
現在はBEGINとしての活動と並行してメンバーそれぞれのソロワークも目立つ彼ら。ボーカルの比嘉栄昇、キーボードの上地等は既にソロ名義でのアルバムをそれぞれリリースしていますが、島袋に関してはユニットを組んでの活動はあったものの単独でのソロアルバムは今回が初。制作に至った経緯は特設サイトによると、2021年のコロナ禍の際に、同郷の後輩であるORANGE RANGEのメンバーからの一言がきっかけとなり、島袋と縁のあるミュージシャンを招いて2022年よりアルバムのプロジェクトがスタート。ちなみにタイトルは2023年で御年55歳を迎えた島袋の年齢と、アナログレコードの回転数「44rpm」を捩って付けられたとのこと。なお全13曲のうち最後に収められている「からっぽカタツムリ」のみ、俳優の山田孝之がボーカルを務めるユニット・椰子唄楽団(島袋もメンバーの一員で作曲を担当)名義として、2023年の8月に配信されていた既発の楽曲となります。
先述したように本作にはゲストミュージシャンが多数。歌唱・演奏のみならず楽曲提供や共作、編曲まで担当するなど各参加者の役割はそれぞれで、有名どころではORANGE RANGEのNAOTOとHITOKI、MONGOL 800のキヨサク、Kiroroの玉城千春といった、BEGINと共に音楽シーンで活躍してきた沖縄出身のミュージシャンがやはり多いですが、スキマスイッチの大橋卓弥やCRAZY KEN BANDの横山剣が名を連ねるなど、意外な接点からの繋がりもあり、また特設サイトを見回していただくだけでも分かると思うのですが、その他にもかなりの人数が参加しており、そちらに掲載されていない各曲の演奏陣の著名プレイヤーまでカウントすると総勢何人が集まったのかもはや分からない状態(笑)。
さて内容というと、ギタリストのアルバムだからギターインストの曲も何曲か入っているかな…と思いきや「converse」1曲のみで、他の曲はゲスト参加のミュージシャン達の色を尊重し、あくまで島袋はその真ん中でギターを弾き、歌を歌うという姿勢に徹しており、ソロということで彼自身のルーツを前面に出して、という作風ではないと思います。ですが、その「(ほぼ)後輩ミュージシャン達の力を借りながら朗らかに音楽を演っている」という空気が各楽曲から伝わるようで終始微笑ましい雰囲気を感じます。BEGINでは採り上げなさそうなメッセージを優しく歌う「今日は明日のイエスタデイ」、もろモンパチっぽいストレートなロックナンバー「シージャー GO! GO!」、対照的に緩いビートに乗せた剣さんとのデュエット(この二人結構声質が似てるっぽい)が心地良い「太平洋音頭」、三線や太鼓の音を隠し味にクールなデジタルビートを奏でる「スターリリー」が特に印象に残りました。
なお、過去にBEGIN名義・島袋メインボーカルでリリースした「海の声」「青のまま」も今回セルフカバーで新録されていますが、前者はMighty Crown Reggae Remix ver.とサブタイトルが付けられ、テンポを落としゆったりとしたレゲエ調で一気にリゾートミュージックっぽく変貌、後者はアコースティック調だった原曲がバンドサウンドになりライブ感が増した仕上がりになっていました。島袋のボーカルに関しては00年代後半辺りからBEGINのアルバムの中で毎回1曲ぐらいはメインを務める曲があるので、ハスキー気味の歌声は知っていましたが、メインを張るボーカリストではないが故にデュエット形式の曲ではゲストにちょっと食われてしまっている…という箇所もあったりするのですが、この辺のご愛嬌も含めて、キャッチコピーである「島袋優の現在地」と称するに相応しい作品でもあるのかも。
…ということで様々なミュージシャンの力を借りて、控え目ながら楽しそうに歌っている島袋のソロ作品、ということで、BEGINのファンがメインターゲットの世界かなぁ…とも思いますが、各楽曲のMVやオーディオ動画も積極的に公開されているようですし、各ミュージシャンが参加している楽曲をそれぞれのファンがアラカルト的に配信で摘まんで、という聴き方もアリかと思います。楽しく聴けました。
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