
メジャーデビュー5年目の2007年に初ベスト「グレイテスト・ヒッツ」、10年目の2013年に仕切り直しのオールタイムベスト「POPMAN'S WORLD」、カップリングベストとして2016年に「POPMAN'S ANOTHER WORLD」、その後は2018年、2020年にコンセプトベスト「スキマノハナタバ」をリリースと、オリジナル音源のベストでも結構な点数が既出のスキマスイッチですが、本作はデビュー20周年を記念し、タイトル通りの「POPMAN'S WORLD」の第2弾としてリリースされた作品。ただ、デビューから10年間のシングル曲・タイアップ曲等をCD2枚に渡って網羅した前作とは異なり本作はDISC-1のみで10年間分をまとめ、DISC-2、DISC-3はメンバーによるオールタイムのセレクションになっているのが特徴。そういった意味では公式サイトでの「POPMAN'S WORLD(中略)の続編とも言える内容」と形容するのが最も相応しい表現なのかもしれません。
DISC-1は「BEST selection -2013〜2023-」。シングル「Ah Yeah!!」から「青春」までの全オリジナルシングルに加え、フィジカルシングルとしてはファンクラブ販売限定だった配信シングルの「up!!!!!!」がアルバム初収録、その他タイアップ曲、既発の楽曲のリメイクバージョン、さらに「藍」「ボクノート」の新録セルフカバー、そして「みんなのうた」で発売月にオンエアされていた賑やかな新曲「アニバースデー」をほぼ時系列順に収めた全15曲。スキマスイッチといえば著名曲が最初の10年(もっと言うとデビューからの5年?)に集中しており、その後も職人的なポップスを作り続けて楽曲的には安定しているものの、今回の収録範囲の10年間では世間にインパクトを与えるような飛び抜けた楽曲が特にない…というのが正直なところで、このディスクも前半は偉大なるマンネリ的な曲が続くのですが、中盤の「ミスターカイト」辺りから攻めた感じの楽曲が顔を出し、近年のトレンドになっているシティポップ的なAOR要素も持ち込んだ「up!!!!!!」等、従来のスキマスイッチ王道楽曲の合間に(彼らにしては)新鮮なアプローチでリスナーにアピールしている姿勢が垣間見れるのは、現状に留まらない姿勢を示しているようで好印象。一方で2曲の新録セルフカバーに関してはストリングスやオーケストラを招き原曲を尊重した再録音だった…というのが良く言えば正当進化的、悪く言えばちょっと保守的かなぁ、とは思いましたが、「POPMAN'S WORLD」2CDの続編部分としてはこの10年分の活動が凝縮(元々最初の10年に比べてリリース点数が激減しているということもありますが…)しており、ライトリスナーが聴くには最適のディスクと呼べるでしょう。
DISC-2は「TKY selection」(大橋卓弥選曲)、DISC-3は「SNT selection」(常田真太郎選曲)と冠されたプライベートベスト。それぞれの収録したい楽曲(DISC-1の収録曲は除外)を1曲ずつ同時に発表し、重複した場合は抽選で決定するという「選曲ドラフト会議」を行い、その結果選ばれた楽曲を収録順も各自で選定した各15曲を収録。ドラフト会議の模様は公式YouTubeにて全三回に渡って公開されており、この曲を選んだ理由や制作当時のエピソードなどがメンバー自らの口から語られる興味深い内容ではありましたが、DISC-1収録範囲外のシングル曲はほとんど選ばれず、アルバム曲やカップリング曲が大半を占めるという超主観的な選曲になったのはプライベートベスト故でしょうか。彼らの作品が出る度に触れてきた筆者としてはどの曲も一度は聴いたことがある曲で、そういえばこんな曲あったな…という楽曲がガンガン出てくる流れでちょっと懐かしい再会感もあり、配信リリースが初出で、フィジカルでは限定生産の通販やライブ会場限定販売のみだった「クリスマスがやってくる」の収録は嬉しいところでしたが、この2枚はコアなファン向けのディープな構成で、「POPMAN'S WORLD」の続編だからと購入したライト層に彼らの楽曲の魅力を伝えるにはこの30曲は選び過ぎで重すぎるな…と正直思ってしまいました。
…というわけでDISC-1は一般向け、DISC-2、3はコアファン向けといった体裁の本作。20周年記念ゆえの重量級ベストアルバムですが、トータルで見ると敷居が高いかな、とは思います。まあ各ディスク毎にサブスクで配信もされていますし、コアファン以外の方にはメンバーセレクト盤を聴いてこれも欲しいな、と思ったら購入をお薦めかなと。フィジカル限定の要素としては歌詞ブックレットにもYouTubeで語っていたようなライナーノーツ的なものがあれば良かったかな、と思います。なお、ブックレットにはロンドンまで出向いて起用したリマスターエンジニアの表記抜け、参加ミュージシャンの名前の誤植など結構やらかしちゃってる箇所も見受けられましたので、今後は気を付けていただきたいものです(?)。
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