ukadanbest 1970年に木村秀勝(Vo&G)・内田勘太郎(G)の二人で結成された憂歌団花岡憲二(Ba)、島田和夫(Dr)を迎えて四人編成のバンドとなり1975年レコードデビュー、1998年休眠(という名の解散)。2012年の島田の他界の翌年、二代目ドラマーに新井田耕造を迎えて再結成するも継続的な活動にはならず、新たな音源リリースのないまま2024年に花岡が逝去。現在は再び事実上の活動休止状態となっている彼ら。長きに渡るキャリアの中でリリースしたベストアルバムは公認・非公認合わせて20作以上と、オリジナルアルバム(全13作)を凌駕しており、公式サイトが存在しない現在、次の世代へ向けた入門編としては一体どのベストを聴けばいいのか…となってしまっている状況。そんな現状打破への一助となるべく(?)今回の「CD Review Extra」では、ショーボートフォーライフワーナーと所属したレーベル毎にリリースされている憂歌団の各ベストアルバムの中から、お薦めの作品を選んでレビューいたします。

憂歌団 レーベル別・お薦めベストアルバムレビュー


1975〜1982年:トリオレコード(ショーボート・レーベル)時代

ゴールデン☆ベスト 〜トリオ・イヤーズ+2〜
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 2019年6月12日、「ゴールデン☆ベスト」シリーズの1作としてインディーズレーベルであるウルトラ・ヴァイブより発売。全19曲収録。
 ショーボート期のシングル全6タイトルのA・B面の完全収録に加え、ライブ定番の「シカゴ・バウンド」「俺の村では俺も人気者」、加山雄三のカバーである「ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー(君といつまでも)」のライブテイクも収録されるなど、現代においても最もニーズのある代表曲の初発音源をほぼ入手できるのが特徴。「+2」はかなり先のフォーライフ時代の楽曲が収録されているのでこの時代の曲達と比較すると作風的な座りの悪さを感じるのだが、表記の通りボーナストラックとして考えれば許容範囲か。なお、配信版ではこの2曲はカットされており、タイトルに「+2」の表記もない。
 ショーボート期のみを対象にしたベストは徳間ジャパンの「Best Collection」(1989年)に始まり濫発を重ね、10作近くが色々なメーカーから発売されており、内容も似たり寄ったりのものが多いのだが、どれか1枚を選ぶならば本作をお薦めする。なお、現時点において最も新しい憂歌団のベストアルバムが本作。早い時点で廃盤になってしまっていたが、2023年8月のショーボート期アルバムリマスター発売の際に商品番号を変更して再発。現在流通しているのはこちらの盤となる。
 

1983〜1992年:フォーライフ・レコード時代

17/18oz. 〜THE VERY BEST OF UKADAN〜
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 1991年11月21日発売、フォーライフでは通算3作目となるベストアルバム。全17曲収録。1994年11月には裏ジャケ無し廉価仕様のQ盤シリーズ「CD選書」の一作として他の作品と共に再発されている。
 先行シングル「胸が痛い('91 New Version)」を含む、デビュー18年間の活動の中からのメンバーによる自選ベスト…なのだが、「俺の村では俺は人気者」「夢」は新録、「おそうじオバチャン」「嫌んなった」は未発表ライブテイク、「シカゴ バウンド」はライブアルバム「Best of UKADAN Live」からの選曲と、ショーボート時代の代表曲はオリジナル音源の収録ではないのが注意点。なお、前年に木村は秀勝→充揮に、花岡は憲二→献治にそれぞれ名前を改名しており、これに伴い既発曲の作者クレジットも現行のものに変更表記されている。
 フォーライフ時代は憂歌団=ブルースという固定観念から音楽性の幅を広げていった時期にあたり、ボサノヴァの「サンセット理髪店」、8ビートギターロックの「ちっちゃなダイヤモンド」、歌謡色の濃い「大阪ビッグ・リバー・ブルース」(表記はないがアルバム「BLUE'S」バージョン)等、この時点までのフォーライフ時代の総括としてはほぼ満点に近い選曲が光る。ショーボート時代の魅力であったギラギラした粗削りな若さ(特に木村のボーカル)は無くなったが、バンドとして円熟を見せ始めていた時期のまとめとしては優秀な1作で、初心者に薦めるには最適と思う。フォーライフ時代のアルバムは再発はあってもリマスターされたことは一度もなく、本作も音質的にはやや迫力が物足りないので、個人的にリマスター盤の発売を熱望する作品でもある。


UKADAN SINGLES
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 1996年3月21日発売のシングルコレクションベスト。全15曲収録。
 ライブアルバム「UKADAN LIVE'89 〜Big Town Tour〜」と同時発売。既に憂歌団は1993年よりワーナーに移籍しており、謎のタイミングでのベストアルバムリリースとなった。故にレコード会社主導の非公認ベストだと思われる。フォーライフ時代に残したシングルの全A面曲、アルバム未収録のB面曲に加え、ライブの定番曲「君といつまでも(ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー)」の1991年の未発表スタジオテイクを蔵出しボーナス的に収録。各A面曲のシングルバージョン初収録の曲に加え、「わたしの星」がアルバム初収録。この曲は現在でもこのアルバムでしか聴けない。
 前述の「17/18oz.〜」と重複する曲もあるが、「胸が痛い」のオリジナルシングルバージョン、「わかれのうた」のシングルバージョン(どちらもアルバム初収録)が聴けるなど、フォーライフ期のアーカイブとしては意義のある収録内容。下世話なことを言えばこの時期は売れ線狙いのキャッチーなシングル曲多め…というのが正直な感想だが、筆者はさらに自由度を増したワーナー期がリアルタイム憂歌団だったので特に抵抗なく楽しめた。また、チオビタドリンクのCMソングとして木村充揮のソロ名義で1992年にシングルリリースされそのままになっていたレア音源「アイム・ソーリー」もアルバム初収録となっており、付加価値も高い1枚。
 なお、フォーライフ発のベストは後述の2枚組ベストを除けば他に2001年9月発売の「PURE BEST」が存在。前半はスタジオ音源、後半はライブ音源中心とそれぞれ性格が異なるので入門編的には厳しめと思われる。


1993〜1998年:ワーナーミュージック・ジャパン時代

お中元 [ベストセレクション・1993-1996]
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 1996年7月25日発売、ワーナー在籍時では初のベストアルバム。全12曲収録。
 移籍後にリリースされたシングルタイトル全8曲(「風を追いかけて 〜CHASIN' THE WIND〜」はNEW VERSIONでの収録)、出色の名演となったエリック・クラプトンのカバー「TEARS IN HEAVEN」等のアルバム未収録のカップリング曲、未発表曲「大地のうた」を収録するなど、まさにタイトル通りの良いところどりの詰め合わせアルバム。
 ワーナー期は音楽性を更に広げるポピュラリティーの高い作品をリリースする一方で原点回帰的なブルースアルバムを制作するなど、振り幅の激しい時代であったが、シングルに関しては「HAPPY GO LUCKY」「Fuwa Fuwa 〜もう一杯おネエチャン〜」など、コミカルな雰囲気が漂っている曲もあって結構カジュアルに聴ける。そういったこの時代のエッセンスを1枚に凝縮したベストとしてお薦め。
 翌年末には兄弟作的なベスト「お歳暮」もリリースされているが、そちらはアルバム中心のセレクトなので結構敷居が高め。なお、休眠後発売のベストとしては「究極のベスト!」(2005年)、「プレミアム・ベスト」(2009年)がそれぞれリリースされているが、どちらも70年代のショーボート期と90年代のワーナー期の折半ベストなので1枚通しての作風の落差が激しく、あまりお薦めしない。


番外編:オールタイム系

GOLDEN☆BEST 〜Complete Best 1974-1997〜
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 2002年11月20日発売、「初のコンプリート・ベスト盤」と銘打たれたCD2枚組全35曲収録。
 ソニー/東芝EMI/フォーライフによるレコード会社3社(当時)の共同企画「ゴールデン☆ベスト」の1作としてラインナップ…ということで発売元は当然フォーライフ(正確には旧フォーライフの原盤権承継会社であるフォーライフミュージックエンタテイメント)から。とは言え、ショーボート(ART UNIONに名義変更)とワーナーからも音源を借り、憂歌団の全活動期からの選曲が実現しており、現在でも唯一のオールタイムベストとなっている。なおレコードデビューは1975年、休眠は1998年なのだが、タイトルが1974-1997になっているのは、1974年に四人組で活動を開始し、最後の音源リリースが1997年だからと思われる。
 Disc-1の中盤までがショーボート、以降Disc-2の終盤までがフォーライフ、ラストにワーナーという配置。Disc-2になると歌謡色が強くなる時代に突入するので良い分け方になっていると思うが、レーベル内の収録曲の時系列には結構バラつきがある。また特に記載はないがライブアルバムからの収録(「おそうじオバチャン」「10$の恋」等)や、レーベルを移籍してからのライブテイク(「シカゴ バウンド」)や再録バージョン(「夢」)が選ばれている曲もあり若干不親切なのが欠点(まあ収録順を見ればこの位置にこの曲がということは…と推測はある程度できるが)。
 歴代の代表曲はほぼ揃っているのでここから憂歌団に入ってもいいとは思うが、CD2枚組なのが結構重いのと、ワーナー時代が4曲しか選曲されていない(しかもワーナー期を総括した4曲とは言い難い)ので、個人的には本作+「お中元」の組み合わせでオールタイムコンプリートかな、という気がする。
 なお、2010年10月には本作をBlu-spec CD+紙ジャケ仕様に変更し、フォーライフ時代の映像作品「LIVE アナログ」をDVD化して追加した3枚組のベストとして再発。映像込みで欲しいならそちらを。