
発売直後のインタビュー記事によると、origami PRODUCTIONSの代表とさかいゆうはインディーズ時代からの付き合いということ。アルバム1枚単位でのタッグの機会を伺いながら15年の時が経った今、今回のカバーアルバムの制作に至ったという経緯があるようです。各楽曲にはそれぞれorigami PRODUCTIONSのメンバーをプロデューサーとして立て(さかいゆう名義でも3曲プロデュースを担当)、演奏やプログラミングにも参加、10曲中9曲のアーティスト名義も「さかいゆう feat.〇〇」という形を採るなど徹底した共同作業での制作となっている模様。さかいゆうと言えば以前にこんなコンピレーションを出している通り、様々な人脈を駆使してのコラボやカバー企画を積極的に行うイメージがありますが、基本的には曲単体でのコラボだったこれまでとは異なり、カバーというコンセプトで1枚アルバムを作り上げるのはおそらく初のはずです。
さて、選ばれた10曲は「さかい自身が影響を受け、愛してきた70〜80年代のシティポップの名曲をセレクト」とのこと。といっても1979年生まれのさかいがこの辺りの楽曲をリアルタイムで聴いていたとは思えない(80年代中盤の「プラスティック・ラブ」辺りならギリギリあるかも?)ので、物心ついてから後追いで聴いて影響を受けた曲を選曲した、ということなのでしょう。筆者もさかいとほぼ同世代ということで、収録曲中の半分ぐらいは知っているけれどオリジナルではなく別のアーティストのカバーで後年知った、というものが多く、各楽曲自体の思い入れは特にないので客観的な感想になってしまうのですが、サウンドプロダクション的にはプログラミングを中心に時折生楽器を入れて…という味付けがメイン(特に中盤以降)であり、オリジナルに愛着があるリアルタイム層よりも、近年のシティポップ再評価の流れでこの時代の音楽に興味を持った若い世代がすんなり入っていけそうなアレンジになっている気がします。個人的には往年のメロディーに対して、さかいゆうらしいファンクなアプローチにアルバムの統一性が感じられ楽しめました。ただ「夢で逢えたら」の浮遊感を通り越して不穏なアレンジには戦慄を覚えましたが…(笑)。
数年前まで行われていた、海外を渡って著名ミュージシャンとのバチバチのコラボ…という雰囲気とは異なり、インタビューでも「楽しい同窓会」と語っていたように、クリエイター達と和気藹々と作り上げていったような空気を全体的に感じる、聴き心地の良いカバーアルバムでした。
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