
「大人のためのアニソンカバーアルバム」というコンセプトで、前年5月にリリースされた森口博子の新プロジェクトの続編となる本作。前作同様BS11でオンエアされている森口がメインMCを務める音楽番組「Anison Days」にて披露された楽曲から、本人による選曲を中心にしつつ、ファンからの意見を参考にしたり、まだ番組未披露の楽曲も収録したとのこと。今回も「GUNDAM SONG COVERS」シリーズに引き続いてトータルプロデュースは時乗浩一郎が担当。時乗は7曲の編曲も単独名義で担当するなど、前作以上にディレクションに深く関わっている模様。また、著名なミュージシャンがフィーチャリング的に参加することも多い一連のシリーズですが、本作もギタリストの鳥山雄司、ドラマーの神保彰、ももいろクローバーZの百田夏菜子、TM NETWORKの木根尚登など、複数のゲストを招いてのコラボレーションが展開されています。
カバーの方向性としてはバンドスタイルだったり、小編成でのアコースティックスタイルだったりと若干の幅を持たせつつ、生演奏主体による整えられた丁寧な演奏が楽しめるという点では、シリーズの共通項を感じさせるものになっていてこれは予想通り。ボーカリストの森口としては「微笑みの爆弾」「YOU GET TO BURNING」「ブルーウォーター」と、原曲のシンガーがパンチの効いたボーカルを見せていた楽曲ではそれに寄せた形で、一転して「ゆめいっぱい」ではアコギとチェロによる穏やかなボサノヴァアレンジに合わせた優しい歌声で、と曲によって変わる森口の表現力もこれまでの経験値を活かしているという感じ。また、今回原曲が唯一森口本人のボーカルによる「BE FREE」(「鎧伝サムライトルーパー」エンディングテーマ)では、元気な雰囲気のオリジナルからアイリッシュ調に大胆にリアレンジされ、それに伴って森口の歌唱も包容力のあるスタイルへと大幅に変更。セルフカバーなので結構変えてくるかと予想していましたが、この曲がここまで変わるとは…と良い意味で驚かされました。
今回も選曲は80〜90年代に発表されたアニソンが中心と謳われており、一番古い作品は「みゆき」のエンディングテーマ「想い出がいっぱい」で1983年と、前作とほぼ変わらない時代からのスタートですが、むしろ本作のメインは90年代の作品中心で、一番新しい作品となると「AIR」のオープニングテーマ「鳥の詩」の2005年と、選曲は00年代まで踏み込んだ形に。他にも「おジャ魔女どれみ」(1999年〜)のオープニングテーマ「おジャ魔女カーニバル!!」など、さすがに80年代中盤〜90年代中盤ぐらいまでアニメに触れていた筆者の世代には守備範囲外の楽曲が前作より増えていて、筆者の下の世代までターゲットを広げてきたな、という印象。既に第3弾も考えているとの発言も配信解禁時のインタビューで飛び出していますし、さらに時代を下った21世紀の作品中心のアニソンカバーアルバムが近々実現する可能性も無きにしもあらずでしょうか。次回作も楽しみに待ちたいと思います。
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