涯最後のライブツアー(のセミファイナル)を記録したものとなりました。
最新オリジナルアルバム「23歳」発売から2年経過したという意味だと思われるツアータイトル「25歳」。てっきりアルバムほぼ全曲+有名曲で構成の典型的なレコ発ツアーになるかと思いきや、3年前のツアーで先行披露されていたアルバム収録曲4曲のうち「エキストラ」以外は演奏されず(先行シングルの「ポップミュージック」もやると思っていたんですが…)、実際はニューアルバムからは6曲を中盤と終盤に集中配置し、全体像としては歴代のオリジナルアルバムから1曲ずつ披露していくオールタイム的なセットリストに。「オリジナルアルバムに入っているシングル曲」も1曲としてカウントされるため、「ときどき雲と話をしよう」「東京ライフ」「MAN」といったあまりバンドライブでは披露されないような弾き語り系シングル曲を久々に観ることができたのは新鮮でした。また、本人のプライベートな留守電メッセージ用ソングを商品化にあたって歌詞を書き直した「今夜はかえさないよ」の原曲「もしもし木村です」が初披露されるというサプライズもあり。元々の歌詞のままで商品化しちゃっても良かったんじゃないかと思うぐらいの完成度でした(笑)。
ライブでのパフォーマンスはどうしても現時点から振り返ってしまうと冒頭の「Sunshine of my heart」は何か歌声がリズムに乗り切れていない…という不安定さ(コロナ明けの病み上がりということもあり)を感じてしまう箇所はありましたが、それも最初のうちぐらいで、ステージが進んでいくに連れてこれまでのライブと遜色なく緩急をつけたパフォーマンスが展開されていくのでそれほど気にはならず。ちなみに一番面白かったのはアコースティックセットでの「カラス」にて、ステージ上のドライアイスが暴走したのか演奏中に過剰に吹き上がる場面があり、驚きと笑いをこらえつつ歌うKANの表情(笑)。そんなハプニングがありながらも本人は久々のバンドライブを心から楽しんでいたように思えるし、相変わらずのゆるゆるでスットボケなMCも含め、結果的に最後のライブ云々ということを差し引いても、鑑賞していて満足度の高いライブだったと思います。
なお恒例の副音声は今回は「福音声」と題し、KANに縁のある人物達からのメッセージを数分ごとに区切って収録。TRICERATOPSから始まりASKA、スキマスイッチ、秦基博にスタレビ、aikoといった音楽業界の先輩後輩から、歴代の新旧バンドメンバー、普段は表舞台に出ない裏方スタッフ、外国人も含む一般人まで、約40組が参加し、それぞれがKANとの思い出を語るオーディオコメンタリーとなっています。出演者のタイムテーブル一覧の中に彼より先に旅立ったかつてのバンドメンバー、矢代恒彦、嶋田陽一の両名の名前があるのには「あれ?」と思いましたが、聴いてみるとなるほどなと納得。個人的には担当ラジオのディレクターや照明スタッフの裏話、そして若い頃に出会った友人知人のKAN評が興味深かったです。普段から醸し出していた本音をオブラートに包んだオトボケっぷり、それでいて完璧主義者的な気難しい面、それも含めて色々な人たちに愛され、影響を与えてきた人だったんだなぁ…と改めて感じました。
筆者は本作を同日発売のベストアルバムと一緒に発売日に購入したのですが、買ったはいいものの「これが最後のKANの映像作品…」と思うとなかなか鑑賞する心境になれず、本編・副(福)音声を含めて先日ようやく視聴完遂。観終わった感想は「充分楽しく、それでいて寂しい作品」かなと。本作リリース実現のために奔走してくれたスタッフの方々や、ブックレットのクレジットに素敵な表現で登場している奥様に心から感謝を。そしてコメンタリーでも語っていた方がいましたが、彼の音楽には今後もお世話になると思うので、これからも楽しんでいこう、と思っています。
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