hzettriosokudo7 2023年1月25日発売、H ZETTRIOによる日本の名曲のインストカバーアルバム。全10曲収録。

 現在神奈川県のローカル局であるTVK(テレビ神奈川)の水曜の夜に5分枠でオンエアされている「SPEED MUSIC – ソクドノオンガク」。元々は2018年4月よりフジテレビ系列で放送されていたH ZETTRIOの冠番組「速度の音楽。」の後継番組として同年8月からスタート。コンセプトは『「時代を超えた日本の名曲」をスピード感溢れる独創的なアレンジでカバーする音楽番組』ということで、毎週、年代・ジャンルを問わない日本の名曲達をH ZETTRIOが独自の解釈でカバーし演奏したスタジオライブ映像をオンエア、放送終了後に番組公式サイトでフルサイズを公開するという流れで、放送開始以来5年近く続くキャリアを誇る番組でもあります。2020年3月からは彼らのオリジナルアルバムリリースと並行して、コンセプトアルバムとして同番組で披露した楽曲を商品化したコンセプトアルバムシリーズ「SPEED MUSIC ソクド ノ オンガク」がリリース開始。リリースタームはかなり短く、本作はシリーズが始まってから約3年弱で早くも第7弾。なお、このシリーズはレンタルが禁止されているのかTSUTAYA等のレンタルショップには並ばずに今まで耳にすることができなかったのですが、サブスクには全シリーズがラインナップされており、第7弾にしてようやく聴くことができました。

 時代を超えた日本の名曲のカバー…という名目は伊達ではなく、本作のラインナップは「夜明けのスキャット」「桃色吐息」といった歌謡曲、「神田川」のようなフォーク、「PRIDE」「気分上々↑↑」といったポップスに、アニソンの定番「鉄腕アトム」「残酷な天使のテーゼ」までと、カバーというお題以外に縛りがないバラエティ豊かな楽曲が取り揃えられています。全シリーズに共通して著名曲ばかりが選曲されてますが、H ZETTRIOならではのピアノトリオサウンド(エレピやキーボード音を加工している曲もあり)でパワフルで圧倒的な熱量をもって演奏される各楽曲については、サビだけ活かして他の部分はほぼ崩し状態(ちゃんと尺とかコード進行は決めていると思いますが)の構成で終わる曲も中にはあり、例えるならジャズバンドが一般的なポップスのインストカバーをするとテーマだけ最初に演奏してあとはアドリブが延々続くという様式美(?)に似た感じで、原曲のフォーマットを尊重したカバーというのは皆無に近く、聴いているうちに「あれ?今何の曲聴いてたんだっけ?」という感覚に陥るのは一度や二度ではない(苦笑)というぐらいリビルドされているアレンジについては、楽曲自体に思い入れのあるリスナーにとっては抵抗のある変わりっぷりかも…と思える節もあり、その辺りは評価が分かれるところではないでしょうか。

 とはいうものの、やはり著名な曲ということで聴いてみようかな、というきっかけとしての敷居は低めであるし、彼らのオリジナルアルバムに比べるとメロディーがポピュラーな分聴きやすい、という印象もあります。H ZETTRIOのノリを体感する入門的な作品としてはこのシリーズは最適かも。原曲との聴き比べもよし、BGM的に流しても良しと、好みの問題はあれどリスナーそれぞれの楽しみ方で聴いてもらいたいカバー作品でした。