beginhibiya 2023年9月20日配信開始、全29トラックを1タイトルとして配信した、BEGINの初となるデジタルライブアルバム。

 2023年の2月から4月にかけて行われた全国ツアー「第26回 BEGINコンサートツアー2023」。その追加公演となった4月30日の公演は日比谷野外大音楽堂での開催。その模様はまず6月にCS音楽チャンネルのMUSIC ON! TVにて2時間プログラムとして放送。その後8月にBlu-ray/DVDでの発売が公式サイトにてアナウンス。そして発売一週間前となる9月13日に、同公演を各音楽配信サイトでも配信することが告知され、9月20日午前0時より配信が開始された…という経緯を辿ったのが本レビューで取り扱う音源。これまでライブベストアルバムを2作、ライブ映像作品も結構な点数リリースしてきたBEGINでしたが、一公演の音源をほぼ丸々デジタル配信するのは今回が初となります。

 今回のツアーのテーマは「ノスタルジア」ということで、選曲は代表曲の他、洋楽・邦楽のカバーや通常のライブではまず演奏されないであろうレアな楽曲も披露されるという、かなり特殊なセットリスト。具体的には洋楽の和訳カバー「もう話したくない」、有山じゅんじのカバー「時代遅れのバースディプレゼント」、かつてシングルのカップリング曲としてリリースされた「Goodby days」「Live in a Town」といったアルバム未収録曲、アルバム曲では90年代末のアルバムから「Little Blue Fish」、一時期は封印楽曲となっていたシングル「灯り」も演奏されるなど、特に序盤から中盤までの流れは昔からのファンが悶えそうな(?)楽曲がズラリ。その合間に有名曲のカバーや「恋しくて」「防波堤で見た景色」などの代表曲も披露されてある程度バランスが取られているのですが、当日野音の大会場にいつものノリのBEGIN目当てで観に来たお客さんの反応が気になる内容でもあります(笑)。
 後半は一転して「笑顔のまんま」「ボトル二本とチョコレート」で会場を盛り上げ、近年のシングル「黄昏」を披露しつつ、アンコールでのヒット曲を含む10曲を30分近いメドレーで繋いで一気に演奏するボルテージ全開のマルシャ ショーラコーナーを経て、最後は恒例の「島人ぬ宝」で締める、というスタンダードな展開になっており、前半は「静」、後半は「動」と、BEGINのマニアックな面とメジャーな面をひと公演で味わえる2ステージ的な構成のかなり美味しいライブだったのではないかと思われます。こういう公演内容と事前に知っていたら、筆者も行っておけばよかった…と非常に後悔し、そして羨ましがっております(苦笑)。

 バンドメンバーはBEGINの三人に加え、ベースの迎里中、ドラムスの目次敬之、バイオリンの渡邉栞 、そしてサイドギターの比嘉舜太朗(ボーカル比嘉栄昇の実子)の総勢七名での大所帯。原曲がメンバー三人のみのシンプルな編成だった曲に関しても、生演奏ならではの絶妙な揺らぎ具合のバンドアンサンブル的な味付けが加わり、新鮮に聴ける曲もありました。中盤には舜太朗の在籍するバンドHoRookiesのオリジナルである「結の唄」が彼のボーカルで披露されたようなのですが、権利の関係か今回の配信には含まれず、映像作品のみ収録となっている模様。また、CSで先行して観た感じでは彼ら独特のMCも潤沢だったのですが、ライブ配信アルバムということでこの部分は全面カット。なので曲間の繋がりもフェイドアウト、フェイドインが多用されており若干不自然な箇所もありますが、あくまで配信は楽曲のみ、完全版は円盤を買ってね、ということ(正しい判断だと思います)なのかも。映像までは…という筆者ぐらいの案配のファンには大変有難い配信となりました。