evasecond 1995年10月にTVシリーズとしてスタートし、1997年7月公開の劇場版にて完結したアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(以下「旧シリーズ」と呼称)。完結後もサントラボックスやオーケストラライブアルバム等を大々的にリリースした90年代末を経て、2007年からのリメイク映画シリーズ「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」が起動するまでの00年代前半は音楽関連で特に主だった動きはなかったものの、様々な企画CDをリリースしていたことは意外と知られていないかもしれません。今回の「CD Review Extra」では、一応セカンドインパクト発生から干支二周記念ということで旧シリーズの既発音源を主に用いて各コンセプト毎に編集された、コンピレーションアルバム全4作を1枚ずつレビューいたします。

新世紀エヴァンゲリオン 2000-2005 全コンピレーションアルバムレビュー


EVANGELION -THE DAY OF SECOND IMPACT-
evasecond
 2000年9月13日(劇中設定では大規模災害「セカンドインパクト」の発生日)発売。全11曲収録。CDケースは裏面のジャケットがないジュエルケースタイプで、半透明の黄色い特殊ケース仕様。
 TVシリーズのオープニング「残酷な天使のテーゼ」・エンディング「FLY ME TO THE MOON」、劇場版第1作「シト新生」の主題歌「魂のルフラン」、劇場版第2作「Air/まごころを、君に」の主題歌「THANATOS -IF I CAN'T BE YOURS-」・挿入歌「Komm, susser Tod」を完全に網羅。さらに「DECISIVE BATTLE」等、劇中で印象的に使用されたBGMやクラシック曲も数曲収められ、とりあえず本作を入手すれば旧シリーズの全テーマソングが揃い、一部サントラも聴けるというベストオブベスト的な内容。収録時間も45分とコンパクトで、ライトなエヴァファンが1枚持つなら非常にお薦めの1枚。ただ二ツ折ジャケットにマスタリング表記の記載がないので、リマスターされているかどうかは不明。2000年末までの製造期間限定盤だったが、中古市場ではたまに廉価で見かける。


EVANGELION -THE BIRTHDAY OF Rei AYANAMI-
evaayanami
 2001年3月30日(登場キャラクターである綾波レイの生誕日 ※設定諸説あり)発売。全12曲+ボーナストラック2曲収録。CDは「〜THE DAY OF SECOND IMPACT」同様の仕様で今回の半透明の特殊ケースは薄い水色。ジャケットにマスタリングエンジニアの表記がある。
 TVシリーズ、劇場版で使用された彼女の登場シーンで使用されたBGMに加え、担当声優・林原めぐみによる劇中のセリフ、本人歌唱による新録の「残酷な天使のテーゼ【A.D.2001】」、過去の林原のアルバムからエヴァ関連曲「FLY ME TO THE MOON <AYANAMI Version>」「魂のルフラン(Aqua Groove Mix)」を抜粋収録するなど、作品世界ではなく綾波レイという一人の人物にスポットを当てた構成。物静かで感情をほとんど見せない…というキャラクター性ゆえに、収録されたインストも特に前半はピアノ主体の地味な楽曲が多く、後半はオーケストラ曲もあるものの全体的に盛り上がりには欠けるが、BGM的に流す分には聴き心地が良い。異色のパーソナルコンピレーションといった趣で、綾波ファン向けのコレクターアイテムといったところか。
 なお、ボーナストラックとして「エヴァ」関連楽曲のレコーディングに参加していたジャズピアニストのクリヤ・マコトが1998年に発売したアニソンカバーインストアルバム「ANTITHESIS」から「THANATOS -IF I CAN'T BE YOURS-」「FLY ME TO THE MOON」を収録。綾波コンセプトのアルバムに何故?という気もするが、本編の世界観を壊さないジャズインストなので特に違和感なく聴ける。


Refrain of Evangelion
evarefrain
 2003年7月24日発売。デジタルリマスタリングにて全26曲収録。初回盤は三方背ボックスが付属。
 2002年12月より始まったリマスターDVDボックス発売を始めとする「エヴァリニューアルプロジェクト」の中の一作として発売されたコンピレーションアルバム。過去5作のサウンドトラックの中から選曲された、ありそうでなかったサントラのベストセレクション。あくまで主役はサントラで、TVシリーズの主題歌はTVサイズバージョンやバージョン違いのエディット版などで収録。ラストに配置された英詞曲「Everything you've ever dreamed」は劇中未使用で、1998年末にリリースされたサントラ全集BOX「NEON GENESIS EVANGELION: S2 WORKS」に収録された未発表曲。封入ブックレットには楽曲の詳細な解説が1曲ごとに記載され、資料的価値もある。
 一部例外はあるが、基本的にはTVシリーズ→劇場版という時系列に沿っての曲順となっており、中盤ぐらいまではテンポのある曲を主体にメリハリのある展開なのだが、後半になるに従って暗く陰鬱な曲が中心となり、劇中の作風の変化同様、最後のほうはもうドンヨリという気持ちになってしまうのが正直な感想(苦笑)。ただ、複数のサントラを1枚にまとめたという意義は大いにあり、「旧シリーズのエヴァのサントラが1枚欲しい」というリスナーには本作をお薦めする。


NEON GENESIS EVANGELION DECADE
evadecade
 2005年10月26日発売、放送開始10周年を記念して企画されたアニバーサリーアルバム。全14曲収録。紙製の蓋つきボックスの中にCDケースが収納されている特殊仕様。マスタリング表記有。
 5年前の「〜THE DAY OF SECOND IMPACT」に収録された主題歌・挿入歌全曲に加え、高橋洋子の主題歌シングルのカップリング曲「月の迷宮」「心よ原始に戻れ」がアルバム初収録。さらにサントラ収録のボーカル曲「予感」「幸せは罪の匂い」「無限抱擁」に加え、本作用に新たにリメイクされた「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」10TH ANNIVERSARY VERSION(高橋洋子歌唱)、新曲として「天国の記憶」(林原めぐみ歌唱)が収録。リメイク関連はさすがに原曲のパワーには及ばないものの、こういう解釈もアリなアナザーバージョンとして楽しめる。本作を所持していればバージョン違いを除いたほぼ旧シリーズの「エヴァ」関連のボーカル曲が揃うので、ボーカルコンピレーションアルバムとしてこの上ない充実度の1枚。
 なお、翌年秋に「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の制作が発表。旧シリーズ関連のオリジナル音源でのコンピレーションは本作にて打ち止め(別商品の特典CD等は除く)となり今日に至るが、放送開始25周年を迎えた2020年秋に旧シリーズのサントラボックス、新劇場版挿入歌(主題歌は未収録)も含めたボーカルコンピがそれぞれ発売されている。