sardhino 2022年9月14日発売、SARD UNDERGROUNDのミニアルバム。シングル「空っぽの心」を含む全7曲収録。CDのみの通常盤、「空っぽの心」のMVとメイキングを収録したDVD同梱の初回限定盤の2形態での販売。CD内容は同一ですが、それぞれに異なるクリスマスアナザージャケットカードが封入され、収録曲「クリスマス ケーキ」のMVに加え、リリースイベントツアードキュメントの前半(初回限定盤)/後半(通常盤)がそれぞれ視聴できる動画視聴シリアルナンバーも封入。本レビューは通常盤となります。

 ZARDのトリビュートバンドとして結成されたSARD UNDERGROUND。ZARDのカバーアルバムを2作続けてリリース後、坂井泉水が書き遺した歌詞を採用した楽曲を含む全曲オリジナルフルアルバムをリリースし、これからはオリジナル中心に…と思いきや、2022年2月には3作目のZARDカバーアルバムを発表するなど、オリジナルとトリビュートの間を行ったり来たりしていた感のある彼女達ですが、続いてリリースされたのは初のミニアルバム。その内容は先行シングル1曲、初商品化の新曲4曲、ZARDのカバー(「You and me(and...)」、そして坂井泉水がBarbierに提供(後にZARDでもカバー)した「クリスマス タイム」のカバーということで、SARD UNDERGROUNDとしては初めて、オリジナル曲とZARD関連のカバー曲が1枚のアルバムに収められている、という構成になっています。

 本作のプレスリリースでは「"一日の終わりに思い出すような、心に残る音楽を届けたい"そんな想いを詰め込んだミニアルバム」と謳われており、どんな情緒豊かな楽曲が出てくるのか…と思いきや、冒頭3曲はエレキギターがギュンギュン鳴り響くアグレッシブなナンバーが連発されてきてまずビックリしたのですが、元PAMELAHの小澤正澄が手掛けた楽曲ということでこれはまあ納得(?)。ということで前半はアッパーで、後半の3曲は一転していきなりクリスマスモードになるので、4曲目までがA面、5曲目以降がB面というアナログLP的なイメージでの曲順でしょうか。カバーのほうはこれまでのZARD完コピ再録路線をキープで特記するようなことはなかった一方、オリジナルは「花火よ燃え尽きて海に舞い上がれ!」では「愛が見えない」、「恋が待ち伏せしてた午後」は「心を開いて」を何となく彷彿とさせる箇所があるものの、ボーカル神野友亜の歌詞は坂井泉水の作風を模倣したような感じではないし、インタビューでもライターに「意欲作」と称されているように、楽曲的には前作オリジナルのような「ZARDっぽさの枠内」から一歩踏み出て、SARD UNDERGROUNDとしてのオリジナリティーを模索し始めた印象を受けました。

 なお、制作スタッフはプロデューサーの長戸大幸を筆頭に新旧ZARD関係者の名前がクレジットされているのは今まで通り。ゲストミュージシャンはコーラス参加者のクレジットのみ、ギター担当の赤坂美羽脱退後、誰がギターを弾いているのは相変わらずノンクレジットのままなのですが、「クリスマス ケーキ」のみ、アレンジャーとして実績のある徳永暁人がアコギ、ベース、パーカッション奏者としてクレジットされ、編曲ではなく演奏にのみ参加している、という珍しいケースもあり。今回は「恋が待ち伏せしてた午後」に作曲者として藤中友哉「クリスマス ケーキ」の編曲者として鈴木和哉と、わずかながら楽曲提供陣に新顔らしき名前が見られます。このように試行錯誤を積み重ねてSARD UNDERGROUNDがZARDの航跡をトレースするプロジェクトのみならず、独自性を身につけながら展開していくことを期待したいところです。