
毎年全国ツアーやビルボードライブを定期的に開催しているBEGINですが、スタジオ録音のニューアルバムとしては2018年12月発売の前作以来、約5年10ヶ月振りのリリース。と言っても待望のオリジナルアルバム…というわけではなく、彼らが2010年代より取り組んでいるブラジル発祥の音楽「マルシャ」と、日本の夏の定番である「盆踊り」を掛け合わせた「マルシャ×盆踊り=盆マルシャ」をコンセプトにした、持ち歌の新アレンジとカバー曲で構成された企画作品。8月頭の発売告知早々に「東京音頭」「炭坑節」、お盆真っ只中の8月14日はオリジナルの新曲「渋谷百年総踊り」がそれぞれ配信され、これらの曲を収めたアルバムが本作。なお「渋谷百年〜」は初回限定盤DVDに踊り方の動画が収録されているそうです。
冒頭を飾る「渋谷百年総踊り」はまさにザ・盆踊りといった本作唯一の新曲。沖縄から上京してきた彼らですが、25年ぐらい前から渋谷のロック喫茶「B.Y.G」に定期的に出演するようになり、今や渋谷(というか東京?)を第二の故郷と思っているようで、そんな愛する渋谷への今後の繁栄の願いが込められた、お囃子もありの明るい音頭。続く「盆・島人ぬ宝」「盆・笑顔のまんま」は彼らの代表曲を盆マルシャバージョンでカバー。両曲共に元々マルシャのリズムでカバーした前歴があり、今回はこれに更に和楽器演奏が取り入れられるなど、盆踊り要素が盛り込まれて賑やかにバージョンアップした、といった趣。
4曲目から8曲目までは昭和の楽曲のカバーメドレーとなるのですが、中でも美空ひばりのカバー「お祭りマンボ」は、純和風の原曲にマルシャの本場・ブラジルのサンバ的な要素が無理なく溶け合い自然と乗れるアレンジに。また小林旭の「自動車ショー歌」は初めて聴きましたが、ユニークな内容の歌詞に、ブラスをふんだんに用いたアップテンポでカーニバルのような過剰とも思える賑やかさが聴いていてとても楽しい内容。実質ラストの「涙そうそう」はお馴染みのバラードですが、これを盆踊りでやるのは…という驚きはありつつ(亡き人を想う歌だからむしろお盆に踊るという意味では合致?)、メドレーでの火照った空気をクールダウンしてくれる整理体操のようなアレンジかと。そして10曲目は「渋谷百年〜」のカラオケ(歌やお囃子抜きのインスト)で締めています。アルバムトータル約30分超と短めですが、同一パターンのアレンジの曲が多いので、これぐらいの演奏分数がちょうど聴き疲れない長さなのかも。
というわけで聴いて楽しい作品ではありますが、リリース時期が祭りの季節も一段落の10月頭に設定されたのは謎(まあ10月過ぎても「夏祭り」を開催する地方もあるようですが…)。メンバーは発売動画で「来年の夏祭りまでに覚えて踊ってください」みたいなことをコメントしていたので、来年を見越した発売だったのかもしれませんが、それだと今度はちょっと早過ぎ…という気も。結構微妙なタイミングでの発売だったので、本番の来年の夏までに埋もれてしまわないかちょっと心配です(余計なお世話か?)。
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