2022年10月5日、シンコーミュージックから一般刊行された、KAN初となる詞集。A5判全306頁。
1992年の「ぼけつバリほり」、2020年の「KAN in the BOOK」に続く通算3作目の書籍となる本著は、彼がこれまで発表してきたオリジナル楽曲185作品の中から選ばれた121作の歌詞を掲載。そのうち111作には本人による作品解説も掲載された、「詞+解説」本。各曲見開き2頁でタイトルも含めて1曲ずつ掲載されている(歌詞の長い曲は3頁にまたがるものもあり)のが基本フォーマットで、作品タイトルのレタリングは曲毎に違うという手の込んだ仕様になっています。
なお、帯には長年KANのファンであることを公言しているaikoからのメッセージが寄せられ、書籍の巻末には本著で編集を務めたKANと長年来の付き合いであるライター・森田恭子による「KANという作詞家について」というタイトルの寄稿文が掲載。さらに本文中の節目ごとに描かれたイラストはKANのバンドツアーのサポートメンバーである菅原龍平が担当して彩りを添えています。
構成は特に章立てはされていないものの、歌詞掲載部分は大きく分けて4パート。1パート目(10曲)は解説なしの歌詞のみ掲載、2パート目(18曲)と4パート目(65曲)も歌詞のみですが、巻末に曲毎の解説がまとめて掲載、3パート目(28曲)には歌詞の頁に一言二言程度の解説が掲載という、意図的なものなのか妙に凝った内容になっています。また、KANが本格的に作詞を始めるのは3rdアルバム「GIRL TO LOVE」からなので、当然ながら選曲もほぼその頃からスタート。大体は各アルバムから6〜7曲程度のセレクトになっていますが、活動を一時休止して渡仏し、帰国して活動を再開以降の4枚のアルバムからの選曲比率はさらに高くなっており、最新作「23歳」に至っては10曲すべてが選曲。それだけ納得の行く歌詞が書けたということでしょうか。なお、掲載順は基本的に時系列順で、各パートが始まるごとに初期の作品からリセットされて選出されていますが、特に歌詞のテーマ毎に分類したわけではないような…?
歌詞に関しては、当然ながら歌詞カードに載っている内容と全く同一なわけで、改めて詞集として活字印刷されたものを眺めて新たな発見…というものは正直特になし。それよりもやはりファンとしては各曲の解説が一番知りたい内容なわけで、そちらについては111曲分のKAN自身による解説は歌詞のテーマのみならず、制作過程や当時の心境、サウンド、メロディーにも深く言及した、まさに理想的なセルフライナーノーツ。初期の曲に関しては過去の著書で語られた事柄と同じようなことが書かれている箇所もありましたが、それ以外はほぼ初耳の情報が一挙大公開という感じで、彼の楽曲の副読本としてはこの上ない一冊だと思います。
各曲様々な解説が語られる中、彼の数多いラブソングは「8年間続いた片想い」の中で生まれたものだったということと、結局報われずに恋が終わり、後に出逢って1999年に結婚した奥さんを「愛妻」と頻繁に表記する辺りが印象に残りました。特に後者に関しては、あまり身内の話はオフィシャルでは語らないのでこの辺は新鮮に感じましたが、女性ファンにとってはちょっと嫉妬する表記かもしれません(?)。個人的には思い入れのある失恋ソングを「これといった意味があるようなないような…」と解説されていたのはええ〜っ、と思ったり(苦笑)、一つの状況描写を膨らませて1曲の歌詞に仕立て上げたというある曲にはそうだったのか!と感服したり。あとは詩人としての彼の作風で一番好きな時期なのが「東雲」前後なのですが、この時代は「長年の片想いが失恋に終わり、特に好きな相手がいなかった頃」だったことが語られており、特定の相手に向けて作られた作品ではなかったということは驚きでありました。
…ということで、解説部分はファン必見。ただ、その解説は300頁以上ある書籍中の30頁程度(前述の3パート目の軽い解説を含めると+30頁)。この内容で定価3,000円(税込)というのは…正直高過ぎ。いっそ全楽曲解説の書籍を150頁ぐらいにして1,500円ぐらいで出版してくれるなら文句無しでお薦めなのですが、この内容と価格のアンバランスさが何とも残念。あと、1パート目の10曲は本当にただ歌詞が載っているだけなのですが、まあこれは歌詞は載せたいけど解説はノーコメント、ということなのだと解釈いたしましょう。価格的にはコアファン向け、内容的にはKANのファン全般に一度目を通しておいてもらいたい書籍でした。
1992年の「ぼけつバリほり」、2020年の「KAN in the BOOK」に続く通算3作目の書籍となる本著は、彼がこれまで発表してきたオリジナル楽曲185作品の中から選ばれた121作の歌詞を掲載。そのうち111作には本人による作品解説も掲載された、「詞+解説」本。各曲見開き2頁でタイトルも含めて1曲ずつ掲載されている(歌詞の長い曲は3頁にまたがるものもあり)のが基本フォーマットで、作品タイトルのレタリングは曲毎に違うという手の込んだ仕様になっています。
なお、帯には長年KANのファンであることを公言しているaikoからのメッセージが寄せられ、書籍の巻末には本著で編集を務めたKANと長年来の付き合いであるライター・森田恭子による「KANという作詞家について」というタイトルの寄稿文が掲載。さらに本文中の節目ごとに描かれたイラストはKANのバンドツアーのサポートメンバーである菅原龍平が担当して彩りを添えています。
構成は特に章立てはされていないものの、歌詞掲載部分は大きく分けて4パート。1パート目(10曲)は解説なしの歌詞のみ掲載、2パート目(18曲)と4パート目(65曲)も歌詞のみですが、巻末に曲毎の解説がまとめて掲載、3パート目(28曲)には歌詞の頁に一言二言程度の解説が掲載という、意図的なものなのか妙に凝った内容になっています。また、KANが本格的に作詞を始めるのは3rdアルバム「GIRL TO LOVE」からなので、当然ながら選曲もほぼその頃からスタート。大体は各アルバムから6〜7曲程度のセレクトになっていますが、活動を一時休止して渡仏し、帰国して活動を再開以降の4枚のアルバムからの選曲比率はさらに高くなっており、最新作「23歳」に至っては10曲すべてが選曲。それだけ納得の行く歌詞が書けたということでしょうか。なお、掲載順は基本的に時系列順で、各パートが始まるごとに初期の作品からリセットされて選出されていますが、特に歌詞のテーマ毎に分類したわけではないような…?
歌詞に関しては、当然ながら歌詞カードに載っている内容と全く同一なわけで、改めて詞集として活字印刷されたものを眺めて新たな発見…というものは正直特になし。それよりもやはりファンとしては各曲の解説が一番知りたい内容なわけで、そちらについては111曲分のKAN自身による解説は歌詞のテーマのみならず、制作過程や当時の心境、サウンド、メロディーにも深く言及した、まさに理想的なセルフライナーノーツ。初期の曲に関しては過去の著書で語られた事柄と同じようなことが書かれている箇所もありましたが、それ以外はほぼ初耳の情報が一挙大公開という感じで、彼の楽曲の副読本としてはこの上ない一冊だと思います。
各曲様々な解説が語られる中、彼の数多いラブソングは「8年間続いた片想い」の中で生まれたものだったということと、結局報われずに恋が終わり、後に出逢って1999年に結婚した奥さんを「愛妻」と頻繁に表記する辺りが印象に残りました。特に後者に関しては、あまり身内の話はオフィシャルでは語らないのでこの辺は新鮮に感じましたが、女性ファンにとってはちょっと嫉妬する表記かもしれません(?)。個人的には思い入れのある失恋ソングを「これといった意味があるようなないような…」と解説されていたのはええ〜っ、と思ったり(苦笑)、一つの状況描写を膨らませて1曲の歌詞に仕立て上げたというある曲にはそうだったのか!と感服したり。あとは詩人としての彼の作風で一番好きな時期なのが「東雲」前後なのですが、この時代は「長年の片想いが失恋に終わり、特に好きな相手がいなかった頃」だったことが語られており、特定の相手に向けて作られた作品ではなかったということは驚きでありました。
…ということで、解説部分はファン必見。ただ、その解説は300頁以上ある書籍中の30頁程度(前述の3パート目の軽い解説を含めると+30頁)。この内容で定価3,000円(税込)というのは…正直高過ぎ。いっそ全楽曲解説の書籍を150頁ぐらいにして1,500円ぐらいで出版してくれるなら文句無しでお薦めなのですが、この内容と価格のアンバランスさが何とも残念。あと、1パート目の10曲は本当にただ歌詞が載っているだけなのですが、まあこれは歌詞は載せたいけど解説はノーコメント、ということなのだと解釈いたしましょう。価格的にはコアファン向け、内容的にはKANのファン全般に一度目を通しておいてもらいたい書籍でした。
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