deenrockon 2025年1月22日発売、通算22枚目となるDEENのオリジナルアルバム。CDのみの通常盤、CD+ライブCDと同内容のBlu-rayを同梱した初回生産限定盤、CD+前作のMVを収録したBlu-rayが付属のファンクラブ限定盤の3形態のフィジカルリリースに加え、配信リリースも同日より解禁。本編の全10曲は全形態共通、ボーナストラックとしてそれぞれ異なるライブ音源が1曲ずつ収録。本レビューは初回生産限定盤となります。

 2021年のカバーアルバムより始まったシティポップ路線を昨年発売のオリジナルアルバムで完結と明言。次なる一手に関しては、全曲解説書籍内の30周年インタビューにて「(将来的には)ライブで盛り上がるロックなアルバムを作るのもありかな…」(要約)という池森秀一の発言がありましたが、本作のキャッチコピーは「デビュー30周年を超えて更に進化したDEEN’s ROCKが炸裂する全曲完全オリジナル作品で、DEEN史上最高にHOTな傑作“KING OF ROCK & POP ALBUM”」と謳われており早くも実現。なお、リリースまで一週間を切ってから順次ショートバージョンのMVが公式で解禁されたものの、先行配信の類は一切なしという、従来は段階を追ってプロモーションをする彼らにしては異例の形で発売日を迎えることになりました。

 DEEN's ROCKをキャッチコピーにしたアルバムは2006年の「Diamonds」以来。とは言え、その後も「Graduation」「全開恋心!! 〜Missing You〜」等、特にコンセプトとしては謳っていないものの、ライブで威力を発揮しそうなロック色を含んだ作品は数年おきに制作されており、本作はここ数年のシティポップ路線から従来へと軸足を戻した流れのアルバムと呼んでいいかも。現在のサポートメンバーが全曲参加したロックバンド然としたサウンドは予想通りである一方で、タイトルに海外の著名アーティストのバンド名を捩ったり、歌詞の中にもそのアーティストの曲名を入れ込んだり…といった、公式いわく「遊び心が溢れる」ユニークな点が旧作との最も顕著な差別化といった印象。唯一フルサイズでMVが制作された疾走感のある「EXTREME JOURNEY」、カラっとした明るさがアメリカンロック的な「CLASH 〜心の衝突〜」、DEEN必殺の泣きの三連ロッカバラード「ROSES」辺りが個人的三強といったところでしょうか。他にもインパクトのあるリフを持った「EAGLES STRIKE」、三管のホーンが織りなすブラスロック「YOU ARE MY OASIS」など、盛り上がりやすいサビなど良い意味で分かりやすく、適度なジャンルの幅でライブ会場を沸かせるロック=DEEN's ROCKの真骨頂(だと思う)という徹底したコンセプトで楽しく聴ける作品になっていると思います。
 なお、本作では山根公路ソロパートとして上海ロックスターが10年振りの新曲で復活。しかしタイトルは「DEEP IN MY SOUL 〜上海ロックスター LAST EPISODE〜」ということで、シャン様がついに天に召される瞬間を描いた衝撃作。ロックスターシリーズは作品を重ねる毎にディスコとかフォークとか結構脱線しながらフェードアウト…という感じだったので、ここでまたしっかりロック魂を見せて完結(?)というのは良かったのか…このキャラを終わらせるのはちょっと勿体ない気もしますが…(笑)。

 特典Blu-rayとライブCDは、昨年8〜9月にかけて東京・神奈川・横浜のビルボードで開催された「DEEN AOR NIGHT CRUISIN’ 〜6th Groove〜」より、9月1日のBillboard Live TOKYOでの2ndステージ(一日2公演でセットリストはステージ毎に異なる)を全曲収録。元々DEENのビルボードライブは2002〜2004年のAOR期の楽曲を中心に、LIVE JOYなどで演奏する代表曲は基本的に演奏せず、後にシリーズ化したマニアックナイトほどではありませんがコアなファン向けといった趣向で始まったシリーズでしたが、第6弾の今回はアレンジ違いとはいえ「このまま君だけを奪い去りたい」「瞳そらさないで」などの代表曲も演奏したり、AOR期以外の楽曲も積極的に披露するなど、通常のライブとの明確な差が薄くなり、だいぶ間口を広げたセットリストで、新規のファンにも違和感なく受け入れられそうな感じではあるかと(チケット代の高さを除けば)。夏のライブということで「ひまわり」の演奏が結構レアでしょうか。ライブの演奏も特にCDで聴くと分かりますが池森のボーカルの調子も含めて安定した上々の出来だと思います。

 ちなみに本編CDにボーナストラックとして1曲ずつ収められたライブ音源(計4種類)はビルボードでの別ステージからのもの(東京2daysのどちらかだと思いますが日付までは不明)で、この別ステージもいずれは映像作品として後出しするのではないか…と推測していますが如何に。どうせなら両ステージ収録してくれれば税込で定価9,900円という5ケタ突入寸前の価格に見合った内容になったとは思うのですが…。この価格高騰だけが唯一の残念ポイントでした。