kohmi30th 2022年11月30日発売、広瀬香美のデビュー30周年を記念して企画されたベストアルバム。

 デビューから在籍しているビクターが立ち上げた30周年記念サイト内において2022年6月よりファン投票が行われ、上位に選出された10曲に加え、本作発売一週間前に配信リリースされたデジタルシングル「プレミアムワールド」が収録されたSHM-CD1枚の通常盤、上位30曲まで+「プレミアム〜」をSHM-CD3枚に収め、ヒストリーブックを加えた大判ブックケース仕様の初回限定盤、同内容にアナログLP2枚を追加し直筆サインを封入したLPサイズケース仕様のビクターオンラインストア限定の完全受注生産盤の3形態での販売。今回はフィジカルリリースの通常盤に加え、ストリーミングで初回限定盤の内容を聴いてのレビューになります。なお、通常盤CDブックレットによるとリマスタリングは川崎洋が担当した模様。

 さて各ディスクの内容ですが、CD1は名刺代わりの大ヒット作「ロマンスの神様」、代表曲「promise」「ゲレンデがとけるほど恋したい」「Dear...again(Ver.2.05)」にデビュー曲「愛があれば大丈夫」と、さすがに上位10曲というだけあって…というお馴染みな曲の一方でそれほど著名とは思えないシングル「日付変更線」やアルバム曲「ブランケット プリーズ」等も収録されるという意外な結果も。また、配信のみリリースだった「Venus Line」「君にセレナーデ」が「プレミアム〜」と合わせて通常盤=フィジカルメディアに初収録となっています。
 続くCD2は「ストロボ」から始まり、スマッシュヒット作の「真冬の帰り道」「幸せをつかみたい」といったシングル、「Dear...again」の原曲「Dear」25周年時の新曲「青い冬ハジマレ」等、知名度的にはCD1の楽曲ほどではないものの、良曲を多く収録。個人的には「愛はバラード」「黄昏」といった失礼ながら地味系バラード曲の良さを再認識できました。
 最後のCD3にはヒット曲の「ドラマチックに恋して」以外はマイナーな曲がシングルタイトル含めて多く、特に終盤は同じようなピアノバラードが連発…ということで若干マンネリな部分も散見してしまったのですが、3枚を総括すると、基本的には歴代のシングル曲の大半を収録、アルバムからも「Tomorrow」などの近年のベストで印象強めの楽曲も選曲されるなど、投票結果はある程度納得の内容になっていました。「I Wish」や「BEGIN〜いくつもの冬を越えて〜」辺りが落選してしまったのは残念でしたが…。

 …ということで、30年30曲(+1曲)のオールタイムベスト的な作品だったわけですが、広瀬香美に関しては内容の大して変わらないベストアルバムをここ15年ほど濫発しているという状況もあり、そんな中で通常盤の1枚でも3,500円(税込)、初回限定盤の3枚組になると12,000円(税込)、完全受注生産盤はさらに倍の24,000円(税込)という超強気な価格設定については衝撃的すぎと言わざるを得ません。全収録曲をストリーミングで廉価に聴けるという点が救いではありますが、敢えてリスナーへのフィジカルメディア購入への道を閉ざしているように見受けられるのが非常に勿体なく思えました。また、新曲をベストアルバム発売の特典的に付ける商法もずっと続いていますが、楽曲自体の出来は良いわけだし、そろそろオリジナルアルバムという形での発表を望みたいところです。