odajikobest 去る2024年11月27日に、ベストアルバム「自己ベスト-3」をリリースした小田和正。筆者にとっての小田和正は、オフコース時代はリアルタイムでは知らず、ソロになってからもベストアルバムが出れば毎回レンタルして聴くけど…という程度のライトリスナーとして今日に至っているわけですが、この度2002年の「自己ベスト」、2007年の「自己ベスト-2」最新リマスターを施したデジパック仕様「自己ベスト-3」と共に紙製ボックスに収めた初回生産限定盤も同時発売ということで、良い機会なので思い切って購入。それを記念(?)し、今年最後のレビューは「CD Review Extra」として「自己ベスト」歴代シリーズ全3作を1枚ずつレビューいたします。

小田和正「自己ベスト」シリーズ 全3作レビュー


自己ベスト
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 2002年4月24日発売。「Oh! Yeah!」(1991年)、「伝えたいことがあるんだ」(1997年)に続くソロでは通算3作目のベストアルバム。全15曲収録。初回限定盤はデジパック仕様、通常盤はプラケース仕様。また、冬になると通常盤にスリーブケースを被せたウィンター・パッケージでも何度か限定販売がされている。
 これまでのベストはあくまでソロ活動開始以降に発表されたオリジナル曲からのセレクションだったのに対し、本作は「オフコース時代の作品も網羅した小田和正究極のベストアルバム!!」(帯より)というキャッチコピー通り、オフコース時代も含めたオールタイムでの選曲となっている。ただし、オフコース時代の曲はセルフカバーアルバム「LOOKING BACK」シリーズやシングルのカップリングで発表してきた小田和正名義でのカバーバージョンが収録されており、オリジナル音源と結構印象の異なる曲もある。
 冒頭に最新ヒットシングル「キラキラ」を配置し、以降は基本的には楽曲発表順(オフコース6曲→ソロ8曲)の時系列順に収録。オフコース時代からは「秋の気配」「愛を止めないで」「さよなら」「言葉にできない」と、代表曲を厳選。ソロになってからも最大ヒットの「ラブ・ストーリーは突然に」、ドラマの主題歌としてヒットした「伝えたいことがあるんだ」、JRAのCMでサビが大量オンエアされて知名度の高い「woh woh」等、ソロでもこの時点で既に15年近くのキャリアがある彼の楽曲なだけに、かなり絞った結果の収録曲になっていると思う。90年代のミドルヒットが外されたのは残念だったが、オールタイムを1枚でという条件なら致し方ないところか。
 前述の通り、オフコースの曲はセルフカバーになっているため、リアルタイムでこれらの曲に触れた層には評判があまり良くないようだが、筆者のようなリアルタイムを知らない後追い層にはあまりにアレンジが変わった曲以外は割と抵抗なく聴けると思う一方、むしろソロ以降の曲の収録バージョンが原曲と異なる曲がある点が気になったりする(思い出補正だと思うので嫌というほどではないが)。どの時代から小田和正を知ったかによって評価が割れるベストなのかもしれない。とはいえ、オフコース・ソロ共に代表曲中の代表曲が揃っているため、小田和正の歴史を1枚で知りたい、というニーズには未だに応えられる1作だと思う。
 なお本作は初動も高く、ミリオンセラーを突破した後もロングスパンで売れ続け、トータル270万枚近くというビッグセールスを記録。そのためか、ウィンター・パッケージも含めて何度もプレスがされていたようで、BMGファンハウス盤、BMG吸収後のアリオラジャパン盤、海外盤(シンガポールプレスを先日確認)等、中古市場では様々な時期の商品が出回っているようである。中身が確認できる中古CDショップなどでチェックしてみるのも一興(?)。


自己ベスト-2
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 2007年11月28日発売。「自己ベスト」の続編。全15曲収録。初回限定盤はデジパック、通常盤はプラケースという仕様も前作同様。また期間限定のウィンター・パッケージも何回か発売されている。
 直近のヒットシングル「こころ」を冒頭に配置し、以降はオフコース(のセルフカバー)から時系列順にソロに流れていく…という点は前作を完全に踏襲。前作以降のシングルタイトル曲4曲は全て収録されており、前作よりも約5年収録対象範囲は多い…とはいうものの、代表曲満載の超王道ベストだった前作で選ばれなかった曲を選曲している構成上、セカンドベスト的な雰囲気は否めず、特に前半のオフコースのセルフカバー群は地味だな…と思ってしまうのだが、「恋は大騒ぎ」「いつか どこかで」「そのままの 君が好き」といったリアルタイムで聴いていたが前作で漏れてしまったミドルヒット曲が続々出てくる中盤は個人的に聴いていて盛り上がる(あとは「真夏の恋」が入っていれば…)
 後半の近年(当時)の楽曲も穏やかながらも力強さを感じさせる佳曲が揃っているので、ベストならではの華やかさはあまり感じられないものの、「自己ベスト」の次に聴く1作としては最適の内容だと思う。なお、今回全3作収納ボックスに収録された「自己ベスト」「自己ベスト-2」の2024年の阿部充泰によるリマスター音源自体は「自己ベスト-3」発売と同時に配信でもドロップされており、ボックスを購入せずとも聴くことは可能。


自己ベスト-3
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 2024年11月27日発売、「自己ベスト」シリーズ第3弾。全16曲収録。今回は通常盤のプラケース仕様のみ単独販売。デジパック仕様のものは初回生産限定盤として、「自己ベスト」「自己ベスト-2」のリマスターパッケージとセットになったボックスのみでの販売となっている。
 2016年のオールタイム3枚組ベスト「あの日 あの時」を挟み、約17年振りの「自己ベスト」シリーズの復活作。前2作同様、最新曲「すべて去りがたき日々」(配信シングル)から始まり、オフコースのセルフカバー(今回は2曲のみ)を経てソロへ、という流れは通底しているが、「あの日〜」で収録された作品は極力避けての選曲となっている。
 三度目の曲被り無しのオールタイム選曲。2021年からスタートした配信限定シングルは全て収録され、直近の「what's your message?」「その先にあるもの」「すべて去りがたき日々」が初フィジカル化を果たした。過去のシリーズや「あの日〜」でも漏れた楽曲をドラマやCMのタイアップ曲中心に選曲しているものの、さすがにここまで条件を絞ると目立った看板曲は皆無に近い。どの曲も単品で聴くには良いのだが、まとめて聴くと同じような印象で明確な作風の区別がつきにくくなってしまっていると思うのが正直なところ。それだけ安定した楽曲をリリースし続けているということでもあるのだが、前2作と比べると全体的におとなしめのセレクションだと思う。
 また、「あの日〜」との被りを極力避けた結果、2008年以降2016年までの代表曲が抜け落ちてしまっているので、「自己ベスト」シリーズをすべて揃えたところで小田和正の代表曲コンプリートとはいかないのが残念なところ。代表曲コンプリートを目指すならば「あの日 あの時」+本作という組み合わせをお薦めする。