
間にナンバリングシリーズとなっている邦楽カバーアルバムを挟み、前作より1年3ヶ月振りのアルバムリリースとなった本作。オリジナルアルバム…と言っても、2019年1月から毎月1曲配信されている楽曲を1年分(今回は2022年リリースの12作が該当)曲順を考慮してアルバムの形に並び替え、CD用にリマスタリングし、最後にボーナストラックを加えてフィジカルメディアで発売する、という形を今回も踏襲しているわけですが、本作ではメンバー三人での共作名義である未発表曲「炎のインプロビゼーション」を冒頭に据えるという新たな試みが。といっても1分半程度のタイトル通りのインプロ(即興)ではあるのですが、2曲目へのプロローグ的な楽曲として適度な長さにそれぞれの楽器の絡みが凝縮されており、こういう導入でリスナーの耳を暖める(?)のもアリかな、と思いました。
2曲目以降はピアノ、ベース、ドラム以外にもシンセ的な音色をリフで使ったり、楽器の鳴り具合をエフェクトで調整したり…と、工夫を凝らしながらの実にH ZETTRIOらしい、軽快ながら熱量も感じる、安定の楽曲群が並んでいます。今回はそれほどアッパーな曲は多くないのが特徴と言えば特徴…と感じるぐらいで、全体的には良くも悪くも偉大なるマンネリと言ったところで、他に感想の書きようがないのが正直なところなのですが、その中でも目(耳?)を惹いたのは既発の配信シングル「Wolf」。この曲はかつてメンバー三人が所属していた五人組バンド・PE'Z(オフィシャルでは「前身バンド」と表記)が2013年に発表した「狼少年」を明確にリアレンジした楽曲。二管がメインを務め、リズム隊もボルテージ高めの演奏を繰り広げていた原曲と比較すると、ピアノトリオによる編成でも熱さは感じられるものの、原曲よりもそれは控えめで、代わってリラックス成分を若干含んだバージョンに仕上がっていました。どちらのバージョンもそれぞれの良さがありますが、久々にPE'Zの演奏を聴くとやっぱりあの熱さは圧倒的だったな…と思ったり。H ZETTRIOでPE'Zのリアレンジアルバムの制作をしたら面白いのでは…とも思うのですが、まあPE'Zの楽曲は元メンバー五人のものですし、色々難しいのかもしれませんがこうやってたまにリメイクで出してくれれば嬉しいかな、と。
「EXCITING FLIGHT盤」ボーナストラックは「Beat Swing(H ZETT M Remix)」、作曲・ピアノ担当のH ZETT M自らがリミックスを手掛けたその名の通りのバージョン。初っ端からスクラッチをかましてDJ風の導入で始まった後は、原曲のアレンジを尊重しながらもドラムの音を加工してより踊れるダンスナンバーへとアップデートされており、これはこれで魅力的。中々の良リミックスでした。
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