sukimatop 大橋卓弥(Vo/G・他)、常田真太郎(Pf・他)の2人組ポップスユニット・スキマスイッチ。インディーズでの活動を経て、2003年7月9日にシングル「view」でメジャーデビュー。「奏(かなで)」「全力少年」「ボクノート」といった代表曲を持ち、他アーティストへの楽曲提供やプロデュース活動など、21世紀の日本のポップスシーンに確固たる地位を築いてきた彼らは今年でメジャーデビュー20周年。今回の「Artist Archive」では、2003年から2007年までにリリースされた彼らの全アルバムを1枚ずつレビューいたします。


メジャーデビュー20周年記念・スキマスイッチ 2003-2007 全アルバムレビュー


君の話
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 2003年9月17日発売、メジャーデビューミニアルバム。全6曲収録。
 表題曲の「君の話」と、デビューシングル「view」(オーヴァードライブMIX)を核とした彼らの音楽性のお披露目的なミニアルバム。ボーカル、アコギ、ピアノを軸にした演奏スタイルはデビュー作にしてほぼ固まっており、「太陽」「ただそれだけの風景」等、後年の名バラード群のプロトタイプ的な楽曲が収録されているのに対して、ジャケットや歌詞ブックレットのアートワーク方面ではまだ小慣れない感じで試行錯誤が見られるのが面白い。まさに彼らのビギニング的な一作。


夏雲ノイズ
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 2004年6月23日発売、1作目のオリジナルフルアルバム。全12曲収録。
 初回生産限定盤は紙ジャケット仕様に加え、収録シングル曲他のMV、メンバーのインタビュー等が収録されたDVDが付属。このフォーマットは3作目までデザインも含めて引き継がれた。「view」「奏(かなで)」「ふれて未来を」の3枚のシングルに加え、前作表題曲「君の話」(エヴォリューションMix)も収録。
 事務所の先輩である山崎まさよしがアコギで参加したオリエンタルなバラード「桜夜風」、Mr.Childrenのドラマーである鈴木英哉が参加した軽快な「キミドリ色の世界」等、ゲストも含めて機材適所にプレイヤーを動員してスキマスイッチ=生音中心で聴かせるポップスという音楽観がこの時点で早くも完成。ファンク全開の「螺旋」、メンバーのみでの演奏の失恋バラード「ドーシターコースター」等、シングルほどのインパクトではないもののアルバム曲も佳曲が多い一方で、中盤辺りまでのテンションが後半になると曲調もあってかマッタリ気味になり、後半部分があまり印象に残らないという点もある。
 なお筆者は「奏(かなで)」を人づてに聴いて彼らの曲に初めて触れ、「ふれて未来を」をレンタルで借りてアーティストとしての興味を持ち、本作を発売日数日後に今は無き地元のCDショップに買いに走ったという記憶がある。そんなエピソードも含めて彼らとの出会いの一作として思い出深い作品。


空創クリップ
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 2005年7月20日発売、2作目のオリジナルフルアルバム。全11曲収録。
 前作以降のシングル「冬の口笛」(アウトロで大橋のハーモニカソロを加えたfeat. Takuya ver.)、「全力少年」「雨待ち風」(ストリングスのフレーズをイントロに追加したAlbum ver.)3曲に加え、前年にw-inds.に楽曲提供した「キレイだ」のセルフカバーを収録している。
 「全力少年」がヒットする中のブレイク途上でのリリースということも手伝って、オリコンチャート初登場1位を獲得。彼らのオリジナルアルバムの中では最高のセールスを誇る。2曲目に配置されたその「全力少年」が他のシングル曲と比べても強く、その後は地味な曲が続くので前半の印象はあまり強くないが、中盤の「キレイだ」以降はノスタルジー系の「かけら ほのか」山弦による両サイドからのアコギの演奏も物悲しいバラード「目が覚めて」、CMタイアップの付いた「飲みに来ないか」と強力なラインナップが次々登場するので、楽曲のバリエーションでは前作に一歩譲るものの、アルバムを聴き終わった後の満足感は前作より上だと思う。


夕風ブレンド
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 2006年11月29日発売、3作目のオリジナルフルアルバム。全13曲収録。元々は11月前半発売予定だったのが延期になった記憶がある。
 「ボクノート」「ガラナ」「アカツキの詩」(共にalbum ver.)のシングル3タイトルに加え、カップリング曲「スフィアの羽根」(album ver.)を収録。さらに同年夏に福耳に提供・プロデュースを行った「惑星タイマー」はオーケストラによる完全新規のalbum ver.でセルフカバー収録。なお中盤でピアノとストリングスによるインスト「空創トリップ」が登場するのが異色の構成。
 実質アルバムのリード曲である冒頭の「藍」がいきなり渾身の名バラード。その後は勢いのあるシングル曲が続き掴みは十分。小田和正がコーラス+コーラスアレンジにも参加したカントリー調の「月見ヶ丘」、ダウナー系の「ズラチナルーカ」、久々のファンク路線「アーセンの憂鬱」、締めはメンバーのみの演奏の「1+1」と、収録シングルのインパクトが前作より薄めな分、アルバム曲に目立つ楽曲が多く、配置のバランスも良好。これまでのアルバムの中で一番の構成力を感じる1枚。


グレイテスト・ヒッツ
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 2007年8月1日発売、初のベストアルバム。全15曲収録。初回限定盤は外箱入り仕様。
 デビューからの全シングルタイトル曲、アルバム主要曲にセルフカバー曲等を基本的に時系列順にリマスターして収録したオールタイムベスト。当時の最新シングル「マリンスノウ」がアルバム初収録、他のシングル曲もオリジナルバージョンで収録されている。「惑星タイマー」は福耳バージョンのトラックで大橋が単独ボーカルを担当した未発表バージョン。
 「奏(かなで)」「全力少年」「ボクノート」と、各オリジナルアルバムに散らばった彼らの代表曲が一気に手に入るという優秀なベストアルバム。デビュー5年の時点でベストアルバムはまだ早いと当時は思っていたのだが、アルバム1枚に収まる形でここまでの彼らの軌跡をシングル曲以外にもひとまとめにしたアイテムとして非常にコストパフォーマンスは高い。ただ、デビュー満10周年時の2013年にデビューから10年間分の2枚組オールタイムベストが登場しており、DISC 1には本作の内容に「藍」を加えたより完全版的な内容が収められてしまったので、後追いで彼らの足跡を辿るにはそちらを薦めるが、スキマスイッチの有名な代表曲が聴ければよい、2枚以上のボリュームはキツい、というリスナーには中古価格がかなり下落している本作でも良いかもしれない。
 なお、スキマスイッチは翌年2008年は両者ソロ活動を開始。実質稼働はなく、オリジナル曲のリリースもない1年となり、活動再開は2009年からとなった。