tmlovetrain 1984年4月21日にシングル「金曜日のライオン」、アルバム「RAINBOW RAINBOW」でレコードデビューした小室哲哉・宇都宮隆・木根尚登の三人組ユニット・TM NETWORKは本日でデビュー40周年。既に昨日より40周年記念ライブツアーが開幕し、現在所属のSonyからは本日企画アルバムが発売され、来月にはトリビュートアルバムのリリースも予定されているなど、メモリアルイヤーに注力してくれているようです。そんなTM NETWORK(TMN)の最大の代表曲は「Get Wild」という世間一般的にもファン的にも揺るぎない楽曲がある一方、最大セールスを売り上げたヒットシングルながら、あまり表立って取り上げられることが「Get Wild」に比べて少ない両A面シングル「Love Train/We love the EARTH」。今回の「CD Review Extra」では若干不遇の感のあるこの2曲の全スタジオ録音バージョンを制作時系列順にレビューいたします。



デビュー40周年記念・TMN「Love Train/We love the EARTH」
STUDIO REC Ver.全曲レビュー



Love Train/We love the EARTH
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 1991年5月22日発売、通算25枚目(TMN名義では4枚目)となるシングル。両曲共に作詞・作曲・編曲:小室哲哉。
 カメリアダイアモンドのTV-CF「LOVE EARTH」シリーズのCMソングとして2曲共に採用され、1991年の春から夏にかけて深夜のテレビCMで大量にオンエアされた。その効果もあってかオリコンチャート初登場で約17万枚を売り上げ首位を獲得。発売後も音楽番組のみならずバラエティ等にもテレビ出演し、プロモーションを積極的にこなしたことも功を奏してか、初動に傾きかけていたTMのシングルとしてはロングセールスを積み上げ、約53万枚の売り上げを記録。TM史上最高の売上記録を残したシングルとなった。



Love Train
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 カメリアダイアモンド「LOVE EARTH」シリーズ第2弾・RED ROCK編CMソング。
 前年TMNにリニューアルした直後のアルバム「RHYTHM RED」のハードロック路線からはやや外れ、イントロも(彼らにしては)短めでキャッチーなサビから始まるポップロック寄りにシフトしたが、終始楽曲をリードするエレキギターのリフや、野太い男性コーラスなどが前年の野性的な流れを汲む印象の楽曲。歌詞は「君」(恋人?)との背徳的な逃避行を描いている…と思われるが、「涙の惑星 傷みの流星 大地の嘆き聞こえる」「愛だけが 地球を回し続ける」等、突如地球規模の壮大なフレーズが飛び込んでくるあたりの文脈は解釈が難しい(タイアップ先の要望?)。
 アルバム初収録は同年9月の8thアルバム「EXPO」。前述のようにTM最大セールスのシングルではあるのだが、「Get Wild」「Self Control」「BEYOND THE TIME」「SEVEN DAYS WAR」といった80年代後半の代表曲と比較するとライブの披露度も含めて扱いは控えめ。投票ベストでは2004年の「Welcome to the FANKS!」では第9位、2020年の「Gift from Fanks」では第17位と、最上位ではないがそれなりの人気曲である。TMN期(1990〜1994)の象徴的な楽曲としてはこの曲、という認識はされているようで、オールタイムベスト系にもほぼ毎回収録されている。
 なお、MVには東京パフォーマンスドールのメンバーが出演。「TMN」と書かれた大きなフラッグを持って街を歩いたりするシーンで当時在籍の篠原涼子の姿も確認することができる。


LOVE TRAIN(CLUB MIX)
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 元々は「EXPO」に収録する予定で制作されたバージョンだったが、原曲をそのまま収録することになり、アルバム購入特典の応募券を送ると抽選でこのバージョンの8cmCDがプレゼントされるという非売品として日の目を見た。長らく入手困難となっていたが、デビュー20周年時の2004年12月22日に発売されたリクエストベスト「Welcome to the FANKS!」のdisc 3(カップリング+レア音源集)に収録されて初商品化された。
 原曲ではサビから始まるところをAメロからに変更、シンセ等のオケを取り除き、リズムトラックを主体に淡々と進行。後半から徐々に音が加わってくるが、原曲のような派手な盛り上がりには達しないで終わる引き算のリミックス。ハウス系の楽曲がメインだった「EXPO」に入っていても違和感は無かったと思う。


Love Train(extended euro mix)
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 1993年8月21日発売のリミックスアルバム「TMN CLASSIX 2」収録バージョン。
 CLUB MIXを下敷きに小室哲哉自身がリミックスを手掛けたバージョン。テクノっぽいシンセフレーズが追加されている他、低音を強調、オケも終盤は原曲準拠となり盛り上がって終了するなど、原曲とCLUB MIXを上手く折衷したような仕上がりに。「CLASSIX」自体はリミックスの完成度が曲によってまちまちだと思うのだが、この曲に関しては良いリミックスだと思う。


LOVE TRAIN -EXTENDED MIX-
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 2004年3月24日発売、10thアルバム「NETWORK™ -Easy Listening-」収録バージョン。
 ボーカルを含めて完全新録のリメイクバージョン。当時小室が注力していたトランス系ポップスへと大きくアレンジを変更。原曲のギターフレーズがシンセフレーズに置き換えられるなど、この先のTMのスタンダードな路線になる生楽器はほぼ使用されないエレクトロ色が強く打ち出されているので、その先駆けとも呼べるか。原曲であったラストサビ突入後の転調がなく、2コーラス目のサビで歌自体が終わってしまうので、若干消化不良の感も。



We love the EARTH
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 カメリアダイヤモンド「LOVE EARTH」シリーズ第1弾・勇気の川編CMソング。
 1991年の3月末よりCMでオンエアされ、TMNのラジオ番組「TMN Rock'n Up」の4月頭の最終回で「発売日未定、タイトルは決定」というアナウンスでフルコーラスが流されるなど、楽曲発表自体は「Love Train」よりも先であった。なお5月頭にはこの曲でミュージックステーションにも出演している(これも「Love Train」より先)。
 こちらは80年代までのTM NETWORKの要素を復活させたようなシンセメインのポップで陽の雰囲気を醸し出す爽やかなナンバー。当時筆者もCMでこの曲を耳にした時に「RHYTHM RED」のハードな曲調から一転していて驚いた記憶がある。歌詞は「君に会うために生まれた 愛するために生まれた」という直球のラブソングなのだが、「君と生きる勇気 地球を愛すること」等、地球愛フレーズ(?)が挿入されるあたり「Love Train」との共通項も見受けられる。
 「EXPO」には別バージョン(後述)が収録され、オリジナル音源でのアルバム初収録は1994年6月の終了時ベスト「TMN RED」まで待たされた。また、両A面なのだが1996年12月のシングルコレクション「TIME CAPSULE -all the singles-」には未収録、同様コンセプトの2009年9月の「THE SINGLES 2」には初回限定盤付属の特典ディスクに回される等、あまり扱いはよろしくないが、投票ベスト「Welcome to the FANKS!」では第3位、「Gift from Fanks」では第11位と、ファン人気は高い。


We Love The Earth(Ooh,Ah,Ah,Mix)
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 1991年9月5日発売、8thアルバム「EXPO」収録バージョン。
 原曲からボーカルトラックのみを活かし、他のオケは完全に新規のものに差し替えるという形のリミックスバージョン。ハウス調の打ち込みドラムとベースが流れる上に固めのピアノの音とシンセのリフが断続的に入るシンプルなオケになり、あまりコード感が感じられない仕上がりで、シングルのカップリングに入っていそうなアナザーバージョンといった趣。イントロがやたら長いこともあり演奏時間は7分を超える(原曲は約5分半)。実質アルバム1曲目にこのバージョンを持ってくるあたりかなり野心的な配置だと思う。


We Love The Earth(single overdub mix)
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 1993年8月21日発売のリミックスアルバム「TMN CLASSIX 1」収録バージョン。
 こちらはシングルバージョンに手を加えたマイナーチェンジ版リミックス。サブタイトル通りのオーバーダビングを施したバージョンなのだが、原曲の左チャンネルに加え、右チャンネルにもハイハットの音が足されているぐらいで、原曲とほとんど印象が変わらないのが特徴といえば特徴。当時はまだ原曲がアルバム未収録だったので、オリジナル(に近いもの)を求めるリスナーには有り難いテイクと言えるか。


WE LOVE THE EARTH(TK Remix)
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 2023年6月14日発売、13thアルバム「DEVOTION」収録バージョン。
 2021年秋のTM再起動宣言以降に行われたライブでのアレンジを基にした完全新録のリメイクバージョン。キーを1つ下げ、サビのコードの一部をマイナーに変更しており、原曲にあった爽やかに突き抜ける感はかなり後退した。基本はエレクトロ調だが、ほぼアコギの演奏のみで歌うパートもあったりと、展開は一本調子ではなくそれなりにバリエーションがある。コード変更もあり、全体的に不穏な印象を受けるが、リメイクとしての完成度は高いと思う。なお、今回も「Ooh,Ah,Ah,Mix」並みの演奏時間で7分を超える。