
レミオロメン時代の楽曲をソロ名義でカバーした前作からは3年7ヶ月ぶり、オリジナルアルバムでは2017年発売の3枚目以来実に約5年半ぶりという久々のフィジカルメディアでのリリースとなった本作。といってもその間に活動が止まっていたというわけではなく、配信でコラボシングルをリリースしたり、自身主催の野外イベントを年一回ペースで開催していたり、3月9日が近づくと毎年記事で紹介され本人がメディアに出演したり…と、マイペースながら地道な活動を続けており、本作もこんなに待たせて…と思うよりは、ちょいちょい活動は見かけるけどそういえばアルバム出してなかったなぁ…という感じ(笑)。ただ前述の通りフィジカルリリース自体は久々なので、2019年以降の単独名義での配信シングルもほぼ収録され、ここ数年間のリリース活動の網羅的な内容にはなっていると思います。
アルバム本編(DISC 1)は発売当時のインタビューでも語られているように、エレキ・アコギを問わずにギターサウンド(藤巻本人が全曲演奏)が存在感を示した楽曲が多数収められ、ドラマーやベーシスト、曲によってはバイオリニスト等を招き、生演奏主体となる時代のトレンドに左右されない普遍的なロックサウンドが全編を通じて展開。この辺りはレミオロメン時代から続く藤巻のこだわりでしょうか。今回はその上で前向きな歌詞に寄せた明るめのサウンドメイキングとなっており、タイトル曲「Sunshine」を筆頭にここまで風通しの良いアルバムは彼のソロ作品の中では初めてかもしれません。前々から何度もインタビュー等で語っているように、元々ソロ活動を始めたきっかけはレミオロメンの中では消化できなかった精神的なものを吐き出すため(大意)だったわけですが、その後の試行錯誤の中でバンドとソロとの境界を意識する葛藤からは解放されて現在に至る…という経緯を踏まえて聴くと、かつて「粉雪」でブレイク後、妙に明るい路線の曲がメインになって何か筆者が求めているものと違う…という違和感があった時とは異なる、地に足を着けた説得力のあるポジティブさを感じました。ただ、構成的には「ゆけ」「オウエン歌」のような軽快かつ元気な曲が最後まで続き、バラードらしいバラードが1曲もないので、そういう曲が少しあればバランスが良かったかな、とも。
初回限定盤のDISC 2は「ソロ10周年記念ベスト」。2012年のソロデビュー後にリリースされた各シングル・セルフカバーを含むアルバムの中からの選曲に加え、初フィジカル化となる2019年の配信カバーシングル「ウイスキーが、お好きでしょ」、配信シングル「Summer Swing」を収録した全16曲。なので実質は2012〜2019年までのベストなのはご愛嬌(?)。選曲はシングル重視というわけではなく収録の漏れたシングルタイトル曲も結構ありますが、まあこのアルバムからはこの曲が選ばれるよね、といった最大公約数的なセレクトで特に文句はなし。曲順は基本的にリリース順になっているということもあり、先述のソロ開始→迷い→吹っ切れ→レミオロメンの曲を自身でカバー、という流れがダイジェストで分かりやすく、ラストをノスタルジックながら後ろ向きにならず開放的な「Summer Swing」で締めたことでDISC 1に収められた2019年以降の楽曲に繋がっていくという点で良い構成だと思います。
ただし、「3月9日」(2017年リリースの配信版)「粉雪」のセルフカバーが入っているとはいえ、ソロで特に名刺代わりの曲を出したわけではない期間のベストということで初心者には正直薦めにくい内容で、このDISC 2がサブスク配信されていないのは、どちらかと言えばライトリスナーへの入門編というよりもこれまで応援してくれたファンへ向けた初フィジカル化2曲を含めたプレゼント、というコンセプトなのかも。求めやすい通常盤+1,000円という価格帯も既出音源所持者への配慮なのかもしれません。通常盤の内容だけで良いか、初回限定盤が欲しいかどうかは、リスナーそれぞれのニーズにお任せいたします。
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