billyjoelnewyork1977 2022年11月25日発売、1977年当時にラジオオンエア用に録音されたビリー・ジョエルのライブをCD2枚にわたり22曲収録したライブアルバム。帯の内側に英文ブックレットの日本語訳を掲載した輸入盤国内仕様。

 海外アーティストのテレビ・ラジオ番組用に収録したライブアーカイブを商品化している日本のレーベル・IAC MUSIC JAPAN「Alive The Live」シリーズとして、この度ビリー・ジョエルのライブアルバムが2作同時発売。本作はそのうちの1作。対訳によると、1977年5月6日にニューヨーク州の大学で開催され、同州のラジオ局によって収録されたライブ音源とのこと。ライブメンバーはラッセル・ジャヴォース(G)、ダグ・ステッグマイヤー(Ba)、リバティ・デヴィート(Dr)、リッチー・キャナータ(Sax)にビリーを加えた五人編成で、メンバーが借り物ではない元祖ビリー・ジョエルバンドの顔触れが揃っています。

 時期的にはブレイク作であるコロムビア4枚目のアルバム「The Stranger」の発売4ヶ月前であり、同アルバムからは「Scenes From An Italian Restaurant(イタリアン・レストランで)」と、「Just The Way You Are(素顔のままで)」の2曲を先行して披露。当時最新の3枚目のアルバム「Turnstiles」からは8曲中7曲を披露、1枚目の「Piano Man」からも10曲中8曲、2枚目の「Streetlife Serenade」からは10曲中4曲、コロムビア契約以前のアルバム「Cold Spring Hurber」からも後にこの日とは別のライブバージョンがシングルリリースされた「She's Got A Way」を披露と、ここまでのビリーのリリース作品を十分に聴かせる、この時点での集大成的なセットリストになっています。また、断片的にMCも収録されており、ディスクチェンジはあるものの、2枚で1時間40分程度のフルライブの流れを体感できる内容です。

 さて本作、筆者が購入に至ったポイントはやはり「ブレイク前の曲のライブテイクが潤沢に収録されている」という点。というのも、「The Stranger」でブレイク後にコロムビア(日本ではSONY)やその他海外レーベルでも彼のライブアルバムは現在に至るまで山ほどリリースされているのですが、ほとんどが代表曲中心の鉄板セットリストで、正直どれか1作持ってれば充分(オリジナルの新曲も1994年以降は1曲だけだし…)だと思っていたのですが、本作で後々まで演奏され続ける代表曲といえば前述の先行披露2曲に「Piano Man」「New York State Of Mind(ニューヨークの想い)」「Captain Jack」「Say Goodbye To Hollywood(さよならハリウッド)」ぐらいで、大半は後年のライブで顧みられることの少ないレア曲をバンバン投入してきているのでコア寄りのファンとしてはこういうライブアルバムを待っていた!と感激。スタジオ録音版では大人しかった演奏も、ビリー自身の「これから売れてやるぞ!」という気合十分の演奏を全編にわたってバンドメンバーと共に繰り広げており、特に終盤の「Worse Comes To Worst(陽気な放浪者)」「Ain't No Crime(悪くはないさ)」辺りは特にこの曲ってこんなロックだったんだ!と、長年の印象が変わる楽曲もあり、かなり楽しめました。

 1977年のラジオオンエア用としてはかなり録音は良く、商品素材として耐えうるには十分すぎる音質状態。ということで、コアなファンほど嬉しく、お薦めな内容だと思います。インディー流通のようなので、一般販売はタワレコ、Amazon、HMVの委託販売等で限られており、さらに完全限定盤ということでそのうち新品購入できなくなりそうな予感がしますので、入手したい方はお早目にどうぞ。