yuccomillerlink 2024年12月11日発売、サックス奏者ユッコ・ミラーと、ピアノトリオバンドH ZETTRIOによるコラボレーションアルバム。全10曲収録。

 ユッコ・ミラーは2016年にメジャーデビューし、これまでにキングレコードから6枚のオリジナルアルバムを発表(本作は企画盤ながら彼女の公式では7枚目のオリジナル作とカウント)してきた女性サックス奏者。国内外のミュージシャンとの共演を精力的にこなす一方、サックスYouTuberとしてもこんな活動をしていたりと各方面で活躍している模様。次回作のアルバム制作にあたり、本ブログでも何度かご紹介しているH ZETTRIOと共演アルバムを作りたい、というオファーをしたところ快諾され実現したのが本作。なお彼女は彼らの前身的なバンドであるPE'Zの大ファンだったことが発売当時の合同インタビューでも語られています。

 収録曲10曲中、作曲はユッコ・ミラーとH ZETT Mが5曲ずつを手掛け、編曲は全曲H ZETTRIOが担当。ということで、彼女のサックスの音をメインに彼らのバンドが支える…というよりも、サックス、ピアノ、ベース、ドラムスのカルテットとして対等な立場でコラボレーションしているという音像に。ユッコ・ミラーの担当曲は冒頭の「Emotional」からいきなりPE'Zっぽい感じで個人的に盛り上がったりしつつ(?)、ストレートな構成の「絶対絶命」や、スタンダードナンバー的なバラード「Scent of the Day」など、ジャズのカルテットとして王道な楽曲が多いかなと。一方のH ZETT Mの担当曲は演奏やギミック展開など、従来のH ZETTRIOを踏襲している感じの曲が多いのですが、そこに彼女の正確かつパワフルにして流麗なサックスの音が加わると、音の表現がどうしても限られるピアノトリオとは異なる聴きやすさ、メリハリといった化学反応が起きているように感じました。H ZETTRIOはライブで盛り上がることが前提で制作されている(と思う)開放的な曲が多く、本作に関しても概ねそんな印象なのですが、ラストに配置された「日付変更線」では珍しくメロウなバラードナンバーを彼らサイドから用意するなど、彼らにしては余韻のある楽曲が新鮮だったりも。

 最新のユッコ・ミラー単独インタビューでは、世間一般的なジャズ=知識がないと楽しめない難しい音楽という認識に対して、「キャッチーな音楽を作ったり、ジャズを知らなくても入り込める音楽を作ったりしていくのも大事なんだろうなと思っています」と語っていた彼女。そういった意味では1曲1曲の演奏時間が短く(ほとんどの曲が3分台なので全10曲でトータルでも35分に満たない演奏時間)、各楽器のソロ回し等の分かりやすい展開、ファンク、ロック調からバラードまでを適度に散りばめた本作のような作品はジャズという音楽に触れてみるキッカケを作りたいという層にはピッタリかも。先日も大阪と東京のビルボードでこの編成でのライブが行われたそうですが、これで終わらず、また機会があれば第2弾の制作も期待したいところです。