
2023年の8月から9月にかけて、憂歌団がレコードデビューした1975年から1981年まで在籍したトリオ・レコード内ショーボート・レーベルよりリリースされていた各アルバムをリマスターした新装版が発売。本作は他作品と共に同時発売されたベストアルバム。といっても元々は2019年6月にリリースされたインディーズレーベル、ウルトラ・ヴァイブ発の「ゴールデン☆ベスト」シリーズ作品の再発であり、歌詞ブックレットの小川真一の解説も2019年発売時のもの。帯には「最新デジタル・マスタリング」と記されていますが、2019年発売の際のリマスタリングのまま帯の品番を変更して再発されている模様。とはいえ、この2019年盤は発売して比較的早い時点で廃盤になってしまったらしく市場価格が高騰していたので、その時に入手できなかった筆者にとってはとても有難い再発となりました。
収録曲は「おそうじオバチャン」「パチンコ(ランラン・ブルース)」「嫌んなった」等、ショーボート時代の全6タイトルのシングル曲をA/B面含めて完全収録。さらに「シカゴ・バウンド」「俺の村では俺も人気者」等のアルバム初出の人気ナンバー、ライブアルバムからも加山雄三のカバー「ステイ・ウィズ・ユー・フォーエバー(君といつまでも)」の初期ライブ音源を収録。さらに「+2」として、80年代後半のフォーライフ在籍時の代表曲「大阪ビッグ・リバー・ブルース」「胸が痛い」のシングルバージョンも追加されるなど、完全網羅というわけではないものの、ある程度憂歌団の代表曲を揃えられるラインナップ。00年代以降は特にショーボート時代が対象のベストアルバムは数えきれないほどリリースされており、憂歌団に興味を持っても一体どれを最初に聴けばいいのか…という濫発状態だったと思うのですが、とりあえずは本作を入門編として聴いて、もっと聴きたくなったらこの時代のオリジナルアルバムや、80年代のフォーライフ、90年代のワーナーと、各期の公認ベストなどにも手を出してみるのがいいかな、と思います。
…そんな中でただ一つ不満点を述べるならば、前述のフォーライフ期2曲が中盤に連続して差し込まれている、という点。それまでは70年代の憂歌団らしいアコースティックバンドでのナンバーが続いていたところを、歌謡テイストの濃いこの2曲を突如配置して、直後でまた元に戻る…という流れはちょっと座りの悪さを感じました。本編に無理やり混ぜずに、ボーナストラック的にラストに収録しておけば流れが良かったような気がしますが、まあ残念ポイントはそのぐらい。改めてこの時代の彼らの楽曲を聴くと、どうしても当時の流行が反映されている80年代以降の楽曲よりも普遍的であり、ショーボート時代の楽曲が今でも熱心に支持され続ける理由が分かった1枚でもありました。
なお、本レビューを書く直前にベースの花岡献治氏の逝去の報が。昨年の1月時点での近況では数年前の緊急入院からの療養を経て復帰し、熊本に在住してとりあえず元気そう、と少し安心していたのですが、それからわずか一年半で別れの報せが届くことになるとは…。本作収録の「夢」(先に逝去したドラムス島田和夫氏との共作曲)を聴くとああ、この二人はもうこっちの世界には居ないんだな…という現実が残念でなりません。謹んでご冥福をお祈りいたします。
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