去る日曜日・5月19日にKアリーナ横浜で開催された、TM NETWORKのアリーナツアー「40th FANKS intelligence Days 〜YONMARU〜」のツアーファイナル公演に参加してきました。その模様をライブレポートとして公開いたします。ツアーは全日程終了していますのでネタバレ全開です。

TM NETWORK「40th FANKS intelligence Day40 〜YONMARU〜」
2024年5月19日 Kアリーナ横浜


 2022年より続くTM NETWORKのライブシリーズ「FANKS intelligence Days」の最終章とも言うべきアリーナツアー「〜YONMARU〜」のスケジュールは、彼らのデビュー日前日である2024年4月20日より、東京・大阪・神奈川の3都市×2公演ずつの計6公演。
 年明けにリリースされたYOSHIMOTO R&C在籍時のアルバムと映像作品をまとめた「TM NETWORK 40th Anniversary BOX」の中に先行予約のチラシと日程が同封され、その後一般発売も開始。筆者はBOXは未購入だったのですが東京と神奈川のどちらかには行こうと思っており、キャパの少なくてチケットの取りにくそうな東京(ガーデンシアター)より、キャパの大きい横浜(Kアリーナ)のほうを選択し難なくチケットをゲット。ツアー開始以降はライブの情報を公式のニュース以外は見ない、探さない、という徹底したネタバレ防止策をとり、ファイナルである5月19日に臨みました。

 会場のKアリーナ横浜は、昨年秋にオープンしたキャパ2万人を誇る神奈川最大規模のアリーナ。
 その規模ゆえに終演後の観客の動線が詰まり、歩道で大渋滞を引き起こす…というニュースも度々目にしていたので、正直なんつーところを会場に選んでくれたんだ、とは思いましたが(苦笑)、横浜駅・みなとみらい駅・新高島駅の3駅からのアクセスが可能ということで、一番空いていそうな新高島駅を選んで会場へ。駅の出口からKアリーナへの道順指示は特にありませんでしたが、ほぼ隣接しているアンパンマンミュージアムやヒルトンホテルに向かって歩いていくうちに無事に到着。

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 会場正面入り口。人が多数居すぎてトリミングしました

 座席は3LEVELという、アリーナ(1LEVEL)の次に標高の低い席の左隅でした。5LEVEL、7LEVELとどんどん高く、ステージから離れていく座席があるようなので、まあ近くはないけどほどほどの場所でした。理想を言えば3LEVELの中央辺りならば全体を俯瞰的に観られるんじゃないかなと。

 今回は前回行った時とは異なり、サポートメンバーも参加なのでステージ上には三人のブース以外にもドラムセットやギターアンプがステージ後方に並べられていました。
 チケットは完売にはならず(まあ2万人だし…)当日券も販売していたようですが、見渡した感じではほぼ満席、という感じだったような。
 17時10分、開演時間より約10分ほど押した頃に照明が暗転して、ライブスタート。

1.Self Control(1987)
 有名シングル曲でまずは幕開け。
 てっきりまた冒頭の長い映像から始まると思いきや、いきなり原曲のイントロで普通に始まるという、ある種サプライズなスタートでした。アレンジはほぼ原曲通り。小室哲哉はいきなりショルダーキーボード装備。他の二人やサポートメンバーは普通のステージ衣装…という出で立ちでしたが、彼だけは何故か貴族のような恰好(?)でした。

2.Maria Club(1987)
 4thアルバム「Self Control」収録曲。
 超レア楽曲。1987年のKISS JAPAN TOUR以来の披露でしょうか(映像では同年の武道館公演が商品化)。こちらもほぼ原曲アレンジ。まさかこの曲が生で聴ける日が来るとは…。

3.1974(1984)
 シングル曲。木根尚登がエレキギターで明るめのフレーズを弾いてから始まる最初期楽曲。
 舞台の上に備えられたスクリーンにはデビュー当時の恥ずかしいMVが映し出されるという演出が(笑)。
 なおこの曲はサポートメンバーは参加せず三人+オケでの披露。今風のアレンジに変更されておりました。

4.Carry on the Memories(2024)
 小室・木根のボーカルによる二人演奏+オケによる未発表曲。
 音楽を続けてきた仲間達も一人また一人と去っていったけど今は…という抒情的なアコースティック調ナンバー。スクリーンに映し出されるメンバー三人の打ち合わせ中(?)の笑顔と相俟って、胸に響く楽曲でした。

5.Confession(1986)
 3rdアルバム「GORILLA」収録曲。
 ここからサポートメンバーも戻ってのバンド演奏。本編唯一のキネバラ。これも原曲準拠。
 
6.A Day In The Girl’s Life
7.Carol(Carol’s Theme I)
8.Chase In Labyrinth
9.Gia Corm Fillippo Dia
10.In The Forest
11.Carol(Carol’s Theme II)
12.Just One Victory


 全て1988年の6thアルバム「CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-」収録曲。
 木根尚登の小説を基に物語の場面を楽曲化した、いわゆる「CAROL組曲」。最新鋭のAI技術を用いて、発売当時の主人公の少女・キャロルの姿が現代風に変化したり、ロンドンの街並みをAIで描いたり、「Chase In Labyrinth」ではアルバムジャケットのフラッシュ(ウツの役柄)が映像で口パクしたり…と、2024年のテクノロジーを駆使した近代版CAROLをお届け、といった感じのブロック。
 「Gia Corm Fillippo Dia」は敵側のテーマソングのような曲なので、ウツは退場してスクリーンに歌詞が出るという皆さんで歌ってくださいのインスト状態。我々はジャイガンティカの手下だったのでしょうか
 ラストの「Just One Victory」では「この作品を制作した当時は、現実に音楽が世界から消えるということは考えられませんでしたが…」的な昨今の情勢(コロナ禍でライブが禁じられたこの数年間のこと)を憂いつつも、「これからも私達は音楽を奏で続けます」といった意思をスクリーンの文字で表明。この演出には大いに拍手でした。

13.Coexistence(2024)
 未発表の新曲…といってもインスト。サポートメンバーの北島健二(G)、阿部薫(Dr)によるギターとドラムのソロ合戦のような楽曲。次曲への繋ぎのアドリブかと思いましたが、曲名も公開されました。なお「Coexistence」とは「共存」という意味。

14.Whatever Comes(2023)
 TMメンバーもステージに戻っての最新フィジカルシングル。
 最初の「ダンダンダン!ダダン!」というフレーズが来たので、この曲か「DEVOTION」かなと思いましたが正解。バンド演奏で聴いたのは初めてですが、躍動感があってより良いですね。

15.RAINBOW RAINBOW(1984)
 1stアルバム「RAINBOW RAINBOW」収録曲。
 1984年のオリジナル、1989年の「DRESS」、2014年の「DRESS2」に続く第4のバージョンですが、TMらしからぬファンシーなアレンジ。ウツが1番Aメロの途中で歌詞をド派手に間違え、それがスクリーンにもばっちり映ってしまうというライブならではのアクシデントが(笑)。

16.小室ソロ
 恒例、小室哲哉ソロコーナー。
 今回は普通に弾くのではなくドラムの音色をセッテイングした鍵盤をバンバン叩くのがメインという異色のソロ。
 それに合わせてオレンジ色の炎の玉(本物っぽい)がステージ前方の各所からガンガン上がり、最後は一斉にドカーンという派手な演出。アリーナの前にいた人は結構熱かったんじゃないでしょうか。

17.Get Wild Continual(2024)
 先月発売の企画アルバム「40+ 〜Thanks to CITY HUNTER〜」収録曲。
 「Get Wild」の最新リアレンジ版で、今回はイントロも短く間奏もアウトロもコンパクトという、今まで10分以上の大曲に変貌していたバージョンとは一線を画す構成。とても聴きやすいです(笑)。
 なお、この曲からサポートメンバーは退場し、ドラムやギターアンプなどもいつの間にか撤去されていた模様。
 
18.ACCIDENT(1985)
 シングル曲。この曲も「DRESS2」でリメイクされましたが、それとは異なる新規アレンジでのニューバージョン。

19.Electric Prophet(1985)
 ミニアルバム「TWINKLE NIGHT」収録曲。
 3コーラスまである長尺のバラードにして、初期のライブでの定番ラストナンバー。小室のみならず木根もキーボードを担当。キーはかなり下がっていましたが基本的には原曲準拠のアレンジ。

 最後の転調前で演奏が終わり、三人がステージ奥の光に向かって歩いていった後でエンドロール的なインストの「intelligence Days」が流れるという演出があったので、ああこれで終わりなのか…でもなんか早いな?(手元の時計を見たら19時50分ぐらい)と思っていたのですが、インスト終了直後「One More Song」というナレーションが流れ、メンバー三人とサポートメンバー二人がステージに再度登場。そしてシークレットゲストとして、80年代のTMライブにサポートギタリストとして長らく在籍していたB'zの松本孝弘が登場!!

20.Be Together(1987)
 5thアルバム「humansystem」収録曲。
 原曲準拠のアレンジ。間奏の松本のエレキギターソロは勢いのある速弾きではなく、フレーズで聴かせる渋い味わいのものに。そしてサビ前のメンバー三人揃ってのターンは毎回喝采(笑)。

21.Get Wild(1987)
 宇都宮が人差し指を立てての「もう1曲」アピールの後に松本が応えての最終曲はTM随一の代表曲で。
 ほぼオリジナルを完全に踏襲したアレンジ。だいたいこの曲のライブアレンジは「GET WILD'89」から派生していった感があったので、ようやく原曲準拠のものが聴けました。

 完奏後、観客の万来の拍手に包まれながら、阿部、北島、松本、そしてメンバー三人の順で退場。いつもならばここで次回予告的な映像が流れるのですが、今回はそれが無く、長らく使用されたツアー用のロゴマークが消えていく演出になっており、ああ、これで「intelligence Days」シリーズも完結なのか…と感慨にふける間もなく恒例の花火が大音量ドーン!!で公演終了。終演時刻は19時10分ぐらいだったかと。


全体の感想
 大会場での40周年シリーズの締めくくりライブ(だと思う)とのことで、てっきりベストヒット的なセットリストを予想していたのですが、一般的な知名度のある曲は「Self Control」「Get Wild」「Be Together」ぐらいで数々の代表曲をスルー。代わって「1974」「RAINBOW RAINBOW」「ACCIDENT」等の最初期ナンバーを新アレンジにして中心に据えるという予想の遥か斜め上のセットリストには意表を突かれました。なんと「Whatever Comes」と未発表曲以外は1988年までにリリースの曲で固められており、TMN期の曲や復活後の代表曲(「I am」とか「DEVOTION」とか)も一切演奏されないという徹底っぷり。ベストアルバムを聴いたことがあるぐらいのライトリスナーが40周年のお祭り感を期待して観に来たら置いてけぼりを食らいそうな構成だったかも。80年代の活動全盛期にTMに夢中になっていたけどその後のTMN期はあまり…という全盛期リアルタイム層には懐かしいと思える曲が連打されて満足な内容だったのではないでしょうか。
 筆者としては、やはりリアルタイムでTMのファンをやっていたのがTM NETWORK末期〜TMN期(1990〜1994年)だったので、この時期にリリースされた楽曲が40周年を締めるにあたって完全に無視されたのはちょっと納得行きませんでした。が、考えてみれば、この「intelligence Days」シリーズは2022年夏〜秋、2023年夏〜秋、2024年冬〜春と、シリーズ毎にセットリストを全面的に変更しているわけで、最終シリーズ用にとっておいたと思われる「CAROL組曲」に加え、今まで披露できなかった初期〜中期の楽曲を主体に組み上げた第4シリーズのセットリストを、これまでのシリーズのセットリストと合わせることで一連の40周年ライブが完結する、というコンセプトならまあこれもアリかな、と納得することにしました。

 …まあ、そんな考えは全部終わって冷静に振り返ってみてからの話。当日はオーラスでまっちゃん(松本孝弘)が出てきてウォー!!みたいな感じになりましたし(笑)、会場の異様な盛り上がり方はCAMP FANKS!!'89の雰囲気を追体験できたような気がして楽しかったです。
 でも聴きたかったなぁ…全シリーズで未演奏だった「DIVE INTO YOUR BODY」とか「ignition,sequence,start」とか「Alive」とか…まあ言い出したらキリがないことだと思いますが、40周年記念プロジェクトが完結してもTM自体はこれで終わるわけではないし、「今後は周年毎ではなく、やれる時にTMをやる」とメンバーも宣言しているようなので、その時まで気を長くして待つことにしましょう。FANKSは待たされることには慣れていますからね(笑)。
 改めましてTM NETWORKデビュー40周年、おめでとうございます。

 なお余談としまして帰り道の話。開演前のアナウンス通り規制退場となり、誘導に従って会場の外をグルグルと回って帰路についたのですが、行きと同じく新高島駅に向かう動線はそれほど混んでおらず、約30分ぐらいで駅にたどり着けました。東京方面に電車で向かうには横浜駅から乗るよりも運賃が若干上乗せされますが、結構穴場かもしれませんのでお薦めいたします。