doutmenmacross 2024年1月1日発売、サウンドプロデュース&テクノユニット・Doubtmen(ダウトメン)による、アニメ「マクロス7」のトリビュート・アルバム。全14曲収録。

 Doubtmenは2022年より始動した、作詞家であるK.INOJOと、作・編曲家である青木庸和によるプロデュースユニット。K.INOJOは80年代より作詞家としての実績があり、1994年にスタートしたTVアニメ「マクロス7」では主題歌をはじめ、劇中バンド・Fire Bomberの楽曲として使用された挿入歌の大多数の作詞を担当。その後も続編OVAや、15周年時のオリジナルアルバム「Re.FIRE!!」でも引き続きその手腕を発揮した、「マクロス7」の作詞面での第一人者。その「マクロス7」が2024年で放送開始30周年を迎えるというタイミングで、前年12月より番組公認でのトリビュート企画を敢行し、アルバムとしての形で結実したのが本作。なおトリビュートアルバムというと原曲の演奏者などは参加しないのが通例(?)ですが、本作には主人公シンガー・熱気バサラの歌唱パートを劇中で担当したボーカリスト・福山芳樹も数曲参加と、セルフカバーとトリビュートが混在したかのような作品になっています。

 さてそのトリビュートの中身ですが、Fire Bomberの数あるレパートリーの中から、K.INOJO作詞の楽曲のみを選び、全編テクノアレンジにてロックバンドの楽曲として発表されていた原曲とは全く違うアプローチを試みた、かなり挑戦的な内容。選曲は主題歌「SEVENTH MOON」を筆頭に、「PLANET DANCE」「突撃ラブハート」「REMEMBER16」(この曲は2バージョン収録)、そして2012年の「マクロスF」とのコラボ映画から「ヴァージンストーリー」等、まあ当然選ばれるよね…という曲に混じって、OVAの劇中歌「WILD LIFE」、「Re.FIRE!!」から「星屑ハイウェイ」「弾丸ソウル」等、正直忘れかけていたマニアックな曲まで取り揃えた結構フリーダムな構成。オケに関してはバンド形態だった原曲から大胆にEDM化を施し、イントロを聴いただけでは何の曲か分からないほど変貌が著しく、原曲の熱さと比べるとさすがに違和感があるものの、リミックス系のオケ主体のトラックではなく歌モノテクノユニットとしてしっかり成立させたトリビュートといった印象。ボーカリストは曲によって多数フィーチャリングという形を採っており、男性ボーカルの曲を女性ボーカルが歌い、曲によっては一人称や歌詞の語尾なども変更している点が斬新ではありました。ただ、前述の歌バサラこと福山芳樹が参加している曲が出てくるとやっぱり本家の歌声には敵わないよな…というのが正直なところ。なお、2曲はインストナンバーとしてトリビュートされており、「ANGEL VOICE」ではBARBEE BOYSのいまみちともたかがギターでメロディーを弾くという形で参加するという変則的なトラックもあるなど、面白い要素も付加されたアルバムでした。賛否両論はあると思いますが、「マクロス7」ファンはサブスク配信等で気軽に一度聴いてみてはいかがでしょうか。

 Fire Bomberは今年の10月末には12年振りのシングルを発売することが決定。そして1999年発売のベストアルバム「Ultra Fire!!」のアナログ盤も同時リリースされ、関連ライブも開催されるとのこと。番組に連動した企画バンドとして始まったFire Bomberがインターバルを経ながらも30年を迎えるとは…とリアルタイム世代の筆者にとっては感慨深いものを感じます。月並みですが、「マクロス7」30周年、おめでとうございます。