sardnamidairode 2024年8月21日発売、SARD UNDERGROUNDの通算2作目となるオリジナルアルバム。全11曲収録。CDのみの通常盤、ライブBlu-ray付属のPREMIUM EDITION(初回出荷生産分のみバイオグラフィー年表封入のロングボックス&ダブルジャケット仕様パッケージ)の二形態での発売。本レビューは通常盤となります。

 ZARDのトリビュートバンドとしてスタートしたSARD UNDERGROUNDが初の全曲オリジナルのアルバムを発表したのは2021年9月。その後もZARDのトリビュート作品制作は継続して行われ、オリジナルとZARDカバーを織り交ぜたミニアルバムからは1年11ヶ月ぶり。ミニアルバム以降にリリースされたフィジカルシングル「卒業式」「役者犬のうた」、本作と同時発売のシングル「夢で逢いましょう」、配信シングルの「その結婚、正気ですか?」といった既発オリジナル曲は全曲収録。なお、本作を引っ提げた全国ツアーの最終日である9月22日に杉岡泉美(Ba)坂本ひろ美(Key)の2名が9月末をもって脱退することを発表。以降は神野友亜(Vo)のソロプロジェクトとして継続ということになり、結果的に本作がバンド体制として活動してきたSARD UNDERGROUNDの最終作ということになりました。

 作詞は「役者犬〜」以外は神野友亜が担当。作曲は近年ではシングルタイトルも担当するようになり、ミニアルバムでも存在感を見せていた小澤正澄を核に、大野愛果や徳永暁人といったZARD関連の作家や、若手作曲家の藤中友哉からの提供を含めて安定感のあるキャッチーなメロディーの楽曲が並びます。神野の作詞の譜割りは歌詞の詰め込み感、妙に早口になる箇所などは意識的または無意識に坂井泉水に影響されているのか、書いている人物が違うので当然作風は異なるものの、この辺りがSARDオリジナルだけどZARD的なエッセンスを感じたりも。またタイトル曲「涙色で」では如何にもシンセなリード音が前面に出てきたり、中盤で登場するマイナー歌謡色の濃い「琵琶湖大橋」で特に顕著に感じましたが、サウンドスタイル的には平成初期のような、現代から見ると若干レトロに聴こえるアレンジが印象に残る音像に仕上げつつ、00年代のZARD第2章楽曲を彷彿とさせる女性の柔らかめの多重コーラスを要所で使ってくるなど、ちょっと懐かしさもありますがチープではない…というバランスは絶妙かも。一方で、曲の並びについては「役者犬〜」だけはどうしても歌詞の内容的に浮いてしまう感は否めず流れが分断されてしまうので、8曲目ではなく最後にボーナストラックとして置いたほうが1枚通してのアルバムとしての座りは良かった気もしました。

 前述の通り、2024年10月以降はSARD UNDERGROUNDは神野のソロプロジェクトに。新曲も既に配信されていますが、スタジオ音源的には正直明確な違いは…という感じ(生のライブではバンドメンバーが全員サポートになるということで脱退した二人が演奏していた時とはまた印象は変わるとは思いますが)。一人になってもソロ名義ではないということはZARDトリビュートの看板を掲げての活動は今後も続くと思われますが、オリジナルのほうも作品を重ねるごとに個性が出てきているので、本作のようなオリジナルオンリー作品にも引き続き重きを置いて活動してくれればな、と思います。