
1999年に解散後、2012年に再結成を宣言し、「BEING LEGEND」ツアーにてメインアクト的に実働したものの、新曲の発表はないまま2014年に活動停止。2017年からの活動再開後はライブを中心に散発的なシングルリリースを経て、今回オリジナルフルアルバムとしては実に28年振りの新作の運びとなりました。2017年のコンセプトベストに収録された新曲「ずっと君を」、2018年のDVDシングル「Re:I」、2020年発売のライブDVDに同梱されていたCDが初出で後に配信カットされた「俺たちのストーリー」「My life is My way 2020」といった既発曲は全て収録、また2012年発表のB.B.クィーンズのアルバムに近藤房之助×森友嵐士名義で収録された「声なき声がきこえる」、森友が石川さゆりに提供した「京恋唄」がセルフカバーで収められるなど、再結成後の森友のソロワークを含めた現時点でのT-BOLANの歴史を一気に収めた構成のアルバムになっています。
ということで収録曲の約半数が既発曲、制作した時期も異なりメンバー以外のレコーディングミュージシャンも多岐に亘っており、新曲に関しても90年代当時のT-BOLANのイメージからは異なるような明らかな打ち込みサウンドが展開する「ABRA CADA BRA 〜道標〜」、彼らの代名詞となっているバラードに関しても「祈りの空」「ひとつの空 〜no rain no rainbow〜」はバンドで聞かせるというよりはピアノ・ストリングスといったアディショナルな楽器をアレンジの中心に据えるなど、良く言えばバラエティ豊かなサウンド、悪く言えばかつての漢気っぽいロックバンドとしての一貫性が本作には薄い、という印象。ただし、90年代時に制作してキープしたままだった未発表曲に当時のボーカルをそのまま使用したという「Crazy Me Crazy U」と比べると現在の森友のボーカルのレンジは若干狭くなった感がありますが、森友嵐士の歌声があるからT-BOLANの曲になる、という声の個性は健在で、その辺りは「T-BOLANが帰ってきた」という感じで嬉しくありました。
ブックレットには本作のアルバムタイトルにしてリード曲「愛の爆弾=CHERISH 〜アインシュタインからの伝言〜」の由来を1頁使ってライターが執筆、さらに全曲のライナーノーツも3頁にわたって掲載されているなど、ネットには載り切らないフィジカルアルバムならではの特典は嬉しい点。一方で2021年8月末に活動休止を発表したドラムスの青木和義が本作の新曲制作にどれぐらい関わっているかの説明はなし、というモヤモヤ感はあるものの、2012年の再結成宣言から約10年、ようやくT-BOLANがオリジナルアルバムを出した、という事実に意義がある1作だと思いました。
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