fovkimigasukida 2025年5月15日発売、FIELD OF VIEW通算22作目となるオリジナルシングル。新曲+セルフカバーの2曲全5トラック収録。

 デビュー25周年時の2020年に一部メンバー稼働の新作ベストを発売後も、引き続きFIELD OF VIEW名義でボーカル浅岡雄也、ドラムス小橋琢人の二人でイベントやライブ出演を積み重ねてきた彼ら。昨年からは2002年の解散後完全に裏方に回っていたギタリスト小田孝が合流、四人中三人が揃った形で迎えた2025年春に大阪・東京でデビュー30周年記念ライブを開催。本作はデビュー日であり、東京公演(LINE CUBE SHIBUYA)当日に合わせてリリースされたニューシングル。なお、装丁は二つ折りの歌詞カードを封入し、裏ジャケ無しの市販CD-R用薄型プラケースに帯を付けた仕様。また、これまでFOVの音源は旧ビーイングことB ZONE関連のレーベルが発売してきましたが、本作は浅岡がソロ活動の際に使用するプライベートレーベル・FlyBlueからの発売。今年1月に新たに立ち上げられた公式サイトも浅岡の個人事務所であるU-Factoryのコピーライトが表記されているなど、どうやら長年在籍したBE ZONEから独立しての第1作となった模様。

 表題曲「キミガスキダ」は浅岡作詞、浅岡・小田作曲、編曲は葉山たけしとFOVの連名。インタビューによると98〜99年頃に作っていたメロディーを作り直した(大意)とのこと。そう言われれば確かに90年代末のオリジナルアルバムの中にあってもおかしくないようなポップな曲かなとは思います。歌詞は新たに作られたようでタイトル通りの告白ラブソングですが、「僕は屍」「僅かな残り時間」等、結構ネガティブなフレーズもありつつ「君」を求めるストレートな楽曲。アレンジに関しては、2022年のシングルの時に感じたドラムのスカスカ感も無くなり、ロックバンドとしての音を鳴らしていた頃の彼らを彷彿とさせる音像で、本当の意味でのFOVの最新作が登場したかと思うと感慨深いものがありました。

 カップリングの「渇いた叫び」は1998年にリリースされた8枚目のシングルのセルフカバー。先述のインタビューでは浅岡はこの曲をバンドの代表曲とは思っていなかったようなのですが、タイアップ先の周年の盛り上がりをきっかけに聴き直し、評価を改めたと語っており、それがこの度のセルフカバーに繋がったようです。編曲はオリジナルの小澤正澄の名義を残し、今回ギターで録音に参加している綿貫正顕との連名。若干ギターの音を加えつつも、あくまで原曲を忠実に再現した新録音バージョンといったところ。当時のビーイング特有のカチッとしたロックサウンドでまとめられていたオリジナルに対して、今回はライブ演奏的な揺らぎや体温が若干高めのバージョンという印象でしょうか。ZAIN期のヒット曲を差し置いてのセルフカバーになりましたが、他の代表曲は25周年ベストの別テイクなどが既に商品化されていることもあり、BeatRec期の最大売上を誇りながら扱いがあまり大きくなかったこの曲を選んだのは良いセンスだと思いました。

 残り3トラックは両曲のボーカル抜きトラック(【Minus One】と表記)に加え、表題曲のボーカルパートのみを抜き出したトラック(【Vocal Only】)も収録する面白い試みもあり。とはいえ、実質2曲で税込2,200円というのは周年ご祝儀価格といっても高価と言わざるを得ないのが正直なところ。配信も今のところ解禁されていないので、かつてのファンに届く機会を金額面で逃しているとしたらちょっと勿体ない気も。なお来年3月には30周年記念アルバムの発売も予定しているようですが、その時は相場的な価格にしてほしいな…と思います。