makihara2024 2024年10月23日配信開始、全23トラックを1タイトルとして配信した、槇原敬之のデジタルライブアルバム。

 同年3〜7月にかけて開催された槇原敬之の全国ライブツアー「Makihara Noriyuki Concert 2024 “TIME TRAVELING TOUR” 2nd Season 〜Yesterday Once More〜」。全38公演の中から、5月23日・東京国際フォーラムホールAの公演内容を全曲配信した本作。元々は映像プログラムとしてWOWOWで8月に初回放送された後、放送では入りきらなかった一部MCも追加した完全版としてBlu-ray/DVDでの発売をアナウンス、そして映像作品発売一週間前の10月16日に配信ライブアルバムとしてのドロップを告知するという形でリリースされたのが本レビューで取り扱う音源となります。

 2018年に初回(1st Season)が開催された「TIME TRAVELING TOUR」の第2弾となったのが本ツアー。オリジナルアルバムを引っ提げた通常のレコ発ライブや、ベストヒット的なライブではセットリストに入らないような、過去に発表されてきたアルバム曲などのマイナーな楽曲を中心に演奏するというコンセプトのライブで、筆者は当時の初回公演をCSのTBSチャンネルで拝見。この時も2010年ぐらいまでの結構懐かしい曲が多めでしたが、2nd Seasonと銘打たれた今回は「1990年代の楽曲」をテーマに据え、ツアー当時の最新曲としてアンコールで披露された「うるさくて愛おしいこの世界に」以外は1990年のデビューから1999年のソニー在籍時までの約10年間のナンバーからの選曲。
 具体的に挙げると「80km/hの気持ち」「さみしいきもち」「I need you.」「BLIND」「THE END OF THE WORLD」「桜坂」等々、この時代の多数の楽曲の中から選び抜かれた、コアなファン垂涎の楽曲が勢揃い。以前にも書きましたが槇原敬之の90年代は筆者のリアルタイムでの中学〜高校〜大学時代に相当し、いやいやこれ懐かしい!という気持ちと一緒に、この曲が発売された頃は何をしていたとか、この曲の歌詞に胸を痛めていたよな〜…などといった気持ちを久々に思い出したりする前半部分の時点で既にお腹いっぱい(?)。また「三人」「キミノテノヒラ」「LONESOME COWBOY」では楽曲誕生のエピソードを語ったMCも収録されており、具体的な秘話も知ることができました。一方で後半になると二大ミリオンヒットである「どんなときも。」「もう恋なんてしない」や、90年代のヒットシングル「北風〜君にとどきますように〜」「No.1」「SPY」「Hungry Spider」等も登場し、普通のライブ状態に戻っていくのですが、全体を見渡すとオリジナルアルバムからの選曲多めという徹底した初期縛りでのセットリストで大満足。基本的に各楽曲はキー・アレンジはオリジナルを尊重したままでしたが、トオミヨウをバンマスにした大所帯のバンドスタイルで披露されており、カチっと組み立てられたスタジオ音源とはひと味異なる、人力での生演奏のゴージャスさも満喫できる極上の内容でした。

 まさにツアータイトルの如く、発売当時の気持ちを蘇らせてくれるような「タイムトラベル」を楽しめるライブアルバム。槇原敬之は今年でデビュー35年目というベテランの域に入ってきており、継続的に新作をリリースしているので、どの時期からファンになったというリスナーの層も様々だと思います。このアルバムは筆者同様、リアルタイムで90年代の彼の音楽に熱心に触れていたリスナーに聴いてもらえればと思いました。