mrchildrenmissyou 2023年10月4日発売、Mr.Children通算19枚目(ライブ盤等を含む公式通算では21作目)のオリジナルアルバム。全13曲収録。特製ペーパートレイ仕様の完全生産限定盤と、三方背デジパック仕様の通常盤の二形態での販売(収録内容は同一)。

 前年のデビュー30周年記念のベストアルバム2作を挟み、前作より2年10ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバム。ベスト以降に新曲発表のないままアルバム告知がなされ、先行シングル等の既発曲が一切なしの全曲新曲というニューアルバムとなり、この試みはいきなりアルバムリリースだったデビュー作を除けばミスチル史上初。ただし「ケモノミチ」「Fifty's map 〜おとなの地図」はアルバム発売に先駆けて配信。両曲ともリリックビデオやMVが制作されており、アルバム内のリード的な役割を担っていると思われます。

 公式特設サイトによると、「今回のアルバムは4人だけで集まりスタジオで作られた」とのこと。といっても完全に4人だけの演奏のアルバムということではなく、曲単位では前作でも関わったSimon Haleがストリングスアレンジを担当していたり、過去にミスチルのレコーディングに参加経験のある山木拓夫や西村浩二が金管楽器全般で、シンガーソングライターである小谷美紗子がピアノでそれぞれ参加していたりとアディショナルな要素も加えながらも、全体的にはシンプルな音像に統一された作風がまず印象的。というのも、メンバー全員参加のバンドサウンドは全収録曲の半分ぐらいで、残りの半分の曲はアコギとピアノだったり、アコギとストリングスだったり、打ち込みメインだったり、「Party is over」に至ってはアコギの重ね録りのみ…という極端な小編成となっており、桜井和寿以外のメンバーどこ行った?という意味で、かつてのミスチルらしい(良くも悪くも)スケール感のある派手なバンド演奏で魅せる楽曲はほぼ皆無。
 また楽曲自体としてはポップなメロディーは健在ながら、歌詞の面はメンバーの年代(50歳前半辺り)を意識したかのような年を重ねてきた上での葛藤を綴ったアルバムタイトル曲「miss you」に始まり、落ち着いたカップル、または親子の日常が描かれる楽曲も目立ち(中盤の強烈なアクセント的な「アート=神の見えざる手」は除く)メンバー、特に桜井のプライベート的なテイストを色濃く感じられるのが特徴。バンドがあまり出てこないシンプルな演奏と相俟って、桜井がソロアルバムを作るとしたらこんな感じになるのかな…とも聴いていて思ってしまったのはミスチル作品としてどうなのか、という気持ちはあります。ただ、そんな穏やかさが聴き心地の良さにも繋がっており、ブレイク前後から彼らの音楽を長年リアルタイムで聴いて生きてきた身としては、こういう年相応のミスチルも良いのかもな、という思いを一方で抱いたりもしました。

 なお、フィジカルメディアでの発売は前述の通り10月4日でしたが、サブスク/ダウンロード配信は11月8日開始と発売前から明言。CDパッケージを求めるファン層には先行して、その他ライト層にはCDレンタル解禁ぐらいのインターバルを設けて…という棲み分けは、ミスチルぐらいの大御所じゃないと実現は難しいかもしれませんが、なかなか良い試みだと思いました。