t-bolancompletesingles 去る2023年8月16日にリリースされた、T-BOLANの2枚組ベストアルバム「T-BOLAN COMPLETE SINGLES 〜SATISFY〜」。1996年発売の「SINGLES」のアップデートバージョンといった内容で、デビューから解散、再結成を経て現在に至るまでのオリジナルのシングルタイトル曲を一挙に網羅した初のアイテムとなります。今回の「CD Review Extra」では、2回に分けて各ディスクを1曲ずつレビュー。本エントリーは前編として1991年〜1993年までにリリースされたDisc 1の全11曲をご紹介いたします。


「T-BOLAN COMPLETE SINGLES 〜SATISFY〜」
全曲レビュー・Disc 1編



1.悲しみが痛いよ
 作詞・作曲:川島だりあ/編曲:西田昌史
 1991年7月10日発売、デビューシングル。テレ朝系ドラマ「代表取締役刑事」エンディングテーマ。
 デビュー当初からメンバー(ほぼ森友嵐士)自作の楽曲制作だったT-BOLANだが、デビュー曲は完全外部提供となった。久し振りに再会した友人が変わってしまったことを嘆くアウトロー的な歌詞で、「大人」=「死体」という表現はなかなかに衝撃的。切ないテーマのナンバーなのだが、アレンジはビートの効いたドラムがどっしりとしたフレーズを奏でる結構明るめの雰囲気なのが若干合っていない感も。1994年8月のミニアルバム「夏の終わりに 〜Lookin' for the eighth color of the rainbow〜」で渋めにアコースティックリメイクされ、そちらの方が歌詞の雰囲気にマッチしていたと思う。

2.離したくはない
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:西田昌史
 1991年12月18日発売、2ndシングル。
 先月発売のデビューアルバム「T-BOLAN」からのシングルカット。複数のタイアップが付いたが、パリ・ダカールラリーのタイアップに合わせてか、1番Bメロ全部とサビの一箇所が前向きな内容に書き直されている。「諦めるよりも信じることに賭けてみる〜」というフレーズを個人的にかなり気に入っているので、オリジナルよりもシングルバージョンのほうが好きだったりする。ロングセラーとなり、発売から約1年後の時点でも「COUNTDOWN 100」(後のCDTVの前身的なランキング番組)のTOP100紹介コーナーにランクインしており、サビの部分のMVが流れていたのをよく観ていた記憶がある。最終的に50万枚近く売り上げ、一躍T-BOLANの知名度を広めた出世曲、というのが1999年の解散までの認識だったと思うが、21世紀になって森友がソロでセルフカバーしたり、メディアで歌ったりするT-BOLANの曲がほぼこの曲ということもあり、今や世間一般的に一番T-BOLANで有名な曲かもしれない。
 なお、1992年4月の2ndアルバム「BABY BLUE」にアコースティックバージョンが、1996年12月の「BALLADS」にピアノ一本の未発表独唱テイク(Out Take 1992.3.2)が収録された。

3.JUST ILLUSION
 作詞:高樹沙耶/作曲:織田哲郎/編曲:明石昌夫
 1992年2月26日発売、3rdシングル。
 初の織田哲郎提供楽曲…というよりも、作詞をなぜか女優の高樹沙耶が担当していることが目を引く1曲(テレ朝系ドラマ「真夜中は別の顔」挿入歌だが彼女は出演していない模様)。この前後に彼女がビーイング所属のアーティストに作詞を提供しておりその流れか。エレキ成分多めながら打ち込みっぽいオケのサウンドで、明石昌夫ならではのオーケストラヒットも連打されるので、90年初頭の類型的なビーイングの音…といった聴き心地である。アルバムには「BABY BLUE」に一度収録されて以降、数あるベストアルバムに完全スルーされており、オリジナルシングル曲の中では圧倒的に不遇な感があったが、本作にてようやく収録された。

4.サヨナラから始めよう
 作詞:森友嵐士/作曲:織田哲郎/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 1992年5月27日発売、4thシングル。
 連続での織田哲郎提供楽曲となったが今回は森友が作詞。織田らしいスケールの大きいメロディーとカラっとした元気なバンドサウンドが、前向きな別れの歌詞にマッチした爽やかさを醸し出している佳曲。同年9月のミニアルバム「夏の終わりに 〜Acoustic Version〜」では哀愁を強調したアコースティックバンドアレンジでリメイクされたが、こちらも味わい深く甲乙つけ難い。翌年には織田自身も「SONGS」でセルフカバーを発表している。
 20万枚を売り上げるスマッシュヒットとなり、T-BOLANというアーティスト自体に世間の興味が向いてきたネクストブレイク状態に突入。この「ブレイク前」というのがネックなのか、ベスト盤では選曲されたりされなかったりと他のヒット曲よりもやや扱いは低いか。テレ朝系「トゥナイト」エンディングテーマ。

5.じれったい愛
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 1992年9月22日発売、5thシングル。
 ロッテ「エクストリアチョコレート」のCMソングとしてお茶の間で大量オンエアされていた。超キャッチーな「じれった〜い」のサビから始まる強烈なインパクトのあるロックナンバーで、これは結構売れるんじゃないか…と思っていたら、オリコンチャート初登場2位、トータルで70万枚近く売り上げて一気にブレイクを果たした。ここまで売れるとは正直予想外だったが、同時期の大黒摩季の「DA・KA・RA」と共に、翌年のビーイングブームへの第一走者的な役割を果たした楽曲だと思う。6年後の活動休止中に本人非稼働のリミックス展開がなされた際に、リード楽曲的に「じれったい愛'98」としてシングルリリースがされている(編曲は徳永暁人名義)。
 余談だが、この曲の影響で「うざったい」という形容詞が一躍全国区になった、という説(?)があるとかないとかだが、当時筆者の周辺(同級生など)ではこの曲で「うざったい」という言葉を知ったという反応が多数だったので、あながち虚説ではないような…気もする。

6.Bye For Now
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 1992年11月18日発売、6thシングル。
 3rdアルバム「SO BAD」の一週間後という超速ペースでのニューシングル。旅立つ相手にエールを贈るミディアムロックで、「素敵な別れさ〜」と「Oh Bye For Now〜」で始まる2種類のサビと平メロで構成された変則的な楽曲。フジ系ドラマ「ウーマンドリーム」主題歌となり、ブレイク直後の勢いもあってT-BOLANのシングルでは唯一のミリオンセールスを達成。つまり最大のヒット曲なのだが、解散〜復活後の流れでは「離したくはない」一強の知名度になってしまい、あまり陽の目を浴びせていないのが残念なところ。
 なお、本作よりデビュー当時から所属していたROCK IT RECORDSからビーイング直営のZAIN RECORDSへ移籍。これ以前の作品も後にZAIN RECORDS規格で再発されている。

7.おさえきれない この気持ち
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 1993年2月10日発売、7thシングル。テレ朝系ドラマ「いちご白書」エンディングテーマ。
 「離したくはない」以来の直球バラードシングルで、サビ頭の「おさえき〜れなぁ〜い」のフレーズと歌い方のインパクトが強烈に耳に残る反面、相対的に他のメロディーは結構普通…という印象で、「離したくはない」と比べると楽曲完成度的には一歩譲るといったところか。本作で初のオリコンシングルチャート首位を獲得している。

8.すれ違いの純情
 作詞:森友嵐士/作曲:織田哲郎/編曲:T-BOLAN・葉山たけし
 1993年3月10日発売、8thシングル。
 二ヶ月連続リリースとなったがこちらは織田哲郎提供曲。失恋の後悔を綴ったミディアムバラード。主人公が未練タラタラな感じなので切ないというよりちょっと女々しい…というのが正直な感想なのだが(苦笑)、シングルタイトルでは初の参加となる葉山たけしのビーイング的なキラキラしたシンセサウンドが上手く中和しており、歌詞のテーマの割りに聴き心地は良い。翌年8月の「夏の終わりに 〜Lookin' for the eighth color of the rainbow〜」では、同じ編曲体制でのアコースティックバンドスタイルでリメイクされた。坂井真紀出演のカセットテープ「AXIA」のCMソング。

9.刹那さを消せやしない
 作詞:森友嵐士/作曲:森友嵐士・五味孝氏/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 1993年6月16日発売、9thシングル。
 同年に開幕して大ブームを巻き起こしていたJリーグの情報番組「Jリーグ A GOGO!!」のテーマソングのタイアップ。サッカーとは関係ない歌詞の内容だが、各メロディーの流れが自然で聴きやすく、激しすぎずで適度なビートのノリも出ている良い意味で優等生っぽい楽曲。なお、サビで森友の上をツインボーカル的にハモっているコーラスは宇徳敬子(この年にMi-Keから本格的にソロデビュー)が担当。彼女は他のT-BOLANの曲にもコーラスで参加実績があるが、ここまでピンでの歌声がフィーチャーされたのはこの曲が随一では。
 なお、本作は4thアルバム「HEART OF STONE」からちょうど三週間後の発売。去年下半期から1年でシングル5枚、アルバム2枚、ミニアルバム1枚という怒涛のペースだったが、ひとまずここでこのハイペースぶりは落ち着きを見せる。

10.傷だらけを抱きしめて
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 9thシングル両A面曲。萩原聖人出演の大塚製薬「ファイブミニ」のCMソングに起用。
 アルバム曲で時々出てくるビートロックをシングルで切った、という感じの非常にノリの良い楽曲で、ライブの盛り上げ用に大きく貢献しそうなハイテンポナンバー。ジャケットから完全に「刹那さを〜」とのイーブンな両A面という扱いがされており、基本的にシングル2曲目はスルーされるアルバムにも同年12月の5thアルバム「LOOZ」に収録、1996年の「SINGLES」や、各ベスト盤にも他のシングル曲と対等に収録されているなど好待遇。

11.わがままに抱き合えたなら
 作詞・作曲:森友嵐士/編曲:T-BOLAN・明石昌夫
 1993年11月10日発売、10thシングル。テレ朝系ドラマ「愛してるよ!」オープニングテーマ。
 T-BOLAN王道のビートロックが展開されるのだが、コード展開の影響か熱いながらも以前よりもどこか翳りを見せる印象。当時は全く想像していなかったが、後に語られる制作上の疲弊が徐々に表れてきた感じか。この時期は夏に盛り上がりを見せたビーイングブームも大量の新人投入、積極的リリースの弊害で飽和から収束に向かいつつあり、これまで70〜80万枚台で推移していたシングルの売上が一気に40万枚に落ち込むなどT-BOLANも結構ブーム収束の影響を受けたような気がする。ベストアルバムには基本的に収録されているので彼らの代表曲の一つには間違いないが、知名度的には前後の楽曲と比べるとやや控えめか。


(以下、後日更新予定のDisc 2編へ続きます)