t-bolancompletesingles 先日リリースされたT-BOLANの2枚組新作ベストアルバム「T-BOLAN COMPLETE SINGLES 〜SATISFY〜」。2回に分けての全曲レビューは今回が後編。1994〜1996年までの全シングル、再結成後にリリースされたアルバムリード曲やDVDシングル、配信シングルを収めたDisc 2の全12曲をご紹介いたします。




「T-BOLAN COMPLETE SINGLES 〜SATISFY〜」
全曲レビュー・Disc 2編



1.LOVE
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・葉山たけし
 1994年5月11日発売、11thシングル。テレ朝系ドラマ「彼と彼女の事情」主題歌。
 T-BOLAN王道のロッカバラード。平メロとサビを間奏のギターソロを挟んで交互に繰り返すコンパクトな展開になっており、演奏時間は4分半とバラードにしてはやや短めだが、各メロディー自体も短く、極力余計なものを削ぎ落とした構成が光る。歌詞はラブソングなのだが、「お前を守る」系ではなく、相手に安らぎや甘えを求める主人公は彼らのシングルにしては珍しいか。セールスは前作の約40万枚から巻き返し60万枚近くまで回復。簡素な構成ゆえに耐久度が高く、聴き飽きない良曲。

2.No.1 Girl
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 11thシングルカップリング曲。
 ブラスのリフが印象的なアッパーなサウンドに乗せて、小悪魔的な女性を茶化しつつそんな彼女に夢中(大意)といった若干コミカルな楽曲。ジョディー・フォスター出演のホンダ「シビック・フェリオ」CMソングというタイアップが付いたが、発売当時はあくまでカップリング曲扱いで、「傷だらけを抱きしめて」とは異なり1996年の「SINGLES」には未収録で、1999年の解散ベスト「FINAL BEST GREATEST SONGS & MORE」が初のアルバム収録。その後は2010年の「LEGEND」にも収録、シングルベストを謳った本作にも収録されるなど、カップリング曲の中での扱いは「Hold On My Beat」(「悲しみが痛いよ」c/w)と好待遇ぶりで一、二位を争う。

3.マリア
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 1994年9月5日発売、12thシングル。フジ系ミニ番組「oioi TOKYO TASTE Rooms」エンディングテーマ。
 約1ヶ月前の8月発売のミニアルバム「夏の終わりに 〜Lookin' for the eighth color of the rainbow〜」にて新曲にも関わらずAcoustic Versionとしてバラードアレンジで発表された楽曲(編曲:T-BOLAN・葉山たけし)を完全別アレンジのビートの効いたアップテンポナンバーとしてシングルカット。「泣かないで僕〜のマリア」というサビのキャッチーなメロディーが強力で80万枚近くを売り上げ、「Bye For Now」「おさえきれない この気持ち」に次ぐT-BOLAN歴代3位のシングルセールスを誇る。「君の心の色 にじませた 罪だけがただ苦い」等、どこか相手を苦しめたことに対する懺悔のようなフレーズが登場するのが意味深(?)なラブソング。なお、Acoustic Versionは完全演奏シーンのフルMVが制作されたが、シングルバージョンの方はあり合わせの動画を組み合わせたショートMVしか存在しない。

4.SHAKE IT
 作詞:森下桂人 /作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 1995年8月28日発売、13thシングル。テレ朝系バラエティ「チャンネル99」エンディングテーマ。
 「マリア」以降作品リリースがなく、約1年振りの新作。サイケデリックな猫のイラストジャケット、細かいカット割りに情報量多めの凝ったMV、生音(特に乾いた感じのドラム)を強化した野心的な楽曲。このブランクの間に森友が喉に異変をきたしたことが後年になって公式発表されたが、当時は次の展開に向けて試行錯誤して出してみた実験的作品扱いをされていた記憶がある。セールスは25万枚程度と大幅に落ち込んだこともあり、あまり彼らの代表的な楽曲とは呼べないか。ベストにも他のヒットシングルと比べて選曲率は低いが、個人的にはこのクセの強さが結構好きだったりする。

5.愛のために 愛の中で
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・葉山たけし
 1995年11月20日発売、14thシングル。テレ朝系「トゥナイト2」エンディングテーマ。
 彼らの中では珍しく、広義な意味での「愛」を大上段に歌った壮大なテーマの作品。サビ頭のタイトル部分にはコーラスが重ねられており、ライブで披露されれば会場が一体になりそうなピースフルな雰囲気の楽曲である。これは森友の喉の不調をフォローするための苦肉の措置だったのかもしれないが、歌詞のテーマとマッチした好判断のアレンジがハマっており、楽曲自体も名曲だと思う。「SHAKE IT」と同程度の売上に終わったが、ベストアルバムでの扱いはこちらのほうが上。

6.Be Myself
 作詞:森友嵐士/作曲:森友嵐士・五味孝氏/編曲:T-BOLAN・池田大介
 1996年3月25日発売、15thシングル。
 明石昌夫・葉山たけしに次いでビーイング内で頭角を現してきた池田大介が編曲に初参加。「SHAKE IT」以上に90年代中盤以降の時流に合わせた生のロックサウンド重視の爽快なアップテンポナンバーで、王道のサビに対してAメロBメロは地を這うようなメロディーとなっており好対照。T-BOLAN活動末期の佳曲だと思うのだが売上は10万枚を切るという事態に。同年8月の初ベスト「SINGLES」には未収録、初のアルバム収録は解散時の「FINAL BEST GREATEST SONGS & MORE」まで3年半待たされた。テレ朝系「オリンピッククイズ 燃えろ!アトランタ王」オープニングテーマ。 

7.Heart of Gold 1996
 作詞:森友嵐士/作曲:川島だりあ/編曲:T-BOLAN
 15thシングル両A面曲。テレ朝系「オリンピッククイズ 燃えろ!アトランタ王」エンディングテーマ。
 原曲は2ndシングル「離したくはない」のカップリングとして初出。1992年の「夏の終わりに 〜Acoustic Version〜」でアコースティックリメイクされ、今回が2度目のリメイク。オリジナル(編曲:T-BOLAN・明石昌夫)のキラキラしたシンセ色を完全に廃し、新たなリフを追加、演奏も渋めのバンドスタイルに変更になるなど円熟味が一気に増した。派手なオリジナルの音源に慣れていた当時はえらく渋くなったな…と思っていたが、現代にも通じる普遍的なアレンジが馴染むにつれ、むしろこの曲の完成形はこっちなのではと思うぐらいに気に入ったバージョンとなった。
 夢を諦めない前向きなメッセージソングということもあり、オリジナルバージョンの時点で既にファン人気は高かったのだが、「〜1996」に関しては扱いが非常に悪く、本作に収録されるまで一度もアルバム収録の機会がなかった(2014年の全曲BOX「T-BOLAN THE COMPLETE」でもスルー)本ベストの最大の存在意義はこの曲かも。

8.ずっと君を
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・葉山たけし
 2017年8月16日発売、ベストアルバム「〜夏の終わりに BEST〜 LOVE SONGS+1 & LIFE SONGS」収録曲。
 「Be Myself」以降は活動が停止し、メンバー非稼働のベスト発売やリミックス展開を経て、1999年末に解散を発表。時が経ち2012年のビーイング主導の企画ツアー「BEING LEGEND」の開催に際して再結成を発表し、メインアクト的な立場で完走するも、新作リリースのないまま2014年4月末のライブで活動休止を宣言。その後、2015年3月にベースの上野博文が大病に倒れるもリハビリを経て2016年のカウントダウンライブ開催が実現。2017年より本格的に活動再開。同年夏のベストアルバムの新曲として、未発表曲の蔵出しを除けば実に21年振りとなる新曲。
 既にT-BOLANの一般的イメージとなっていた熱唱バラードに正面から取り組んだ楽曲。活動全盛期当時のままではなく、歌詞には年月を重ねた分の渋さを感じさせる。復活第一作としては安心安定のナンバーだと思う。強いて言うのであればストリングスがシンセっぽい音色なのが少し残念。

9.Re:I
 作詞:森友嵐士/作曲:五味孝氏/編曲:T-BOLAN
 2018年10月17日発売、DVDシングル。
 当時生誕80周年を迎えた石ノ森章太郎(故人)作の漫画作品「サイボーグ009」とのコラボレーション楽曲。コラボ先に寄せたのかT-BOLANらしからぬデジタルエフェクトをコラージュしたロックナンバーで、森友のボーカルも終始加工されているなど若干異色作である。一般的な彼らのイメージ(熱唱バラードか生音ロック)からは距離を取った楽曲なのだが、中毒性が高く個人的には結構好きな曲。
 MVではT-BOLANの演奏と「サイボーグ009」のイラストとのコラボレーションが実現。映像×音楽のイーブンな掛け合いを目指したのか、DVDシングルというニッチなメディアでのリリースのみとなっていたが、2022年の6thアルバム「愛の爆弾=CHERISH 〜アインシュタインからの伝言〜」にてようやくCD音源化が果たされた。

10.俺たちのストーリー
 作詞:森友嵐士/作曲:五味孝氏/編曲:T-BOLAN
 2020年2月5日発売のライブDVD「T-BOLAN 30th Anniversary LIVE Tour「the Best」〜励〜」に同梱されたシングルCDに収録。
 Amazon Prime Videoで展開され、後に関西エリアで地上波放送もされた、藤沢とおる原作漫画「湘南純愛組!」実写ドラマ版のオープニングテーマ。久々に純ロックサウンドでのT-BOLAN的楽曲に仕上がっており、活動全盛期の90年代中盤辺りからの地続きを感じさせるが、詞曲のテイスト的にはちょっと80年代末っぽいかも。
 DVDを購入しないと手に入らないシングルCD、という販売方法には当時疑問だったが、ドラマの地上波放送が開始された同年11月26日にデジタルシングルとして配信販売が行われている(Apple Musicにはシングル単位でのサブスク配信はないので購入オンリーの模様?)。

11.My life is My way 2020
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN
 「俺たちのストーリー」両A面曲。ドラマ「湘南純愛組!」主題歌で、「俺たち〜」同様デジタルシングルとしても配信された。
 1992年の3rdアルバム「SO BAD」収録曲のセルフカバーバージョン。アップテンポな原曲から一転、バラードアレンジとしてリメイクされた。キーを下げ、テンポを大幅に落としたリメイクは「泥だらけのエピローグ」でもかつて用いられた手法だが、歌詞がすべて日本語の「泥だらけ〜」と異なり、サビの頭が「Wow Wow Wow Wow」のこの曲ではこの部分が若干浮いてしまっている印象。とはいえ、夕焼けの情景を彷彿とさせるピアノとエレキギターのアンサンブルで切々と始まり、徐々にバンドインして盛り上がっていき最後は大合唱になるこのアレンジ版も悪くない。

12.愛の爆弾=CHERISH 〜アインシュタインからの伝言〜
 作詞:森友嵐士/作曲・編曲:五味孝氏
 2022年3月14日発売、6thアルバム「愛の爆弾=CHERISH 〜アインシュタインからの伝言〜」収録曲。
 アルバム発売前後のコメント等で、実在の著名物理学者であるアルベルト・アインシュタインが娘に宛てた手紙(諸説あり)に森友が触発されたというエピソードが語られており、手紙の真偽はともかく森友のアルバム制作へのモチベーションになったことは確かで、約28年振りとなるオリジナルアルバムをリードするメッセージ性のあるエネルギッシュな楽曲となった。「愛の爆弾」とか「魂に火をつけろ」とか、歌詞で妙にどこか他で聴いたことがあるフレーズが出てくるのは意図的なものか(?)。なお、前年8月末にドラムスの青木和義が家業との兼ね合いでT-BOLANとしての表舞台での活動の休止を発表。本アルバムの制作にどこまで関わっているかは明確には触れられていない。