
2019年末に第5期として再始動したWANDS。2020年10月発売の前作より約2年10ヶ月振りとなる本作には、前作以降に発売されたフィジカルシングル「カナリア鳴いた頃に」「YURA YURA」「RAISE INSIGHT」、デジタルシングル「愛を叫びたい」「世界が終るまでは… [WANDS第5期ver.]」に加え、シングルのカップリングとしてリメイクされた「MILLION MILES AWAY [WANDS 第5期 ver.]」を収録。なおメンバーである柴崎浩の発言によると、「RAISE〜」以外のシングル関連曲は本作収録に際し、自らトラックダウンをやり直したとのこと。また、「カナリア〜」発売前の2021年4月にコロナ禍による心身の体調不良により木村真也が活動を休止しており、本作のジャケットにはメンバー三人揃った写真が掲載され、ブックレットにもメンバー欄にKeyboardとして木村の名前は表記されているものの、各演奏のクレジット(後述)を鑑みると、実質は柴崎と上原大史の二人体制でまるまる制作されたアルバムということになっているようです。
そんな本作は、既発のシングル曲も含めて1曲目から10曲目までが第5期のオリジナル曲。それ以降が過去曲のセルフカバーという流れになっており、オリジナルとカバーが入り乱れていた前作から一転して、第5期WANDSのオリジナリティを前面に出してきた構成。楽曲自体も既にシングル曲の時点から、世間一般的な「WANDSらしい」アプローチから一線を画した楽曲を発表していたわけですが、今回6曲収録された新たなオリジナル曲に関してもそれは同様。メインコンポーザーである柴崎作曲によるロック…というよりもメタル寄り?の「We Will Never Give Up」、切なくもポジティブな雰囲気のメロディーが特徴のミディアム「空に向かう木のように」、上原が作詞のみならず作・編曲も手掛けた「WONDER STORY」「SHOUT OUT!!」といったサウンドコンセプトが好対照の楽曲等、過去の焼き直しでは終わらない、現在進行形のWANDSを改めて1枚のアルバムにまとめて提示しており、そういった意味では本作が真の意味での「第5期としてのデビューアルバム」と呼んでいいかも。
サウンド的には基本的には打ち込みバンド仕様となっており、All Instrumentsとクレジットされた柴崎に加え、上原も自作編曲ではギター(柴崎担当)以外のAll Instrumentsとしてクレジットされ、木村不在の中での「二人のWANDS」として集大成的なものはほぼやり切ったのではないか、と思えるほどの充実度。ここに現時点では復帰未定ではありますが、楽曲制作の実績のある木村が戻ってきた時こそが真の意味(三人)での第5期WANDSになるのではないかと。道程は長いかもしれませんが、「三人揃ったWANDS」で踏み出す一歩を待っています。
通常盤のボーナストラックは「ありふれた言葉で [Acoustic Version 5.0]」。「恋せよ乙女」のカップリングとして1993年にリリースされ、後にベストアルバムにも収録されたバラードをボーカル、アコギ、ピアノというメンバーのみのライブ演奏を前提としたようなアレンジでセルフカバー。2コーラス目がカットされて尺はややコンパクトになっていますが、オリジナルの時代性を感じる音色を取り除いて普遍的な音像に生まれ変わっておりなかなかの好リメイク。なお、この曲はサブスク配信での通常盤の中から除外されており、CD以外の媒体では聴けないようです。フィジカル購入組への特別サービスといったところでしょうか。聴きたい方は購入またはレンタルで是非。
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