BILLYTHEBESTLIVE 2023年12月20日発売、ビリー・ジョエルのライブベストアルバム。Blu-spec CD2仕様による2枚組全32曲収録。

 公式の純粋なライブアルバムとしては1981年の「Songs in the Attic」、1987年の「Концерт」、2000年の「2000 Years:The Millennium Concert」、2006年の「12 Gardens Live」に続く通算5作目となる本作。これまでのライブアルバムは同時期に開催されたライブツアーからの抜粋が基本でしたが、本作はフィジカル商品としてはビリー・ジョエル史上初となる、70、80、90、00年代からのベストテイクを収録した、オールタイム・ライブベスト。元々は2019年に配信オンリーの全20曲でリリースされていた「Live Through The Years」から楽曲を入れ替え、更に大幅に楽曲を追加し、最新リマスタリングを施すなど、日本独自の企画盤としてのリリースとなったとのことで、「ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!」という邦題も冠されています。過去にもベストアルバム等では日本盤リリースに際して1〜2曲程度は本国アメリカのオリジナル盤と入れ替わっているケースはありましたが、ここまで大胆に楽曲を変更・追加した日本盤は本作が初めてだと思われます。

 DISC 1は1970〜1980年代まで、DISC 2は1990年以降に演奏された楽曲を、基本的にはライブ演奏の時系列順に配置。例外としてDISC 2の冒頭に日本でヒットした「The Stranger」の1982年のニューヨーク公演音源を目玉的に配置しているのは日本独自企画ならではでしょうか。なお、一番古いテイクは1972年のフィラデルフィア公演での「Captain Jack」で、一番新しいテイクは2008年のシドニー公演での「Christmas In Fallujah」と、36年間に及ぶライブ活動の中からの厳選ということもあり、聴き応え抜群。
 選曲はビリーの数々の代表曲を完全ではないものの(「Movin' Out」や「Tell Her About It」は未収録)潤沢に収録し、なおかつDISC 2の中盤まではほぼ楽曲リリース時に近い時期でのライブテイクを採用しており、初期の曲であればあるほどオリジナル音源に近い当時の繊細なボーカルが堪能できます。曲の前後に軽妙なトークで観客の笑いを取るMCも若干収録されているなど、楽曲のみならず彼のステージアクトの楽しさも伝えられる内容。さらに「No Man's Land」「Shades Of Grey」といった通常のベストに入らないレアな曲、初出はEPのカップリングで今回初のCD化となった「You Got Me Hummin'」、先述の「Christmas〜」は日本盤では初お目見えの楽曲等、マニア層へのサービスも嬉しいところ。過去に映像のみでリリースされた楽曲の初CD化を含め、世界初CD化13曲、日本初CD化6曲という大盤振る舞いにも関わらず、CD2枚組で税込3,000円という廉価での販売となっており、代表曲のライブバージョンを聴きたいライトリスナーからコアなファンまで気軽に手に取れる、全リスナー対象のライブアルバムと呼んで良いかも。

 最後に余談ですがビリー・ジョエルといえば、つい先日の1月24日、16年振りに来日し、東京ドームで一夜限りのライブを開催。筆者も出来れば行きたかったのですが、残念ながらチケットが入手できずに泣く泣く断念。巷ではこれが最後の来日と言われているようですが、ビリー自身から公式に発言したわけでもないので、またそう遠くないうちに日本に来てくれることを期待しております。そして来たる2月1日には何と17年振りの新曲をリリースという超ビッグニュースが。リリース形態は配信と本国販売のみのアナログレコード…というのが今どきな感じ(?)ですが、フィジカルCDでも発売してもらえれば必ず買います(笑)。何はともあれ楽しみです。