artblakeytokyo 2021年12月10日発売、ジャズドラマーの第一人者・アート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズの未発表ライブアルバム。日本発売盤はSHM-CD盤のCD2枚組と、1枚のSA-CD盤の2形態での発売で全9曲収録。なお、当初のアナウンスでは同年11月5日発売と告知されていましたが、後に現発売日へと約1ヶ月発売日が延期。差し替えが間に合わなかったのか、CDケース裏の発売日は当初のまま印刷されています。

 2020年のブレイキー没後30年時に際してリリースされたスタジオレコーディングの未発表アルバムに続く、ブルーノートレコーズからの蔵出し音源集第2弾となる本作は、ジャズ・メッセンジャーズが初来日した際のツアーの最終日、1961年1月14日日比谷公会堂でのライブ音源。この音源は元々来日ツアーを追ったドキュメンタリー映画「黒いさくれつ」に使用される音源として映像と共に収録されていたのですが、公開後すぐに権利問題で上映中止となりお蔵入りになってしまい、それから50年以上経過した2017年に映画関係者の遺品の中から音源を発見、録音日を検証するなどの確認作業を経て、今回このような形での初商品化に至った、とのこと。マスタリングは第1弾同様バーニー・グランドマンが担当。一部ノイズが乗る箇所はあるものの、この時代にしては軒並み好音質で録音されています。

 演奏パーソネルは、ブレイキー(ds)、リー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・メリット(b)による五人編成。録音日である1月14日は昼夜公演であり、各ディスクに1時間弱程度の各公演がそれぞれ入っているものと思われますが、同封の解説書によると、1曲が完全に録音されていない状態のものは未収録にしたとのことで、同日公演の全曲が収録されているのではない模様。演奏された曲はお馴染み「MOANIN'」を始め、「BLUES MARCH」「DAT THERE」「A NIGHT IN TUNISIA」等、これでもか!という代表曲を連発。ブレイキーのお馴染みの(?)ドカドカドラムを叩いてオーディエンスや奏者を鼓舞する長尺プレイを筆頭に、スタジオレコーディング盤とは異なり各パートのソロが長かったりと、ライブならではの音源になっていますが著名曲多めということで長さを感じさせずに聴くことができます。一方でライブ録音にしては客席の大歓声は結構遠目になっており、ライブアルバム特有のエアー感はあまり感じられないかな?という印象なのですが、モノラル録音ながら各楽器の分離はかなり良く、昔のライブ録音盤でありがちな録音技術の粗さをほとんど感じさせないのは大きなポイント。よくこんな良い保存状態のテープが残っていたものです。

 なお、CDのみならずブックレットも豪華で、ブレイキーと縁のあった関係者達のコメントが英文で記され、法被を着たブレイキーや来日当時のメンバーの写真、スイングジャーナルの表紙を飾った際の画像などが収められた56ページのブックレットに加え、日本発売盤では全対訳に加えて、本作の発売経緯を詳しく記したテープ発見者である根本隆一郎氏による解説書も封入されている充実仕様。初来日の際の別公演のライブアルバム(楽曲ほぼ重複+他の演奏曲も潤沢)も既にあり、本作自体もサブスク配信されているようですが、ジャズ・メッセンジャーズ愛好家の方々には(通常のジャズのCDよりは結構高いけど)、是非フィジカルで手に取って読んで、そして聴いて欲しいメモリアルな発掘モノでした。