konomama1 1993年3月10日、シングル「このまま君だけを奪い去りたい」でデビューしたDEEN。メンバー加入・脱退を経て、近年は池森秀一(Vo)と山根公路(Key)の二人組として活動。長期の活動休止などは一切なく、定期的なライブ、恒常的なリリースでキャリアを積み上げていき、本日、デビュー30周年を迎えました。
 今回の「CD Review Extra」では、DEEN30周年を記念して、その活動の原点であり、一般的にも抜群の知名度を誇るデビューシングルにして看板楽曲「このまま君だけを奪い去りたい」の原曲、セルフカバー、その他を含めたDEEN名義でスタジオ録音された全7作品をご紹介いたします。






デビュー30周年記念
DEEN「このまま君だけを奪い去りたい」STUDIO REC Ver.全曲レビュー



このまま君だけを奪い去りたい
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 1993年3月10日発売、デビューシングル。
 CMタイアップソングのオーディションに臨んだ池森秀一がこの曲を歌ったところ採用が決まり、DEENが結成された、という逸話の通り、池森はシンガーとしての参加であり(山根公路もコーラスで参加している模様)、作詞は当時ブレイク中のWANDSのボーカル上杉昇、作曲はビーイングの主力作家である織田哲郎がそれぞれ担当。同年にはWANDS・織田両者によるセルフカバーバージョンもそれぞれ発表されている(織田はその後2006年にも再度セルフカバー)。
 編曲は明石昌夫と共にビーイングのアレンジャーの片翼を担っていた葉山たけしが担当。音数の少ない1コーラス目を経て2コーラス目からバンドイン、間奏の熱いギターソロを挟んでラストのサビを迎えるという構成であり、以降のDEENの作品でも「翼を広げて」「Teenage dream」「君がいない夏」「JUST ONE」等、バラードの編曲パターンの礎となった感がある。
 前述の通り、NTTドコモのポケットベルのCMソングとして大量にオンエアされオリコンチャートを上昇、最高で週間ランキング2位までランクを上げ、最終的にはミリオンを突破。デビュー曲にしてDEENの最大セールスシングルとなった。


このまま君だけを奪い去りたい 〜Acoustic Version〜
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 1999年11月25日発売、コンセプトマキシシングル「Classics One WHITE Christmas time」に収録。
 DEENのアナザーサイドを見せていくという主旨で、新曲2曲+表題曲のインスト+過去のシングル曲のセルフカバー2曲という構成で編まれたClassicsシリーズの第1弾として、「永遠をあずけてくれ」と共にセルフカバーされた。
 キーは原曲より-1。アレンジはDEEN名義で、当時在籍していたギタリスト・田川伸治のアコースティックギターを核に、間奏でのバイオリンソロが彩りを添える室内楽的な趣。デビュー曲を6年後にセルフプロデュースという形で生まれ変わらせた、という意味でファンとしては大変感慨深く、複数あるセルフカバーアレンジの中では個人的にこのバージョンが最も好みである。
 なお、本作より8年後にリリースされたClassicsシリーズベスト「DEEN The Best クラシックス」発売の際に、当時開催された47都道府県ツアーのライブ映像に本バージョンをシンクしたMVが制作された…が、2002年頃から池森の声質が変化していたので、最新映像で歌う池森に8年前の歌声があてられたこのMVには違和感を感じた(苦笑)。


このまま君だけを奪い去りたい 〜キセキ Version〜
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 2005年10月26日発売、通算31枚目のシングル。
 デビューから12年が経過し、「干支が一周した」という名目で企画された初のセルフカバーアルバム「DEEN The Best キセキ」からの先行シングルとして、「翼を広げて」と両A面シングルとしてリリースされた。また、原曲発表当時には存在しなかったフルMVも制作された。
 ビーイング在籍末期からのセルフプロデュース体制は離脱後も継続しており、アレンジまでDEEN名義での作品制作を続けていたが、この企画は基本的には各曲ごとに外部からサウンドプロデューサーを招いての制作となっており、この曲は岩田雅之がアレンジを担当。直球バラードのアレンジだった原曲、アコギメインのAcoustic Versionとは異なり、エレクトリックピアノのリフを効果的に使用したり、サビの一部のコードチェンジ箇所を変更したりと小洒落た変更が加えられ、当時の池森の声域(原曲-1)や声質に合わせた雰囲気に仕立てられている。ライブでもこのアレンジで歌う時には他のバージョンよりも安定感があるのだが、このバージョン自体はあまり演奏されず、忘れた頃に不意に演奏される程度でレアな出現率である。現時点での披露は2022年1月の軽井沢でのスペシャルライブが最新。


このまま君だけを奪い去りたい 〜Triangle Cover Version〜
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 2012年8月8日発売、通算13枚目のオリジナルアルバム「マリアージュ」のDisc 2「Triangle Cover Album」に収録。
 同年の第2回目開催となる47都道府県ツアーに向けて、メンバー三人のみの演奏で制作されたセルフカバーアルバムの中の1曲。三人のみと言っても簡易なパーカッションは入っており、プログラミングやオーバーダビングも含めて「三人の手による演奏」というコンセプトだった模様。
 今回はキーは原曲-2。田川(編曲担当)のアコギ、山根のエレピが並行してメインを務めており、どちらが突出ということは特にないのだが、間奏では地味ながらエレピのソロがあるのが珍しい。2コーラスのサビからは新たにカウンターコーラスが追加されている。以降、ライブで三人でこの曲を披露する際はこのバージョンが基本になって演奏されていた。
 なお、ここまでの4バージョンは2013年1月1日発売の20周年記念リマスターCD-BOX「DEEN PERFECT ALBUMS+1」の特典ディスク「PREMIUM DISC」に最新バージョンから遡る形でまとめて収録されている。各バージョンの表記は同ディスクの表記に倣った。


このまま君だけを奪い去りたい(Ballads in Love Version)
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 2019年11月6日発売、セルフカバーアルバム「Ballads in Love 〜The greatest love songs of DEEN〜」に収録。
 これまでのキャリア全曲の中からファン投票で選出された上位10曲をボーカル+ピアノ+ストリングスという形態でセルフカバーしたアルバムの中の1曲。編曲担当は田川伸治の脱退後、ライブでのサポートギタリストとして起用された侑音。本業はギタリストなのだが、本作ではギターレスの編曲もこなし、以後のDEEN作品の大半の編曲を一手に引き受けるなどマルチな形で貢献している。
 原曲キーでのセルフカバーは初。ピアノはバッキング寄りであり、ストリングスカルテットを潤沢に起用したクラシカルな装いなのが特徴。アルバムのリード曲としてキセキ Versionを踏襲した新MVも制作された。発売直後の「NEWJOURNEY TOUR」ではメンバー+バイオリニストを帯同して東北各県と東京を回り、その際は一部オケ使用で披露されたが、いつかこのアレンジでの完全生演奏バージョンも是非聴いてみたいものである。

 
このまま君だけを奪い去りたい featuring ダイスケ
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 「Ballads in Love 〜The greatest love songs of DEEN〜」の初回生産限定盤に付属の「Premium Instrumental Album」に収録。
 DEENと縁のあるミュージシャンを招き、本編ディスクのオケにメロディーパートを奏でてもらう、というコンセプトのインスト集の中の1曲。ダイスケは2016年に池森がアルバム曲のプロデュースを行ったという縁があるシンガーソングライターであり、2019年のDEENのアルバム「NEWJOURNEY」にレコーディング参加、同年夏のビルボードライブにもゲストプレイヤーとして出演している(現在はdaisuke katayama名義で活動)。本作にはアコギでの参加。特に衒いもなくメロディーを忠実に爪弾いている無難といえば無難なバージョンなのだが、正ギタリストが脱退したこともあって実現した企画ではあるか。


このまま君だけを奪い去りたい(DEEN The Best DX Version)
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 2023年3月8日発売、30周年記念ベスト「DEEN The Best DX 〜Basic to Respect〜」に収録。
 代表曲をオリジナルアレンジで再録音したdisc 1「DEEN The Best Studio Live 30th」の1曲目。25周年の武道館公演以降のライブで披露されている原キー・原曲アレンジでのスタジオ録音が実現。
 編曲名義は原曲アレンジャーの葉山たけし。若干テンポは遅くなっており、基本的には音色まで忠実に再現されているが、原曲のサビでキラキラ鳴っていたシンセの音は薄くなり、打ち込みっぽかったリズム隊(特にベース)も現サポートメンバーにより生で録音されており、バンド感はこちらのほうが上。なお、リリースより3週間前の2月15日には先行で配信ならびにフルサイズMVの公開も行われた。