
名刺代わりの代表曲ということでバージョン違いも複数作られたこの「恋しくて」。今回の「CD Review Extra」ではデビュー35周年を記念し、BEGIN名義でCD商品化されている全バージョンを一挙にご紹介いたします。
BEGIN デビュー35周年記念「恋しくて」全CD収録バージョンレビュー
作詞・作曲:BEGIN/編曲は各項に表記
インディーズVer.「恋しくて」
1989年11月発売、正式デビュー前の「イカ天」の番組運営事務所であるバンドストック預かりだった時期にイカ天レーベルよりリリースされた、BEGIN唯一のインディーズアルバム「Beginning」の3曲目に収録。編曲クレジットの表記は無い。
基本的には「イカ天」での演奏バージョンとほぼ同じだが、エレキ、アコギ、ピアノの他にブラシメインのドラムの音も僅かながら聴こえてくる、一応バンド形態でのアレンジ。バラードということもあってなかなかアレンジも弄りにくいこともあるのだとは思うが、この後に発売される全てのバージョンの基幹となるべき部分はほぼ詰め込まれているプロトタイプにして基本形という印象。
なお本作は全6曲収録なのだが、他の5曲は全て洋楽のカバーで構成(歌詞を日本語に翻訳した楽曲もあり)。限定枚数の発売だったので生産終了以降は入手困難になっていた(90年代の後半には普通に中古CD屋で買えたけど)が、デビュー15周年時の2005年5月に「イカ天」の出演映像をCD EXTRAとしてボーナス収録したCDという形でテイチクエンタテインメントより復刻発売。ただ権利の関係なのか、BEGINのサブスクでは未配信となっている。
オリジナルVer.「恋しくて」
テイチク/バイディスレコードより1990年3月21日に発売されたデビューシングル。2003年にはマキシシングル仕様で再発された(本記事トップの画像はそのCDジャケット)。便宜上、このバージョンを「オリジナルバージョン」と呼称する。
編曲は白井良明が担当。オールディーズ風のアレンジにしたいというメンバーの意向で、バンド演奏に流麗なストリングスアレンジが施され、シンプルな演奏だった「Beginning」バージョンとは違いが一目瞭然。その変貌ぶりに上地等(Pf)は「これが自分達の作った曲だろうか」と仰天した、と1998年の自著「さとうきび畑の風に乗って」で述懐しているほど。このインパクトこそがシングル曲として大事な華の部分だったのかもしれない。コード進行的には些細な点ではあるが、Bメロ直前の進行が「Beginning」とは微妙に異なる。
日産自動車の本人出演のCMソングとして年明けからオンエアされ、オリコン4位、20万枚のセールスを記録。デビュー曲にして自己最高セールスの座は揺るがず、「声のおまもりください」「涙そうそう」「島人ぬ宝」と、代表曲が増えた2005年の著書「肝心 BEGIN ON BEGIN」の時点でも「1曲選ぶならこの曲」と比嘉栄昇(Vo&G)が語るほど大事な曲として認識されている。このバージョンでのベストアルバム収録は「CM COMPILATION Twelve Steps」(1996年)、「BALLADS」(1999年)、「BEGIN BEST 1990-2000」(2001年)、「BEGINシングル大全集」(2005/2011/2015年)、「BEGIN ガジュマルベスト」(2019年)、「BEGIN さにしゃんベスト」(2025年)とかなりの枚数に及ぶ。
デビューアルバムVer.「恋しくて」
1990年6月23日発売のデビューアルバム「音楽旅団」の8曲目に収録。表記は無いがアルバムバージョン。編曲クレジットは白井良明のまま。
どちらかと言うと軽快な楽曲が多いアルバムの雰囲気に合わせたのか、ストリングスパートを完全にカット。おそらくボーカルとリズム隊はシングルのままだと思われるが、イントロの印象的な旋律はエレキギターが奏で、他にも要所要所でギターがリフを追加、ピアノも存在感を出してきているバンド色強めのバージョン。ただオリジナルバージョンにも言えることだが、このアルバムはメンバーから「当時の自分達の演奏技術では指示通りに弾けず、スタジオミュージシャンの力も借りて作り上げた」とも語られており、実際ブックレットの参加ミュージシャンの欄にギタリストもピアニストも表記されているので、この曲もメンバー担当楽器を外部ミュージシャンが弾いている可能性がある。オリジナルバージョンと比べると地味さは否めないが、バンド主体での演奏バージョンとしてはこれが完成形か。
リニューアルVer.「恋しくて」
1995年3月25日発売、初のベストアルバム「FAN -LITTLE PIECES-」の1曲目に収録。
BEGINは1992年よりファンハウスへ移籍(1996年まで在籍し翌年テイチクエンタテインメントへ復帰)。移籍後の楽曲からセレクトされた本ベストの中で「リニューアルバージョン」(CD帯より)として新録された。曲中のコード進行はオリジナルバージョンのままで、イントロとアウトロを「Beginning」収録のフレーズに戻すなど、一周回っての原点回帰的な趣がある。編曲はBEGIN名義となり、アコギ、エレキ、ピアノというメンバーのみの音で歌詞の切なさを引き立てるシンプルな音像(全体的にリバーブ深めなのは若干時代性を感じるが)で奏でられるなど、音楽経験値を積み上げる途上の彼らの成長が伺えるバージョン。
セルフカバーVer.「恋しくて(一五一会バージョン)」
2003年7月24日発売、セルフカバーアルバム「ビギンの一五一会」の4曲目に収録。編曲はBEGIN名義。
同年より販売されたBEGINとヤイリギターが共同開発した四弦ギター「一五一会」を全面にフィーチャリングした初のセルフカバーアルバム。これまでの代表曲を再録音して通常のギターとどう異なるのかを聴いてもらおうという趣旨もあったようで、「恋しくて」は当然選曲。従来この曲でリフを弾いたりして目立つエレキの代わりに一五一会をメインに据え、サイドでアコギ、途中からピアノが入ってくるメンバー担当楽器による重ね録りを含む再録なのだが、一五一会の独特の音色こそが他のバージョンと異なる最大の個性か。また、自著「肝心 BEGIN ON BEGIN」では比嘉いわく、セルフカバーということで「(過去の録音当時では出せなかったボーカリストとしての)持てる限りのテクニックを全部こめたつもりだった」と述懐しているように、アウトロの部分でのフェイクはかなり魂を込めて熱く歌っているのである意味必聴。なお、歌ありスタジオテイクとしては本バージョンが最新となる。
デビュー25周年時の2015年3月発売の「ビギンの一五一会」シリーズ全4作のベストアルバム「ビギンの一五一会 傑作選 25周年記念盤」にも選曲され収録。
インストVer.「恋しくて〜午後の森〜雷鳴」
2005年2月23日発売、インストゥルメンタルアルバム「Forest Green」の3曲目に収録。
前年に島袋優プロデュースで発売された「Reef Line」に続くインストアルバム第2弾で編曲はプロデュースを務める上地等の単独名義。CDブックレットには「全曲 一五一会インストゥルメンタル・バージョン」との表記があるが、ピアニストの上地プロデュースということで、ピアノの存在感も大きく迫力のあるアンサンブルが聴ける。「恋しくて」は沖縄で録音された森林や鳥、虫の音と共に奏でられる、キーを下げ、リフレイン部分を減らした原曲より若干短めのバージョン(フェードアウトで終わる)で、本来の間奏部分はピアノソロで始まるなど異色。なお続くタイトルの「午後の森」「雷鳴」はタイトル通りの自然環境音となっており、「雷鳴」からそのまま次の曲(「風よ」)に繋がっている。BEGIN名義のアルバムだがインストということもあり課外活動的な作品。
三人ライブVer.「恋しくて(2007.12.12 大阪・梅田芸術劇場 メインホール)」
2008年3月26日発売、初のライブベストアルバム「BEGINライブ大全集」DISC-1の4曲目に収録。
当時の最新ツアー「BEGINアコースティックコンサート2007 〜らいぶ いず 往来〜」大阪追加公演からの音源。編曲クレジットは無いが、リニューアルバージョンでのテイクに限りなく近いメンバー三人のみでの生演奏ライブテイク。イカ天生演奏→「Beginning」→「FAN -LITTLE PIECES-」の系譜の更なる先に完全に行きついた感のある、これ以上変えようのない盤石の最終進化形(?)バージョン。なお、別日ではあるが、このツアーの東京公演は同年2月に先行してDVD化されている。
シンフォニックライブVer.
「恋しくて(2017.10.7 京都コンサートホール "BEGIN×京都市交響楽団 島人シンフォニー")」
2019年11月20日発売、ライブベストアルバム第2弾「BEGINライブ大全集2」DISC-2の17曲目(最終曲)に収録。
2017年10月7・8日の2daysで行われた、山下一史指揮による京都市交響楽団とのコラボレーションライブからの音源。翌年4月にDVD&Blu-rayで8日の公演が映像商品化されているが、本作に収録されたのは7日の公演音源。基本的にオリジナルバージョンでの白井良明のストリングススコアに加えて吹奏楽器などもプラスしたシンフォニックなバージョン(編曲表記は無し)。「恋しくて」史上最厚(?)のゴージャスな音像と化しているが、島袋のエレキ、上地のピアノもしっかりと埋もれずに鳴り響いており、比嘉のボーカルと合わせてオーケストラと対等に融合している。BEGINがフルオケやストリングスカルテット等と共演する機会は滅多にないので、普段は披露できないオリジナルバージョンに接近したこのバージョンはかなり貴重なライブ音源と呼べるかも。
作詞・作曲:BEGIN/編曲は各項に表記
インディーズVer.「恋しくて」

基本的には「イカ天」での演奏バージョンとほぼ同じだが、エレキ、アコギ、ピアノの他にブラシメインのドラムの音も僅かながら聴こえてくる、一応バンド形態でのアレンジ。バラードということもあってなかなかアレンジも弄りにくいこともあるのだとは思うが、この後に発売される全てのバージョンの基幹となるべき部分はほぼ詰め込まれているプロトタイプにして基本形という印象。
なお本作は全6曲収録なのだが、他の5曲は全て洋楽のカバーで構成(歌詞を日本語に翻訳した楽曲もあり)。限定枚数の発売だったので生産終了以降は入手困難になっていた
オリジナルVer.「恋しくて」

編曲は白井良明が担当。オールディーズ風のアレンジにしたいというメンバーの意向で、バンド演奏に流麗なストリングスアレンジが施され、シンプルな演奏だった「Beginning」バージョンとは違いが一目瞭然。その変貌ぶりに上地等(Pf)は「これが自分達の作った曲だろうか」と仰天した、と1998年の自著「さとうきび畑の風に乗って」で述懐しているほど。このインパクトこそがシングル曲として大事な華の部分だったのかもしれない。コード進行的には些細な点ではあるが、Bメロ直前の進行が「Beginning」とは微妙に異なる。
日産自動車の本人出演のCMソングとして年明けからオンエアされ、オリコン4位、20万枚のセールスを記録。デビュー曲にして自己最高セールスの座は揺るがず、「声のおまもりください」「涙そうそう」「島人ぬ宝」と、代表曲が増えた2005年の著書「肝心 BEGIN ON BEGIN」の時点でも「1曲選ぶならこの曲」と比嘉栄昇(Vo&G)が語るほど大事な曲として認識されている。このバージョンでのベストアルバム収録は「CM COMPILATION Twelve Steps」(1996年)、「BALLADS」(1999年)、「BEGIN BEST 1990-2000」(2001年)、「BEGINシングル大全集」(2005/2011/2015年)、「BEGIN ガジュマルベスト」(2019年)、「BEGIN さにしゃんベスト」(2025年)とかなりの枚数に及ぶ。
デビューアルバムVer.「恋しくて」

どちらかと言うと軽快な楽曲が多いアルバムの雰囲気に合わせたのか、ストリングスパートを完全にカット。おそらくボーカルとリズム隊はシングルのままだと思われるが、イントロの印象的な旋律はエレキギターが奏で、他にも要所要所でギターがリフを追加、ピアノも存在感を出してきているバンド色強めのバージョン。ただオリジナルバージョンにも言えることだが、このアルバムはメンバーから「当時の自分達の演奏技術では指示通りに弾けず、スタジオミュージシャンの力も借りて作り上げた」とも語られており、実際ブックレットの参加ミュージシャンの欄にギタリストもピアニストも表記されているので、この曲もメンバー担当楽器を外部ミュージシャンが弾いている可能性がある。オリジナルバージョンと比べると地味さは否めないが、バンド主体での演奏バージョンとしてはこれが完成形か。
リニューアルVer.「恋しくて」

BEGINは1992年よりファンハウスへ移籍(1996年まで在籍し翌年テイチクエンタテインメントへ復帰)。移籍後の楽曲からセレクトされた本ベストの中で「リニューアルバージョン」(CD帯より)として新録された。曲中のコード進行はオリジナルバージョンのままで、イントロとアウトロを「Beginning」収録のフレーズに戻すなど、一周回っての原点回帰的な趣がある。編曲はBEGIN名義となり、アコギ、エレキ、ピアノというメンバーのみの音で歌詞の切なさを引き立てるシンプルな音像(全体的にリバーブ深めなのは若干時代性を感じるが)で奏でられるなど、音楽経験値を積み上げる途上の彼らの成長が伺えるバージョン。
セルフカバーVer.「恋しくて(一五一会バージョン)」

同年より販売されたBEGINとヤイリギターが共同開発した四弦ギター「一五一会」を全面にフィーチャリングした初のセルフカバーアルバム。これまでの代表曲を再録音して通常のギターとどう異なるのかを聴いてもらおうという趣旨もあったようで、「恋しくて」は当然選曲。従来この曲でリフを弾いたりして目立つエレキの代わりに一五一会をメインに据え、サイドでアコギ、途中からピアノが入ってくるメンバー担当楽器による重ね録りを含む再録なのだが、一五一会の独特の音色こそが他のバージョンと異なる最大の個性か。また、自著「肝心 BEGIN ON BEGIN」では比嘉いわく、セルフカバーということで「(過去の録音当時では出せなかったボーカリストとしての)持てる限りのテクニックを全部こめたつもりだった」と述懐しているように、アウトロの部分でのフェイクはかなり魂を込めて熱く歌っているのである意味必聴。なお、歌ありスタジオテイクとしては本バージョンが最新となる。
デビュー25周年時の2015年3月発売の「ビギンの一五一会」シリーズ全4作のベストアルバム「ビギンの一五一会 傑作選 25周年記念盤」にも選曲され収録。
インストVer.「恋しくて〜午後の森〜雷鳴」

前年に島袋優プロデュースで発売された「Reef Line」に続くインストアルバム第2弾で編曲はプロデュースを務める上地等の単独名義。CDブックレットには「全曲 一五一会インストゥルメンタル・バージョン」との表記があるが、ピアニストの上地プロデュースということで、ピアノの存在感も大きく迫力のあるアンサンブルが聴ける。「恋しくて」は沖縄で録音された森林や鳥、虫の音と共に奏でられる、キーを下げ、リフレイン部分を減らした原曲より若干短めのバージョン(フェードアウトで終わる)で、本来の間奏部分はピアノソロで始まるなど異色。なお続くタイトルの「午後の森」「雷鳴」はタイトル通りの自然環境音となっており、「雷鳴」からそのまま次の曲(「風よ」)に繋がっている。BEGIN名義のアルバムだがインストということもあり課外活動的な作品。
三人ライブVer.「恋しくて(2007.12.12 大阪・梅田芸術劇場 メインホール)」

当時の最新ツアー「BEGINアコースティックコンサート2007 〜らいぶ いず 往来〜」大阪追加公演からの音源。編曲クレジットは無いが、リニューアルバージョンでのテイクに限りなく近いメンバー三人のみでの生演奏ライブテイク。イカ天生演奏→「Beginning」→「FAN -LITTLE PIECES-」の系譜の更なる先に完全に行きついた感のある、これ以上変えようのない盤石の最終進化形(?)バージョン。なお、別日ではあるが、このツアーの東京公演は同年2月に先行してDVD化されている。
シンフォニックライブVer.
「恋しくて(2017.10.7 京都コンサートホール "BEGIN×京都市交響楽団 島人シンフォニー")」

2017年10月7・8日の2daysで行われた、山下一史指揮による京都市交響楽団とのコラボレーションライブからの音源。翌年4月にDVD&Blu-rayで8日の公演が映像商品化されているが、本作に収録されたのは7日の公演音源。基本的にオリジナルバージョンでの白井良明のストリングススコアに加えて吹奏楽器などもプラスしたシンフォニックなバージョン(編曲表記は無し)。「恋しくて」史上最厚(?)のゴージャスな音像と化しているが、島袋のエレキ、上地のピアノもしっかりと埋もれずに鳴り響いており、比嘉のボーカルと合わせてオーケストラと対等に融合している。BEGINがフルオケやストリングスカルテット等と共演する機会は滅多にないので、普段は披露できないオリジナルバージョンに接近したこのバージョンはかなり貴重なライブ音源と呼べるかも。
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