tmcarryon 2025年2月26日発売、TM NETWORKの通算43枚目となる全3曲入りのフィジカルシングル。なお同内容でのアナログレコードも3月26日発売予定。

 本作収録の3曲は、2022年から2年4シリーズ・全40公演での開催となった全国ツアー「FANKS intelligence Days」の各公演の中で小室哲哉と木根尚登のツインボーカルで披露された、小室作詞作曲による未発表曲三部作。どの曲も各ライブBlu-rayの初回限定盤にてライブテイクがCD化されて収められていたもののスタジオ録音バージョンは未公表のままだったのですが、2025年2月28日に全国公開されたTM初のドキュメントムービー「Carry on the Memories -3つの個性と一つの想い-」の主題歌として表題曲が起用され、改めてスタジオレコーディングが実現。ライブでの披露とは異なり、宇都宮隆をメインボーカルとして録音されています。なお、本作はSONYからではなく、再起動以降の映像作品の販売を担ってきた宇都宮の個人事務所であるM-TRESからのリリース。TM名義でのスタジオ音源をM-TRESでリリースするのは通常の形では今回が初のはずです。

 表題曲「Carry on the Memories」は2024年4〜5月にかけてのアリーナツアー「YONMARU」にて披露された、本作中では最も新しい楽曲。学生時代に音に囲まれて過ごしてきた、今は楽器を置いた仲間達や、自分達の歌を喜んでくれる「君」への思いを胸に、これからも月日を積み重ねていこう…という、公私を問わずにTMを取り巻く人々への決意を綴った楽曲で、レコーディングではコンダクターである藤原いくろうがオーケストラアレンジを担当し、生のオーケストラとアコギ、そして打ち込みが融合した音像に。小室曲ながら作風的には歌詞も含めて木根のソロに近いフォーク調というTMとしては珍しい体温を感じさせるタイプの作品に仕上がっています。なお発売2日後(映画公開初日)には公式チャンネルでフルサイズのMVも公開。

 カップリングの「Good Morning Mr.Roadie」は2024年1〜3月開催の地方中心ツアー「STAND 3 FINAL」にて披露。タイトル通り、彼らの活動をサポートしてくれるローディー(いわゆる裏方)への感謝を込めた、ピアノとアコギが演奏をリードする3連系の楽曲で「歌詞」というよりも「詩」という雰囲気が異色。あくまでメインボーカルは宇都宮ですが、要所で小室や木根もリードを取る実質トリプルボーカル曲。そして「Show My Music Beat」は2023年9〜11月開催の実質レコ発ツアー「DEVOTION」にて披露。2020年からのコロナ禍による喧騒が消えた夏を舞台に、また音を鳴らしたい、必ず戻ってくるよ、という四つ打ちメインのシリアスなメッセージソング。アレンジ的には3曲中では従来のTM像に近い曲と言えると思いますが、ドキュメントタッチな歌詞はこちらも異色といえば異色。

 3曲共に、TMのパブリックイメージとは毛色の違う歌詞でありサウンドであり、元々ライブ用に制作された曲ということもあってなのか、この曲でTM健在を知らしめてやろう…みたいな野心とはおそらく無縁な、どちらかと言うとTMファン=FANKS(身内)へ向けたの三人からのメッセージ、といった印象。メジャーレーベルでのリリースではなく配信も(今のところ)なくフィジカルのみ、という販売形態も納得と言うべきでしょうか(※追記:アリーナツアー最終日の4月9日にサブスク配信が解禁になりました)。言い換えれば彼らの活動を追い続けてきたFANKSにとっては40周年終了後の嬉しいプレゼントとして受け取れると思います。かくいう筆者もその一人。そろそろ映画の公開も終わってしまうようなので、何とか観に行きたいものです(他の予定で先延ばししているうちに今日に至ってしまった…)