tmtribute 2024年5月15日発売、TM NETWORKのデビュー40周年を記念した企画アルバム。全11曲のトリビュートアルバムのDISC 1、DISC 1収録曲のオリジナルバージョンをリマスターし曲順を同一に収録したDISC 2のCD2枚組デジパック仕様。

 足掛け2年に渡るライブシリーズ「FANKS intelligence Days」の最終2公演であるKアリーナ横浜での2daysライブ開催直前にリリースされた本作は、恐らくメジャーレーベルの企画としては初となるTM楽曲のトリビュートアルバム。参加アーティストはサポートギタリストとして80年代のTMを長らく支えていた松本孝弘在籍のB'z、TKファミリーの一員であるTRFのDJ KOO、直近に小室哲哉とコラボした西川貴教といった新旧直接の関係者から、先輩格にあたる大ベテラン松任谷由実 with SKYE、TMフォロワーであることを公言している坂本美雨やくるりの岸田繁、楽曲提供が縁と思われる乃木坂46などなど、メジャーなアーティスト達が幅広く集結。また編曲やレコーディングクレジットにも中田ヤスタカnishi-ken、クラムボンのmito等、ネームバリューのある面々も顔を揃え、なかなか豪華なメンバーでTM40周年記念を彩っています。

 DISC 1-TRIBUTEの収録楽曲はTMブレイク期の1987〜1988年の作品がヒット曲を中心に全11曲中8曲と圧倒的。各参加者のアプローチについては、意外にも(?)オリジナルを尊重して必要以上に弄らず、それでいて担当アーティストのテイストもある程度入れて…という絶妙の仕上がり具合。例えばB'zの「Get Wild」は、ああB'zがこの曲カバーすればこうなるよね…という感じですし、CAPSULEの「Self Control」や西川貴教の「Love Train」も良い意味で予想通り。乃木坂46の「BE TOGETHER」はTMというより1999年の鈴木あみ版も含めた折半的な(?)トリビュート…という気もしないでもないですが、弄り過ぎて原型を留めないというものは無く、総じて王道のトリビュート作品といった印象。例外的にヒャダイン with DJ KOOの「Maria Club」は、宇都宮隆の原曲ボーカルテイクを使用・加工してのラップとのコラボレーションという掛け合わせでリミックスっぽくもあり、本作で一番面白かったのはこの曲かも。他には坂本美雨の「TIMEMACHINE」(木根尚登作曲)、満島ひかりの「ELECTRIC PROPHET」(小室・木根の共作)が、小室のみならず木根の書くバラードのメロディーの美しさを引き出した、静謐な雰囲気を湛えたアレンジにより、儚げなボーカルとも相俟って出色の出来だと感じました。

 どうせならEPICレーベルの仲間であった渡辺美里や大江千里、小室直系の弟子筋にあたる浅倉大介のaccessなんかも参加すれば良かったのに…とも思いましたが、身内の枠内で同窓会っぽくやるよりも、むしろTMメンバーより下の世代を中心にして作った、フォロワーによるトリビュート企画ということに意義があるという制作意図なのかもしれません。なかなか楽しめた1枚でした。
 なお、DISC 2-TM NETWORKは前述の通りのオリジナル音源によるベストアルバム的な内容。こちらはオマケベストという以外に感想はないのですが(苦笑)、「Self Control」「BEYOND THE TIME」共にフェードアウトせずに最後まで完奏されるバージョンを収録しており、その辺はベストとしては結構珍しいかも。DISC 1の参加メンバーの曲を目的に購入したライト層に向けたTM入門編として、他の超重量級なベスト群を聴くよりも最適なディスクといったところでしょうか。これで新しくTMの音楽に出会ってくれたら有り難いです。