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KAN 全オリジナルアルバムレビュー 1996-2001
MAN
1996年5月27日発売、10thアルバム。全10曲収録。
本作と同時発売のシングル「MAN」をアルバムタイトルにしたマーキュリー期唯一のオリジナルアルバム。発売3ヶ月後に収録曲である「涙の夕焼け」がシングルカットされた。
ポリドール末期の作品に見られた作詞家としての表現描写が冴える「Autumn Song」「指輪」といったピアノメインの定番楽曲に加え、本人の学生時代のバイト経験を基にして楽曲制作され、ロスアンゼルスで初の海外レコーディングを行った「DISCO 80's」、外国人シンガー達による日本語コーラスの響きが異色のソウルバラード「Mr.Moonlight」、以降の彼の作品世界を予告するかのようなコミカルでユニークな描写が(当時は)衝撃的だった「夏は二の腕発情期」「ひざまくら 〜うれしい こりゃいい やわらかい〜」という脱力気味のナンバーがひしめく、バラエティに富んだ一作。
気弱で優しくナイーブな…という従来のパブリックなKAN像から徐々に脱却し、本人が描きたいテーマを模索している感のある、完全に一皮むける前の変革前夜的なアルバムといったところ。なお、マーキュリーは数年後にユニバーサルの傘下となり名称消滅、さらにユニバーサルはポリドールも吸収しており、デビューからここまでの時代のKANの楽曲のライセンスは現在ユニバーサルが所持している模様。
TIGERSONGWRITER
1998年3月5日発売、11thアルバム。全9曲収録。
前年にシングルベスト「The Best Singles FIRST DECADE」をリリース後にワーナーに移籍。「The Best Singles〜」の先行シングルだった「Songwriter」およびカップリングの「君を待つ」もレーベルを越えて収録された。タイトルは当時のインタビューによると発売時の干支から取られたもので特に深い意味はない、らしい(笑)。
再度の移籍を経てそのユニークさには更に磨きがかかり、「ドラ・ドラ・ドライブ大作戦」「サンクト・ペテルブルグ 〜ダジャレ男の悲しきひとり旅〜」と、タイトルからして独自性溢れる先行の2枚のシングル、世界規模のシリアスな歌詞の「SAIGON」、「Song of Love 〜君こそ我が行くべき人生〜(英語版)」(※日本語版は存在せず)といった壮大なバラード、小品的な「長ぐつ」、哀しみの淵に沈む「月海」、極めつけは同じマンションに越してきた子持ちの人妻への恋慕を綴り(笑)、ギターとコーラスで当時活動休止中だったMr.Childrenの桜井和寿が参加している(MASATO KINUGASA名義)「Oxanne 〜愛しのオクサーヌ〜」と、もはや何でもあり、KANの最大の個性であるフリーダムさが大いに発揮されたアルバムではあると思われ、そういう意味では最もKANのパーソナルを顕した作品とも呼べるかも。
余談であるが、ワーナー期のアルバムは比較的早い段階で廃盤になり、00年代前半にはミスチルの桜井が参加しているということも手伝って中古市場では定価以上の値段が付けられ、本作は若干レア盤と化していたのだが、2010年のオリジナルアルバム一斉リマスター「THE RESTORATION SERIES」で廉価再発され、以降中古市場価格は落ち着いた。
KREMLINMAN
1999年4月21日発売、12thアルバム。全9曲収録。
「ロック試練の恋」「Rock'n Soul in Yellow」「WHITE LINE 〜指定場所一時不停止〜」という(KANにしては)ロック色の強い楽曲を要所に配置し、合間に従来のポップス調のシングル「英語でゴメン」「Happy Time Happy Song」を挟んでバランスを取っている構成。KAN本人はロックアルバムと本作を評しているようだが、聴感としてはロックとポップスを上手く折衷して1枚にまとめたアルバム、という印象。前作ほど音楽性がバラバラではないのである程度の統一感はあるが、実話ベース故に共感の難しそうな長尺の曲もあったりと、通して聴くにはちょっと体力がいるかもしれない(笑)。
収録曲「車は走る」は、後輩ミュージシャンである槇原敬之の楽曲を研究・分析して詞曲の展開や使用音色、歌い方も模倣したパロディソング。この後も様々なアーティストの作品を研究し続ける彼の独自成果物第一作といったところ。なお、この年にKANは結婚。後にピアノ弾き語りで再録音・ライブ音源としてもリリースされた愛妻に向けたと思われるバラード「50年後も」のオリジナルバージョン(バンド形式)は本作が初出。「THE RESTORATION SERIES」の対象範囲は本作まで。
Gleam & Squeeze
2001年9月26日発売、13thアルバム。全10曲収録。
2000年よりBMGファンハウスに移籍(現在は名称変更を経て吸収先のソニーがライセンスを所持)。年内発売予定が年明けに延期になった「CLOSE TO ME」、アルバム同発の「Superfaker」の2枚のシングルに加え、1999年末発売のワーナー在籍時の最終シングル「今年もこうして二人でクリスマスを祝う」もレーベルを跨いで収録された。なお松本晃彦との久々の共編曲である「今年も〜」以外の楽曲は全てKANが単独で編曲を手掛けており、90年代にほぼ全ての楽曲でタッグを組んでいた小林信吾は本作には不参加。
冒頭の「東京熱帯SQUEEZE」では全編ラップに挑み、「猿と犬のサルサ」ではボーカル以外は全て打ち込みのデジタルサルサを作り上げるなど野心的なナンバーを披露しつつ、基本的には生楽器を活かしながら打ち込みも使用した上でのポップなバンドサウンドという原点回帰的な楽曲が多い。ただ歌詞の内容はどの曲もだいたい切羽詰まっているというか、「カラス」のように逃避願望を歌にしたような曲や、もはや歌詞というよりも愚痴(?)の「ガラスの30代」などが目立ち、彼独特のコミカルな歌詞は本作ではほとんど聴けない。後のインタビューでは「既にフランス行きが決まっており、早く行きたかったので歌詞をやっつけちゃった(大意)」と語っており、当時のKANの心境がモロに反映された、ある意味リアルなドキュメントアルバムだったのかもしれない。
前述の通り、2002年2月よりKANはフランスへ移住。日本に帰国するまでの約2年半の間は外部への楽曲提供はあったものの、本人自体は実質活動休止状態となった。
MAN

本作と同時発売のシングル「MAN」をアルバムタイトルにしたマーキュリー期唯一のオリジナルアルバム。発売3ヶ月後に収録曲である「涙の夕焼け」がシングルカットされた。
ポリドール末期の作品に見られた作詞家としての表現描写が冴える「Autumn Song」「指輪」といったピアノメインの定番楽曲に加え、本人の学生時代のバイト経験を基にして楽曲制作され、ロスアンゼルスで初の海外レコーディングを行った「DISCO 80's」、外国人シンガー達による日本語コーラスの響きが異色のソウルバラード「Mr.Moonlight」、以降の彼の作品世界を予告するかのようなコミカルでユニークな描写が(当時は)衝撃的だった「夏は二の腕発情期」「ひざまくら 〜うれしい こりゃいい やわらかい〜」という脱力気味のナンバーがひしめく、バラエティに富んだ一作。
気弱で優しくナイーブな…という従来のパブリックなKAN像から徐々に脱却し、本人が描きたいテーマを模索している感のある、完全に一皮むける前の変革前夜的なアルバムといったところ。なお、マーキュリーは数年後にユニバーサルの傘下となり名称消滅、さらにユニバーサルはポリドールも吸収しており、デビューからここまでの時代のKANの楽曲のライセンスは現在ユニバーサルが所持している模様。
TIGERSONGWRITER

前年にシングルベスト「The Best Singles FIRST DECADE」をリリース後にワーナーに移籍。「The Best Singles〜」の先行シングルだった「Songwriter」およびカップリングの「君を待つ」もレーベルを越えて収録された。タイトルは当時のインタビューによると発売時の干支から取られたもので特に深い意味はない、らしい(笑)。
再度の移籍を経てそのユニークさには更に磨きがかかり、「ドラ・ドラ・ドライブ大作戦」「サンクト・ペテルブルグ 〜ダジャレ男の悲しきひとり旅〜」と、タイトルからして独自性溢れる先行の2枚のシングル、世界規模のシリアスな歌詞の「SAIGON」、「Song of Love 〜君こそ我が行くべき人生〜(英語版)」(※日本語版は存在せず)といった壮大なバラード、小品的な「長ぐつ」、哀しみの淵に沈む「月海」、極めつけは同じマンションに越してきた子持ちの人妻への恋慕を綴り(笑)、ギターとコーラスで当時活動休止中だったMr.Childrenの桜井和寿が参加している(MASATO KINUGASA名義)「Oxanne 〜愛しのオクサーヌ〜」と、もはや何でもあり、KANの最大の個性であるフリーダムさが大いに発揮されたアルバムではあると思われ、そういう意味では最もKANのパーソナルを顕した作品とも呼べるかも。
余談であるが、ワーナー期のアルバムは比較的早い段階で廃盤になり、00年代前半にはミスチルの桜井が参加しているということも手伝って中古市場では定価以上の値段が付けられ、本作は若干レア盤と化していたのだが、2010年のオリジナルアルバム一斉リマスター「THE RESTORATION SERIES」で廉価再発され、以降中古市場価格は落ち着いた。
KREMLINMAN

「ロック試練の恋」「Rock'n Soul in Yellow」「WHITE LINE 〜指定場所一時不停止〜」という(KANにしては)ロック色の強い楽曲を要所に配置し、合間に従来のポップス調のシングル「英語でゴメン」「Happy Time Happy Song」を挟んでバランスを取っている構成。KAN本人はロックアルバムと本作を評しているようだが、聴感としてはロックとポップスを上手く折衷して1枚にまとめたアルバム、という印象。前作ほど音楽性がバラバラではないのである程度の統一感はあるが、実話ベース故に共感の難しそうな長尺の曲もあったりと、通して聴くにはちょっと体力がいるかもしれない(笑)。
収録曲「車は走る」は、後輩ミュージシャンである槇原敬之の楽曲を研究・分析して詞曲の展開や使用音色、歌い方も模倣したパロディソング。この後も様々なアーティストの作品を研究し続ける彼の独自成果物第一作といったところ。なお、この年にKANは結婚。後にピアノ弾き語りで再録音・ライブ音源としてもリリースされた愛妻に向けたと思われるバラード「50年後も」のオリジナルバージョン(バンド形式)は本作が初出。「THE RESTORATION SERIES」の対象範囲は本作まで。
Gleam & Squeeze

2000年よりBMGファンハウスに移籍(現在は名称変更を経て吸収先のソニーがライセンスを所持)。年内発売予定が年明けに延期になった「CLOSE TO ME」、アルバム同発の「Superfaker」の2枚のシングルに加え、1999年末発売のワーナー在籍時の最終シングル「今年もこうして二人でクリスマスを祝う」もレーベルを跨いで収録された。なお松本晃彦との久々の共編曲である「今年も〜」以外の楽曲は全てKANが単独で編曲を手掛けており、90年代にほぼ全ての楽曲でタッグを組んでいた小林信吾は本作には不参加。
冒頭の「東京熱帯SQUEEZE」では全編ラップに挑み、「猿と犬のサルサ」ではボーカル以外は全て打ち込みのデジタルサルサを作り上げるなど野心的なナンバーを披露しつつ、基本的には生楽器を活かしながら打ち込みも使用した上でのポップなバンドサウンドという原点回帰的な楽曲が多い。ただ歌詞の内容はどの曲もだいたい切羽詰まっているというか、「カラス」のように逃避願望を歌にしたような曲や、もはや歌詞というよりも愚痴(?)の「ガラスの30代」などが目立ち、彼独特のコミカルな歌詞は本作ではほとんど聴けない。後のインタビューでは「既にフランス行きが決まっており、早く行きたかったので歌詞をやっつけちゃった(大意)」と語っており、当時のKANの心境がモロに反映された、ある意味リアルなドキュメントアルバムだったのかもしれない。
前述の通り、2002年2月よりKANはフランスへ移住。日本に帰国するまでの約2年半の間は外部への楽曲提供はあったものの、本人自体は実質活動休止状態となった。
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